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11/20/2007
Half Life 2:Episode Two - ゲームとの空隙を埋めるには
はい、なんたらライフ2:エピソードなんたらやってます。
銃撃音に高音がプラスされ、射撃が心地良くなった、以外は特に変更なし。良くも悪くもなんたらライフ。
しかし、相変わらずゲームとの剥離感が凄まじい。これほど世界に入り込めないのは稀に見る珍しさである。HL2の序盤こそ己の存在を感じられたが、中盤からEP1まで、そしてEP2も、ずっと居心地の悪い感覚が続いている。この違和感の正体に対して、私はこれまで唯脳的な観点から考えてきたが、これは間違いではなかったのかと思う。この際には発達論や相互作用論的な考えの方が適切ではないだろうかか。
人間、いや乳児には鏡像段階という時期がある。生まれたばかりの乳児は個体となる自己を認識出来ないが、自分の姿を鏡に投影することで自分とは何かを理解し、自己を獲得していく状態を鏡像段階と呼ぶ。客観的に自分の姿を捉えることで、自分を認識出来るのである。それ以後も、他者と相互作用で成り立っている関係性が、自分という存在を維持し続ける。すなわち、自己とは唯脳(唯我)のような絶対的なものではなく、他人と相互をしながら形成されているもの。それも現在進行形で変動していくものである…という考え。
HL2における自分の似姿である主人公は社会的な基本行動を持たない自閉した状態にある。それはシリーズ通して同じなのだが、HL2で顕著に感じられるようになったのは“客観的視点から認識出来なくなった”のと“決定的に熟視する対象が多くなった”点にあると思われるのだがどうか。
“客観的視点から認識出来なくなった”というのは、つまり拡張パックのシェパード伍長やバーニーのことを指す。知らない人に言っておくと、HLの拡張版は本編のゴードン・フリーマンが主人公ではなく、海兵隊のシェパード伍長と警備員のバーニーが主人公になっている。これにより、他者の視点からブラックメサ事件及びゴードン・フリーマンという像自体も客観視することが可能であり、一視点だけではない投影した像を瞥見することによって、舞台やゴードン・フリーマン像のリアリティや共感が増す鏡像段階に似た作用が発生しているのだ。
“決定的に熟視する対象が多くなった”というのは、NPCの関与が膨大に増えた点を指す。NPCを殴り殺しながら進めたHLと違い、HL2ではアレックスやイーライといった重要人物が現れ、イベントシーンがとてつもなく長くなった。他者が関与してくるのは大いに結構なことなのだが、残念ながらHL2では裏目に出てしまっている。このゲームは完全に相互作用性に乏しいためだ。
他人が投げかけた言葉に対して、こちらもそれに反応して言葉を返す。それこそがコミュニケーションであり、他者と共有的な感覚を味わえる手段の一つである。そしてその共感もまた、自己の認識や確立へと繋がるキーになる。しかし、このゲームには語りさえあれど、会話というコミュニケーションが一切ない。それは、主人公が言葉を話せない、会話するようなインタラクティブ性が用意されていないからである。
だが、言葉を話せない主人公など沢山いる。CoDもその一つだ。ただし、CoDは舞台やシチュエーションが異なっているため、インタラクティブ性に欠けているとは強く感じず、剥離を生まない。これらの主人公はWWIIの兵士や特殊部隊の一人となっているため、別に会話を成立させなくても問題はないからである。言葉を発するとしても「イエッサー」くらいなものだ。
しかし、HL2はそうはいかない。「ねぇ、○○よね、ゴードン」やら「ゴードンは○○なんだね?」といった返答があって然るべき、言葉がこのゲームでは繰り返される。何かしらの会話方法があれば別なのだが、残念ながら気の利いたそういったものはない。それが故にまるでNPCに延々と語り掛けられ、NPC達が会話しているシーンでは一人疎外感を感じて、ゲームから剥離したような居心地の悪さを感じるのではないかと思う。哲学的ゾンビにでもなったかのように。
まぁ、だらだら書いたが、なにを言っているのか自分でも分からない。当たり雨のように肌で体感している事を、いざ言葉に表して理解しようとすると難しい。
ただ、この直接的理解を、説明的理解出来た時、新たな道が開かれるような気がする。いつかHL2における居心地の悪さの原因を突き止めたい。
・Portalから。自己の存在を自然に認識させ、実感させる鏡像の姿。これにより操作している主人公に統一体が構築出来る。
後程語るが、Portalは非常に健全なゲームだ。革新性においても、テーマにおいても。こういうゲームこそ、業界を豊かにする。Portalはオレンジなんたらの唯一の良心と言って良い。ハーフなんたらなど、Portalの前に霞んでしまう。オレンジなんたらの主役はPortalであり、後はオマケ。