毎度のごとく一年を振り返ってみたい。とはいえ、今年は作るほうに意識が行ってしまい、やり残したゲームも多いのだが…。
純文学賞 – The Vanishing of Ethan Carter
サイコメトリー推理ものと見せかけて強烈なちゃぶ台返しで胸を抉ってくるメタトリック作。アイデンティティ、家族の問題を創作活動に引っ掛けて切り込んでいるのが特徴か。
Dear EstherやGone Homeの文法に沿ったゲームデザインであり、これらに共通するのは自分語りのツールとしてゲームを活用しているところである。それぞれ開発者の想いや体験がゲームに強く反映されており、私小説や純文学の手法をゲームに持ち込んだものと考えれば理解しやすいだろう。言うなれば作者の頭の中を探索するゲームだ。本作は面白いことに二重の意味でそういう構造になっている。それゆえに各作品の主題(テーマ)に共感できるかが焦点となるのだが、あいにくDear EstherやGone Homeは私にはピンと来なかった。しかし、本作でようやく折り合いをつけることができた点を評価したい。
創作に行き詰まっている人、なにか夢を持っている人、プロ野球選手になることを夢見たホモビ男優、声優になることが夢の東方好きの女の子にオススメしたい。
雰囲気賞 – Depths of Fear :: Knossos
作りが荒く、戦闘も前時代的なのだが、雰囲気が素晴らしく、まるで迷宮で彷徨っているような没入感を味わえる。迷宮に響き渡るヤギの声が忘れられない。ゲームとしては欠点が多いのだがそれを凌駕する雰囲気を評価。
衒学賞 – Killer is Dead
ストーリーはシナリオライターの好きなものを羅列したような内容でゲーム中では多くを語らない為、衒学的と言われても仕方のないものなのだが、私にはルーツになるものがおおよそ理解でき、こういう風なんだろうなと色々と想像する余地があり、楽しめた。良い意味で馬鹿馬鹿しく、こういうおふざけもたまには悪くない。
海外のアクションゲームがバットマンのパクリの乱発になる中、独自の剣戟アクションで爽快な戦闘を楽しむことができたのも新鮮味があった。コンボが続くとプレイヤーの気持ちに呼応するようにモンドのアクションが激しくなっていくのも気持ち良い。
ゲームエンジン賞 – Unreal Engine 4
月額2000円、学生フリー、ゲームエンジンの民主化をさらに推し進め、毎月楽しみを提供してくれた。物理ベースのマテリアルは扱いやすく、アーティスティックな表現が苦手な人間でもそれなりの絵を作り出せて楽しい。来年、再来年には個人開発のクオリティの高いものが出てくるのではないだろうか。いまから楽しみだ。