Dishonored – A級の没個性(1)

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主観視点で剣戟アクションをやらせたら右に出るものはいないArkane Studiosの新作。女王殺しの濡れ衣を着せられた主人公は暗殺者となり、黒幕たちを華麗に葬っていくステルスアクションゲームである。特に情報を仕入れておらず、びっくりしたのだが今回は剣戟要素は控え目。どちらかというとステルス寄りなのが意外だった。ゲームデザインはBioshockやらDeus Ex人間革命などに近い即興性を重視したもので、数ある解決方法の中でどれを選択するかは自由というスタイル。好戦的にチャンバラしても良いし、魔法で駆け抜けても良いし、ステルスでこそーりやっても良いという風になっている。

敵に比べて主人公の強さはオーバーパワー気味で初めから全能感を味わえるバランス。そのため敵に見つかった時の緊張感はそれほど高くない。剣戟の難易度はDark Messiahと比べて低く、あのジリジリした駆け引き性を味わってしまうと物足りないものがある。

序盤から瞬間移動「ブリンク」の能力を習得し、これが本当に便利。障害物から障害物への移動はもちろんのこと、敵の頭上を飛び超えたり、屋根の上に登ったりと移動の自由度を大幅に広げている。ブリンクを駆使すれば従来のステルスゲームではできなかったことややりづらかったことが容易になる。例えば敵の背後から近寄って気絶させる場合、普通は敵の動向に注意しつつじわりじわりと近寄らざるを得ないが本作ならばブリンクで一気に敵の背後に忍び寄れるわけだ。「ステルスはどうも苦手で・・・」という人もブリンクによってハードルが下がっている。

ブリンクの能力をさらに活かせるようにレベルが多層的な作りになっており、様々なルートが用意されている。とにかく敵は見上げない。バットマンの敵よりも上を見ないのでブリンクで屋根に登ってしまえば安全といっていい。マップ内にはアイテムやお金にルーン(能力を上げる)が散らばっており、探索を楽しませる。

ミッションの解決方法が「要人の殺害」だとしても方法は複数用意されており、直接手を下さない方法もある。まともに暗殺できない暗殺者の詐欺ゲームとは違い、こちらは解決方法がプレイヤーの手に委ねられているのが心地良い。また敵の殺害数によってカオスの度合いが加減し、街の雰囲気が変化していく。死体が多ければ多いほど街は荒み、ウィーパー(疫病者)やネズミが溢れていく。結果がしっかり可視化されているのが面白く、プレイスタイルに経験値とかそういう薄っぺらいものではなく、”意味”をきちんと持たせている。複数に亘って同じマップを利用しているミッションもあるが変化によって手抜きだとか使い回しとは感じさせず、うまく利用している。

テクスチャはコンセプトアートをそのまま再現したような荒い塗りが独特である。個人的に人物にリムライティングを効かせすぎるのは好みではないのだが、人物造形はトゥーン的でなかなか個性的なスタイルになっている。世界観はHL2のCity17を手がけたデザイナーが関わっているらしく、確かにそういう雰囲気ではあるのだがCity17ほど強烈な印象はなく、どことなく二番煎じというかどこかで見たような既視感を覚えるところが残念だ。夢の世界?のVoidにしても、こっちはそれよりも強烈なVoidを先に見てしまっているわけで・・・。

また、序盤こそめまぐるしく展開が変化していくのだが、それ以降は「暗殺してきてくれ」→「自由に暗殺」という感じで自由を重視する余り、淡々としていて惹きこまれるものがない。全体的なレベルは高いのだがそれを超越するようなものがない優等生的な作り。というのがこのゲームに対する第一印象である。それは不名誉だって?そうだったらいいね。

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