Fort Zombie – 価値観の相違(2)

・初日

原因不明の感染症が発生してから数日後。ここピエティの街にも魔の手は及び、通信や交通機関は完全に麻痺してしまった。そして、重苦しい空気に包まれた街の中を”やつら”が闊歩する。あちこちから聞こえてくる、低い呻き声は空耳ではない。これこそ血肉に飢えたやつらの存在証明なのだ。物思いに耽っている間に、やつらの声がさらに近づいてくる。

我に帰った私は護身用のハンドガンとバールのようなものを握り締め、家を後にした。街はすでにやつらのテリトリーだ。ここを離れ、安全な場所へ避難するのが懸命だろう。街から少し離れていて、立てこもりやすい場所を考えた結果、警察署が思い浮かんだ。造りは頑丈だし、もしかしたら武器も見つかるかもしれない。そんな一縷の望みを賭け、警察署を目指す。

やつらは私を発見し、唸り声を挙げながら追いかけてくる。しかしながら、足は遅く、こちらには追いつけそうにない。私はなるべく見つからないよう裏通りを慎重に進む。こんなところで無駄に体力を消耗するわけにはいかない。やつらに囲まれたとしても、とっさに逃げられるように余力は残しておくべきだ。

ハンバーガー屋の角を曲がったところでやつらのグループに発見される。だが、念願の警察署も目前だ。私は全速力で警察署へと駆け込む。ところが警察署の中も荒れ、生存者の影もない。そこに居るのはやつらだけだ。

私はここを拠点にすべく、やつらの殲滅に乗り出した。ハンドガンを握り締め、頭を慎重に狙っていく。いくらやつらでも頭を潰せば生命活動を終える。人間に比べて動きが愚鈍だから狙いやすい。

武器保管庫にはショットガンが置かれていた。心強い武器の登場に少し勇気づけられる。その時、後ろを振り返るとフットボール選手の格好をしたスポーツマンがタックルをかましてきた。

不意をつかれたものの、すぐさま態勢を立て直し、狙いを定める。この距離なら目をつぶっていても当てられるくらいだ。弾を頭に撃ち込まれたフットボール選手は生き絶えた。

二階の冷蔵庫はまだ電気が通っており、ここには食料が保存されていた。食料がこれだけあれば十数日は持つだろう。

やつらの殲滅を終え、壊れていない扉や窓はしっかりと閉じる。手持ちのアイテムを利用してバリケードの準備をした。十分なバリケードを築くには一人では手が足りない。誰か協力者が必要だ。このまま警察署にこもっているだけではいずれ尽き果てる。それに一人では心細い。私は恐怖に震えながら武器保管庫で横になる。疲れていたせいか、いつの間にか眠っていた。

・一日目

地図を広げ、物資や生存者がいそうな場所に目星をつける。ハンドガンと少量の弾薬を持って、再び街へと出かけた。街の風景は昨日と同じで、まるで時間が止まったようだ。もしかしたら今までの出来事はすべて夢で、平凡な日常に戻っているのではないか。そんな期待は脆くも崩れ去った。儚い期待を抱いてしまうのは、心のなかで未だにこの現実を受け入れられない自分がいるのかもしれない。

スーパーのトイレでマークというおじさんを発見する。彼は電気工事士で機械や電気の扱いや大工仕事が得意らしい。バリケードの手伝いをしてもらうのがいいだろう。私と一緒に安全な場所へと行きましょうと提案すると、快く了解してくれた。彼のおばあさんや兄弟はこの街にいるらしいが、この出来事のせいで離れ離れになってしまったようだ。

まだ外は明るい。マークさんには警察署でお留守番をしてもらい、もう一度出かけることにした。とある民家で弾丸ボックスを発見し、調べてみると予想通りハンドガンと弾薬、それに日本刀がしまわれていた。ここの主には申し訳ないが、今後のために頂いていくことにする。辺りは薄暗くなってきており、余計に恐怖感が強まる。こんなことならマークさんにもついてきてもらった方がよかったかもしれない。

・二日目

街の周辺部にある迷路を探索しているとテントを発見。その中には子ども二人が身を隠していた。両親とはぐれてしまい、二人で身を寄せ合ってここで暮らしていたらしい。やつら脳が腐っていて、馬鹿なので迷路をまともに進むことができず、ここは今まで安全だったようだ。迷路の中に住むのは一つの手かもしれない。この兄弟は工作が得意らしいのでバリケードを手伝ってもらうとしよう。

帰りの道中で弟がやつらに襲われる。すぐにハンドガンでやっつけたものの、彼には大きな傷を負わせてしまった。警察署に置いてある治療キットで応急処置ができればいいが・・・。

・三日目

教会の中から銃声が聞こえたので入ってみると、そこには軍人の格好したやつらがアサルトライフルを構えていた。生きていた頃の記憶が残っているのだろうか。今なお、ここに入ってくる者を容赦なく撃ち殺し続けているようだ。外からやってくる得体の知れない者。それは私たち生存者にも当てはまることかもしれない。この街、いやこの世界ではすでにやつらの方が大多数であり、生存者は少数派だ。やつらにとってみれば、私たちの方が異質な存在。昼間にやってきて、家の中をあさり、やつらの仲間を銃で撃ち殺ち、夜になると去っていく私の姿はやつらからはどういう風に見えているのだろうか。

もう片方の教会の中にはおじいさんと女性が隠れていた。女性のサイズが異様に小さいのが気になったが、口には出さないでいた。彼女はその身体に似合わず、格闘に自身があるようだ。これは心強い仲間ができた。

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