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03/13/2009

The Path - 千の体験を持つゲームたち

 ようやくThe Pathが発売か。それに伴い各ゲームサイトでプレビュー記事が投稿され始めた。

・Tale of Tales Asks, Will You Stay On The Path? / Gameinformer
・What Cruel Teeth You’ve Got: The Path Impressions / Rock, Paper, Shotgun

  The Pathは前作のthe Graveyardと同じく、アートゲーム的(※1)な内容になっているようだ。いわゆるゲーム性(※2)と呼ばれるものには乏しく、“各プレイヤーがプレイを通じて何を感じ取るか”が重要そうである。ゆえに一般的な娯楽作品(※3)として遊んだり、比較するのは見当違いであろう。



  Tale of Talesが手掛けたthe Graveyardはインタラクティブ性のある映像作品、もといアートゲームであった。出来ることは「老婆を操作して墓地を徘徊する」「老婆をベンチに座らせて歌を聴く」くらいしかない。普通にゲームとして遊ぼうとしたら「なんじゃこりゃ」と違和感を感じざるを得ない内容であった。

  the Graveyardの意義は「観察力や想像力、感覚を養うこと」にあると思う。老婆が墓地を徘徊する姿を見て、そこに何かを見出したり、感じ取る。「この老婆は○○で墓地は○○を表現しているんですよ」と答えが明確に掲示されているわけではないのだから、解釈や感じ方は各々の自由だ。プレイヤーの数ほど物語が存在すると言っても過言ではない。

  そして、その解釈を他人と論じたり、他人の解釈を聞いて意見を出す。そこがthe Graveyardのようなアートゲームの“ゲーム性”だと私は思う。映画に例えるならデヴィッド・リンチ(※4)の作品が近いかもしれない。

  表現者が作品を掲示し、それを見た鑑賞者が「俺はそれを見てこういう風に感じた」と表現する。鑑賞者の感想を聞いた表現者は「なるほど、そういう考え方もあるのか」と価値観の違いを感じ取る。各々の感覚や価値観を通じたコミュニケーションを遊びながら行えるのがアートゲームの醍醐味ではないだろうか。一枚の絵画をただ見せられるよりも、自分で操作できるゲームの方が親しみ易く触れることができる。

  ただし、「解釈を無理矢理捻り出せ」「これを体験して何も感じ取れない人間は…」と言っているわけではないので誤解なきよう。お婆ちゃんがベンチでうたた寝している姿をボッーと見て、癒される人も居るかもしれないし、そういうのもアートゲームの遊び方の一つだろう。現に私は墓地を徘徊する老婆を見て癒された。

(※1)アートゲーム的
ゲームの持つインタラクティブ性を活かした芸術。美的感覚や思考力を養うことを重視したゲーム。または小さな子供にも親しみ易い芸術のこと。

(※2)いわゆるゲーム性
銃をバンバン撃って敵を倒したりするようなこと。

(※3)一般的な娯楽作品
銃をバンバン撃って敵を倒し、ガチガチに定められた勧善懲悪なストーリーを鑑賞するだけの作品。

(※4)デヴィッド・リンチ
頭の中のイメージを全て映像だけで表現しようとする映画監督。何を表現しているかは一切説明せず、観客に委ねるスタンスを取ることが多い。特にイレイザーヘッドにおいて、その傾向が強く見られる。