5時間でクリア。なぜスマホで幽霊をカシャカシャ撮ったらやっつけられるのか。リンダはいつ霊的な力に目覚めたのか。そういった素振りや説明が一つもなく、「零(FATAL FRAME)に影響を受けたゲームやから写真撮ったら霊を倒せるんやで」という甘えというか、プレイヤーに暗黙の了解を求めているような感じがもったいない。
リンダはこの事件に巻き込まれることで霊能力に目覚めたとか、霊は写真に写ると魂を取られるというようなカットシーンや会話がほんのすこしでもゲーム内に入っていれば作品への入りやすさも違ったものになったかもしれない。インドネシアの幽霊はスマホでカシャカシャすれば除霊できるのが当たり前というのなら土下座するが絶対そんなわけないわけで、そんなことで除霊できたら悪霊なんて絶滅しとるぞ。
Dreadoutでは連射可能なスマホにノイズが入った瞬間に撮影すれば霊にダメージが与えられるという仕様になっている。このスマホにノイズが入る距離が敵毎に違い、近くで鮮明な状態で撮影してもダメージを与えられないものとか、かなり遠距離で撮影するとダメージを与えられるものだとか、判定がはっきりせず、しっくりこない。
零には射影機という悪霊を封印できるカメラがあって、霊をギリギリまで引き付けることで与えるダメージが大きくなるという分かりやすい基本ルールがあったがDreadoutにはそのルールは適用されていない。しかも、敵のスピードが零よりも早く、狭くて動きづらい不利な地形でボスと戦わさせられたりする。いつノイズが入るかのが分からないので敵をファインダーに収めつつ連射しまくるのが定石という感じでこのへんのプレイ感覚は荒削りという印象が否めない。例えば、敵にピントが合わないとダメージが通らないというルールならまだ分かりやすかったかもしれないし、カメラに敵を収めるという説明ができたのではないか。ピントは明らかにあってるし、被写体も収めているのにダメージ与えられないとか、そこがピンとこないんですよ。弱点持ちの霊はまぁ許せるとしても。
ゲームバランスに関しても古いゲームのようなクドさや理不尽さが目立つ。鏡像の幽霊をカメラに収めるといったユニークなパズルや戦闘も一部あるものの、大半は荒削りな戦闘が占める。最近の洋ゲーは本当に洗練されていて、遊びやすく作られているものが多いのだなぁという実感と共に、Dreadoutももう少し修正を加えたら…と思う部分はあるが、この古いゲームのようなウンザリ感というかクリアした時の山を越えた感じは最近の洗練されたゲームにはないもので懐かしさもあったりする。だが、もう少し雰囲気ゲーム寄りというか、遊びやすくした方が万人に受けただろうという思いもあり、プレイ中は色々な思いが混在した。
といった具合に頭を悩ます部分は多い。減点方式なら大きくマイナスされてしまう点が多いし、粗を言い出せばキリがない。このゲームプレイやバランスなら途中でアンインストールしそうになるほど私にとって印象は良くなかったのだが、ACT1でゴーストタウンを訪れた時の異国情緒感、本当に東南アジアにこういう街があってそこへ迷い込んだような実在感に心を持っていかれて、それが忘れられなくて最後までプレイしてしまった。このシーンが無かったらきっとアンインストールしていただろう。私はこのゴーストタウンに粗削りでウンザリするゲームプレイを覆す程の衝撃を与えられたのだ。
これはちょうどSTALKERとかYou Are Emptyをプレイした時の感覚に似ている。本当に現地にはこういう景色があったんだろうな、そういう空気を肌で感じている人がレベルデザインしたんだろうなと思わせる真実味がDreadoutにもあった。やはり現地の人が作った現地の世界というのは実在感があって、もちろんその空間を作れる担当者のレベルデザイン能力も優れているのだと思う。テクスチャは昨今のものに比べると明らかに低解像度だし、なぜかフラットシェーディングのままの角ばったオブジェクトもあったりして、個々のオブジェクトは粗いのだが空間としての雰囲気や絵作りは心を持っていかれるものがあった。いくらテクスチャやマテリアルがよく出来ていても、空間作りがダメなゲームというものはあるし、どのようにアセットを配置して空間を構築するかという作業は私自身も本当に難しいものだと感じている。
最近はたくさんオープンワールドゲームがあって、作りこんだ世界を自由に行き来できるゲームが多いがそこに実在感があるか、その世界に心を奪われる瞬間があるかというとほとんど無い。アメリカやイギリスの定番風景を見飽きたのかもしれないし、元々その土地には私の興味はないのかもしれない。だけど、Dreadoutには心を奪われる瞬間が確かにあった。低解像度なテクスチャやローポリのオブジェクト、洗練されていないゲームデザインも相まって、まるで2000年前半のゲーム時代、コンソールならPS2やドリームキャストの頃に私もタイムスリップしたような懐かしさをゴーストタウンを訪れた時に感じたのだ。
ホラーゲームにとって重要な幽霊というか化物というか、インドネシア産の怪物の造形がよくできていて、ホラーゲームや逃走ゲームなんかにマンネリ感を抱えている私でも思わずゾッとするようなおぞましい怪物がDreadoutには出てくる。日本のものとはちょっと違うのだが欧米産の化物よりかは親近感もあり、なおかつ心理的に来るものがあるという感じで、その化物たちに新鮮味を感じつつ、ギョッとする瞬間が何度かあった。
カットシーンや演出に関しては定番を守っていて、きっと開発者はホラー映画やゲームを愛しているのだろうと感じる。こうくるだろう、こうくるだろうと思わせて、やっぱりきたーという予定調和だけど欠かせないものがしっかり用意されているのだ。カットシーンやアニメーション作りは小さい開発にとって大きな負担になるだろうが、もっとこの世界を掘り下げるようなカットシーンがあればよかった、というか見たかったのが正直なところ。一番初めに言ったカメラや除霊のくだりなども含めて、雰囲気や臨場感を高めてくれる説明があればもっとよかった。開発にとって3Dの本格的なADV制作はこれが初めてだったようで垢抜けなさはもちろんあるのだが雰囲気作りに関しては本当によくできていて、これで開発がもっとこなれてきたらすごいものになるのでは…という期待が膨らんだ。
欠点やマイナスな部分があるし、手放しでは褒められない。クソ…と言ってしまいそうになる瞬間もある。減点方式でプレイする人や完成度を求める人にはつらい内容となるだろう。しかし、それに目をつむることができたら…多少は我慢して体験や雰囲気を楽しむものだと思い込んで遊べる人なら上質な旅行感を味わえる作品である。東南アジアのこういった雰囲気を味わわせてくれるものはなかなかないし、ありきたりなスプラッターホラーモンスターには飽き飽きだぜという人にオススメしたい。
コメント
まるでシェンムーのことみたい(小並感)
死の淵から復活するのとか、もうわかんねぇな
なんか足りねぇよなぁ…あっそうだ、霊や妖怪などの図鑑とかあれば嬉しいダルルォ?
零見習ってエロい格好して下さい!(大声)
ゴーストタウンはシェンムーとかサイレントヒルとかあのへんの時代を思い出させるだで。
リンボはPreyにもあったけど、あれよりも意味なくて歩くの面倒にしか感じなかったですねクォレハ。
敵を倒したらゴーストペディアが更新されるのはよかったけど、もっと説明が充実してたらさらによかったと思った(こなみ)
お前ノンケかよぉ(驚愕) ACT1の車でHな格好、一本だけ下さい。