駿河屋さんから連絡来たよ。
「一部のパッケージに傷が有りますが、それでもよろしいですか?傷有り品は減額致します」とわざわざご連絡を頂いた。注文した品物はすべて在庫があるそうなのでひと安心。届くのが楽しみだ。特にガジェットが楽しみだね。
ガジェットは庄野晴彦氏のデザインセンスがいかんなく発揮されているとか、Half Lifeのメインプロットに影響を与えたと聞いて、前々から気になっていたソフト。安く入手できたのは幸いだった。
ガジェットを開発したのは、マルチメディアなんとかとかインタラクティブなんとかで名を馳せたシナジー幾何学。私はPCゲームを遊び始めた頃からシナジー幾何学の存在を意識するようになったが、すでにその頃には同社が倒産していたため、あまり印象に残っていない。
なにせ、彼らが大活躍していたのは90年代のことになる。当時、幼かった私は周りと同じように大衆向けゲームにしか興味がなかった。
唯一、シナジー幾何学のゲームで触れたことがあるのが「鉄人」だった。3DOを叔父さんから頂いて、その時にソフトも一緒にもらったのだと記憶している。ついでにNOBやAlone in the Darkもあったっけ。
もちろん、その時は鉄人をシナジー幾何学が開発したなんて知らなかった。というか、あの頃はどこのメーカーがゲームを開発したかはどうでも良かった。それほど気にしていなかった。
鉄人はスーファミやPSの大衆向けゲームとは別次元の異質さを孕んでいて、当時の私には風変わりな存在に感じられた。恐らく、初FPSも鉄人だったはずだ。
だが、物心がついていない子供にとって、淡々とした展開と鈍重な操作性は良い印象を与えず、途中で放棄することになる。また、息が詰まりそうな重苦しい雰囲気がゲーム全体に漂っており、それもピュアな童心にはウケが悪かったのだろう。
そもそも3DO自体が物好きな人向けのハードだったし、専用タイトルはおおよそ万人向けとは言い難いラインナップが多かった。鉄人自体も人を選ぶタイプのゲームだったために仕方のないことだったのかもしれない。「自己意識」とは、何をもって「機械と人間」を区別するのか、そもそも「人間」とは何か…子供にフィリップ・K・ディック的な心体論やJ・G・バラード的な内宇宙論(インナースペース)を問いかけたところで理解などできるはずもない。
鉄人はイントロムービーからして難解そうなイメージを孕んでいた。ネオン煌く近未来の都市の一角に聳え立つ謎の塔。街頭ビジョンに嶋田久作演じるマッドサイエンティストが映し出され、「見つけたぞ。お前は私のものだ」と発言する。
その後、主人公らしき人間がレリクス鉄人へと姿を変え、施設の中で気がつく。前方のディスプレイが開くとマッドサイエンティストが再び映し出され、主人公に目的を伝えるのだった。
生まれ変わった気分はどうだ?
お前は鉄人になるチャンスを与えられたのだ。
必要なのは意識だ。
意識だけが自らを意思を持つ存在と認識し、
その意思を加速させることができる。
人類は本来ならばすでに次の段階に達していなければならなかったのだ。
しかし、有機体という不完全なシステムがそれを妨げてしまった。
今こそ意識を解放し、鉄人を創造する時だ。
お前は誇りに思っていい。
鉄人として永遠に生きる可能性を与えられたのだ。
お前をこの目で見たい。
私のところへ来い。最上階の研究室だ。
途中、邪魔が入るかもしれんが自分で始末しろ。
ミスをすれば待っているのは死だ。
逃れることはできない。
同化プロセスは実行された。
待っているぞ…
鉄人として私の前に現れることを。
嶋田久作氏の個性的なビジュアルと淡々とした語り口が特徴的。いまでもこのシーンは印象深く残っている。
鉄人はFPSなのだが、前述した通り操作性はあまりよろしくない。視点移動(旋回)が鈍重で、しかも旋回中は移動ができない。戦闘も単調な駆け引きに終始しており、内容は出来の悪いDoomクローンであった。操作性の悪さ、Wolf3Dよりも単純な構造のマップは普通に考えると技術不足にしか考えられない。
しかし、いま改めて考え直すと、その技術不足に見えた部分は意図的なものだったのではないだろうか。
窮屈なマップの構造と狭い視野は鉄の檻に囚われた意識を象徴し、鈍重な操作性が鉄人の重厚感を表現。ノイズが入り混じった金属質なBGMが重苦しい雰囲気を与え、プレイヤー自身が鉄人になったようなシンクロ(同化)感を与える。
操作性の悪さを好意的に解釈すると「鉄人という存在を体験(シミュレート)させるための演出」のようにも思えてくる。
考えてみて欲しい。鉄の塊が動くとして、Doomguyのように飛んだりはねたり、機敏に動いたりするのはイメージにそぐわないだろう?(ウィンスペクターとか、ジャンパーソンのようなメタルヒーローは別物として)
メック ウォーリアや鉄騎みたいに「ズシッ、ズシッ」とゆっくり一歩を踏み出し、動作の一つ一つが重厚な方が、いかにも鉄人ぽくはないか。だが、各々に鉄人観があると思うから異論は認める。理解なんてものは概ね願望に基づくものであり、解釈は人の数だけある。
佐藤孔盟氏によると、鉄人には続編「鉄人リターンズ」があったらしく、ゲーム内容は遊びやすく改善されているらしい。しかし、そのトレードオフとして、鉄人らしい異質な雰囲気が損なわれているとか。機会があれば遊んでみたいものである。それよりも鉄人をクリアするのが先決か。うちの3DOは今でも通電しているので、やろうと思えばできるのだが、やろうと思う気がない。
中古なら3DO本体と鉄人合わせても2000~3000円で入手可能なので、興味のある人は遊んでみて欲しい。そして、クリアした暁にはエンディングの内容をUNK氏に教えてあげよう!
コメント
鉄人、初めて知ったのですがとても面白そうです。
90年代の日本産FPSだとPSのKILEAK,The Bloodなんかはやったことがあるんですが
(あれも一作目はマップがちょっと単調で途中で飽きちゃったんですケド・・・)
KILEAK,The Blood懐かしいですね。
マシーネンクリーガーなメカデザインがかっこよかったのを覚えています。
日本産FPSはPSやSSの頃が一番栄えていたんじゃないかと思います。
ジャンピングフラッシュ、クライムクラッカーズ、ベルトロガーとか、外国産FPSにはない味がありましたね。
市場は手探り感が強く、あの頃は簡単な3D処理でも許される時期でしたし、
コントローラーの操作性に単純なマップ構造のFPSがマッチしていました。
鉄人は3DOのほぼロンチタイトル(1994発売)というのもあって、
技術不足な面が目立ち、FPSの作りはよろしくありません。
今回、画像を撮り込むためにちょっとだけ遊んだんですけど、操作にはストレスが溜まりました。
FPSとしての出来はKILEAK,The Bloodの方が優れていますし、遊びやすいと思います。
ただ、ゲーム内を覆っている異質な空気には独特な味がありますので、
そういうのに惹かれる方なら雰囲気ゲーとして楽しめるのではないでしょうか。
東脳やLSDの感覚に近いですね(あそこまでイッちゃってはいませんが)。
●追記
鉄人は海外ではIron Angel of the Apocalypseというタイトルで販売されていたようです。
http://www.youtube.com/watch?v=T9vkoq_8AAY