溶鉄のマルフーシャ – かわいいは正義(クリア)

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普通の女の子が徴兵され、隣国から攻めてくる機械兵から門を守るために戦う、悲観的な世界を舞台にした防衛シューティング。

ストーリーモードは防衛を100日行うとエンディングを迎える。何日間、防衛できるかを競うチャレンジモードもあるが、1~2時間あれば大体の要素を遊びつくせるだろう。ゲーム内容が単純明快でテンポが良いので手軽に遊べるが戦闘にもう少し深みがあればなお良かった(※後述する)。

救いようのない世界の唯一の希望「かわいい」

ストーリーモードはイベントシーン→防衛の繰り返しで行われる。普通の女の子のマルフーシャが人手不足という名目で徴兵され、最前線に立たされるという救いのないところから始まる。その後の幕間では愛らしくてコミカルなキャラクターとの会話があり、絶望的な雰囲気に彩りを与えている。

ディストピアだからといって一辺倒に重苦しくせず、日常系アニメ的なノリを加え、緩さと重さを混在させている世界観が本作の魅力の一つと言ってもいいだろう。ドットで描かれているそれぞれのキャラクターも大変かわいらしい。

真意が疑わしいプロパガンダがラジオから日夜流れてきてウンザリしたり、戦えど戦えど楽にならずにむしろ苦境に立たされていく状況に拍車をかけているのが給与明細。防衛に応じて基本給は右肩上がりで上がっていくものの、それ以上に控除が増え、手取りは一向に増えず、救いようがない暗い気持ちが広がっていく。

現代の管理通貨制度では自国通貨建てで変動為替相場制の国において、税は財源ではなく、税が通貨消滅の手段であるが、この世界では金本位制なのか、共通通貨建てなのか、日本人のように貨幣がなんなのか理解していないのか、いずれかの理由で重税国家となっている。

累進負担を大きくすることで所得格差の是正を行っているようにも見えるが、封建的な主従関係を維持する為の手段として税が利用されているように思う。自国通貨は政府が発行して国民に配布した時に増え、政府が国民から税として回収した時に消滅する。過大な税金を課し、国民から通貨を回収すると通貨量が減少して貧困化が推進され、一部の資産家や為政者の権力が益々強まってしまう。

人材の源泉であるはずの若い女性を前線に立たせ、無駄死にさせている時点でこの国の破綻は遠くなく、属国の日は近い。

防衛パートではマルフーシャを操作して、襲ってくる機械兵を破壊する。移動と照準だけで操作は単純。防衛が完了する毎に給与をもらい、装備を購入していく。年端もいかない女の子がせっかく手に入れた給与で武器を購入する姿を見ていると武器商人に良いように扱われているように思えてならない。

能力アップカードを購入すると基礎ダメージや速度が上がっていくものの、劇的な上昇ではない為、武器本体を購入した方が違いが顕著に分かりやすい。日数が進む毎に敵の襲撃が激しくなり、初期武器のハンドガンではさばききれなくなってくる。

冒頭で申し上げた通り、戦闘は単純明快でテンポが良いので手軽に遊べるのだが、能力のアップグレードが地味で変化が分かりづらい。変化のない戦いが延々と続いていく描写は本作の雰囲気に合っているものの、後半に行くにつれてSerious Sam Double Dのような激しいインフレを味わえる内容ならゲーム的にはもっと盛り上がりが生まれたのではないかと思う。能力アップやスキル等の相乗効果で幅広さがあるとなお良かった。

絶望+かわいい独特な雰囲気を楽しむゲームと思って遊ぶのがいいだろう。このゲーム内容にプラスアルファしたものが出たらまた遊んでみたい。

共同体や繋がりの重要性を理解しているマルフーシャ。日本の財務官僚や新自由主義者に聞かせてやりたい。

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