メルルのアトリエ ~アーランドの錬金術士3~ DX 感想– 自己実現の物語(クリア)

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三部作の集大成となるが後半はやや尻すぼみ

アーランドシリーズの第三作目。小国の姫メルルが錬金術師のトトリと出会い、錬金術の力で王国を発展させていく物語。二作目の主人公だったトトリが今回は師匠、仲間として手助けしてくれる。

二作目では未成年だったトトリも今では成人し、頼れるお姉さんとして描かれているのが微笑ましい。一作目の主人公ロロナに至っては30代に突入し、時間の流れの恐ろしさを実感させる。

30歳を超えたロロナ先生

異なる主人公を用意して、三世代の錬金術士の成長を描いているのがこのシリーズの特徴であり、魅力である。多方向から描くことで見えてくるものも異なり、厚みも増すのだ。主要な人物の半分くらいは過去作からの登場キャラ。一作目、二作目を継承した上での三作目なので一から順番にプレイした方が物語は楽しめるだろう。

ほんわかした世界観と個性豊かなキャラクターの掛け合いは今作でも健在。登場キャラが増え、会話イベントは今まで以上に豊富だ。しかし、メインのストーリーは盛り上がりに欠ける。トトリを主役として家族の物語を深く描いていた二作目に比べると今作は後半がアッサリとしていて、これで終わり?という感が否めない。

二作目から成長したトトリ先生

依頼の期限がさらに緩和

一作目のロロナの目的はアトリエの存続。二作目のトトリは母親探し。三作目のメルルは王国の発展。主人公の立場やテーマは異なるが基本的には敵を倒し、素材を集め、調合し、依頼をこなしていく、いつもの流れだ。王国の発展といっても依頼を完了させていけば評判が高まり、勝手に人口が増加していく。

難易度は一作目よりも易しく、さらにとっつきやすくなっている。一作目の主目標と副目標には三ヶ月という期限があり、ギルドで受領できる依頼にも納期が設定されていた。主目標自体は簡単な内容だったものの、その他のノルマに追われる窮屈さが存在した。

課題はマップの探索と調合品の配達が主

今作でも主目標には期限がある。一年で5000人、二年で15000人に人口を増やすなどだ。ただし、これはものすごくゆるいノルマ。普通に依頼をこなしていたら、いつの間にか達成している。

また、副目標、その他の課題や酒場での依頼には期限が設定されなくなった。一作目、二作目では安易に依頼を引き受けたものの、いつの間にか期限超え、移動時間の見積りを誤って失敗ということもあったのだが今回はそういった圧迫感から解放されている。とりあえず依頼を引き受けておいて気が向いた時に達成することが可能になった。

定期的に発行される新聞。行動に応じて内容が変化する

難しすぎず、ほど良い難易度

戦闘に関しては一作目と二作目の中間の難度で、システムは一作目(ロロナのアトリエDX)と共通。一作目の序盤はロロナのゴリ押しで突破できた。二作目は装備やアイテムの充実に時間を要して中盤を超えるまでは厳しい状況を強いられた。今回は初めから範囲攻撃可能な仲間が加入し、メルルはアイテムをきちんと使っていけば苦戦しない難度に抑えられている。

トトリ先生は範囲攻撃の上に攻撃力も高く、雑魚を一掃できる。前作でお世話になったアイテム複製スキル「デュプリケイト」を初めから習得しており、頼もしい。早い段階から前作のキャラがどんどん加入するので、選び放題で誰を連れて行くか迷うくらいだ。仲間選択の自由はシリーズ中で一番高く、戦術の幅が増えている。

うには無料で手に入る。アシストスキル発動の為に序盤からアイテムをガンガン使っていこう

マップの移動はすごろく形式で、戦闘や採集毎に日数が経過する二作目のトトリ方式を採用。二作目では行く必要性のないエリアがたくさんあったのだが今作では課題が各エリアの探索に設定され、エリアを見て回る必要も生まれた。一作目と二作目の折衷だ。

移動に時間がかかるので課題を確認して一気に完了させていきたい

課題をクリアすると砦や農地ができたりと王国の発展を外見でも実感させる作りになっており、一作目からの改良も見られる。

フィールドの背景の作り込みも魅力的

調合システムやUIは一作目と共通。一作目をプレイ済なら違和感なく入れるだろうし、二作目の使いづらいUIにうんざりした人も今回は安心の出来だ。

調合品にどんな特性を継承させるか。試行錯誤が楽しい

初心者にも遊びやすい三作目

三作目だけあって遊びやすさを配慮した内容に仕上がっている。窮屈さを感じた一作目、放任が過ぎた二作目から軌道修正し、バランス良くまとめられている。

物語のテーマは国の発展と錬金術になるがこの2つをかけ合わせたことにより錬金術とはこの社会にとってどういうものかを分かりやすく表現している。一作目の時は錬金術の必要性がそこまで深く描かれておらず、王国の手に余るような扱いだった。二作目でも冒険が主題で錬金術はさほど重要なものではなかった。

しかし、今作では姫としての責務を自分のやりたい錬金術で実現させていく、仕事と生活の調和と自己実現を描いたものとなった。自分のやりたいことを突き詰めれば仲間が増え、社会は発展し、生活は彩っていくという夢のような物語だ。

誰だってなにかしらの夢、やりたいことがある。だが、現実を生きていく上でやりたくないことをしなければ生きていけない人もいる。むしろ、過半数はそういった人で、この社会が成り立っていると言っていい。

重要なのは夢と現実をどう紐つけるかだ。メルル姫は錬金術の素養はあったものの、その活かし方は分かっていなかった。それを執事のルーフェスが社会の発展へと結びつけたことによりうまく回り始めた。どんな夢のような技術も使い方を誤れば無用の長物に過ぎないのだ。

自分のやりたいことをやるのは大切。でもそれを活かす方法を考えるのはもっと大事。自分が自分らしく生きていけるよう考えよう、ということをメルルのアトリエは言いたいのかもしれないし、そういう考えはないかもしれない。100%そういう意図はないと思う。※ノーマルエンド35時間でクリア。

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