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01/12/2009

Far Cry 2 - 血も涙もない不条理

  クリアしました。ラスト手前で急に展開が急ぎ足になり、流されるままにエンド。最後に選択が2つ用意されていますが、どちらを選んでもすっきりしない締め方になっています。ここは好き嫌いの分かれるところでしょう。

  物語は今風の題材を扱っていますね。世の体制を維持する為にはテロリストや必要悪が求められてしまうという皮肉なお話。日本人の私から見て、イラク戦争当時のアメリカの姿が重なります。

  しかし、プレイヤー側から見て、ジャッカルの救済する対象が漠然としている感は否めません。舞台のアフリカの生活観が皆無ゆえに、ジャッカルの思惑がピンと伝わってこない。難民ってどこに居たのよと突っ込まざるを得ません。この辺はコロンビアを舞台にしたBoiling Pointの方が上手で、見事に体感治安(*1)の恐怖も演出していたと思います。



  あと、腑に落ちないのは評判の要素。評判が上がるとセーフハウスが微妙に充実するだけで、派閥やバディとの関係に変化はなく、あまり意味がありません。ガードポスト解除にせよ、評判にせよ、ほとんど意味がないのだから削ってよかったんじゃないでしょうか。

  こういう贅肉のような存在があらぬ期待を抱かせ、ゲームの方向性をミスリードし、プレイヤーを困惑へと落とし込み、ゲームの評価を下げる要因として働いているように思います。仲間の評判、派閥と聞いて、私はBoiling PointやS.T.A.L.K.E.R.:Clear Skyと同じようなこと、いやそれ以上のことができるとUBIのビッグマウスっぷりから期待していました。

  実際のところFar Cry 2ではそれらの要素は噛み合わずに相反していて、機能しているとは言い難い作りになっています。「こういうのを期待してたけど、想像と全然違ってガッカリ(´・ω・`)」という人、多いでしょ?この際、不要な贅肉はバッサリと切り捨て、シンプルに提供した方が獲物を狩るゲームとして上手く表現できたのではないでしょうか。

  誇大広告を信じて購入した人は余計に反感を抱き、ネガティブキャンペーンを広げることになるでしょうし、そろそろ真摯な宣伝方法をUBIには考えて頂きたいものです。Far Cry 2にしろ、暗殺できない暗殺者ゲーにしろ、軽くミリオンを突破しているので、ある意味マーケティング的には成功なのかもしれませんが、ユーザー側としてはこのような手法はまったくもって歓迎できません。



  私にとってFar Cry 2はソートプロヴォーキング(*2)なタイトルでした。必要悪を描いたストーリーは示唆に富み、本質の見えにくい内容にはゲームの遊び方について考えさせられ、私自身のゲームリテラシー(*3)の低さ、ゲームに対する思慮の浅はかさを実感しました。

  ですが、いずれにせよFar Cry 2は万人には勧めがたいタイトルなのは間違いありません。個人的には楽しめた方ですが、とてもじゃないが人には勧められない。感想はあとでまとめます。日記中で言いたい事は言ってしまった感はありますが…。

(*1)体感治安  主観的な治安の感じ方。どんなに凶悪事件が発生しても、それを知らなければ体感治安は変わらない。逆に、小さな事件でも連日ニュースで流れると体感治安は悪化していく。昨今の日本がまさにその状況。事件を面白おかしく脚色するマスメディアとインターネットによる情報伝達の発達の影響が大きい。ちなみにBoiling Pointでは普通の老婆でさえ一介のソルジャーと化しており、一般人が突如恐ろしい敵に変わってしまうという体感治安の恐怖を如実に表している。

(*2)ソートプロヴォーキング  thought-provoking  直訳で、示唆に富む、考えさせられる。本来は前者の意味合いで使われることが主流だが、ここでは両方の意味で使用している。

(*3)ゲームリテラシー  作品の本質を理解し、適切に評価する力、としてここでは使用している。国民総批評家時代といわれる昨今、周りに流されずに物事を正しく咀嚼し、自分なりの答えを導き出す能力が問われている。ただ、漠然と「神ゲー、クソゲー」のような中身のない評価を下したり、企業レビューサイトの言葉をそのまま鵜呑みにするのではなく、自分で遊んで「どこが面白いのか、なぜつまらないのか」をしっかり理由付けて考えること、またその力を養っていくことが遊ぶ側にも必要。ユーザーのリテラシーが向上しない限り、メーカーが複雑な内容の物を作るのに及び腰にならざるを得ず、低レベルな作品の粗製乱造は止まらなくなる。