Postal 3 – さらに内輪向けに(1)

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奇抜な事件に巻き込まれたら右に出る者はいない不運の男、ポスタル・デュードが主人公のアクションゲーム最新作。今回も頭のイカれた抗議団体やアルカイダを相手に様々な武器を用いて戦うことになる。1はクォータビュー、2はFPSだったが、今回はTPSとなっており、ムービーシーンの数も多く、デュードのキャラクター性が前面に押し出されている。

ストーリーはPostal2 Apocalypse weekend後となっており、冒頭でこれまでの経緯が軽く説明される。デュードはゾンビによって壊滅したパラダイスシティを後にし、今度はカタルシスという街で生活を始めるが、ここでも様々な事件に巻き込まれていくことになる。

Postalと言えば残虐性だけが何かと取り沙汰されるが、2はオープンワールド系のゲームがまだ珍しかった時代にリリースされ、詳細な日常描写の作りこみが際立っていた。銀行へお金を下ろしにいったら強盗事件に巻き込まれたり、図書館へ本を返しに行ったら環境保護団体の抗議活動に巻き込まれるといったように、実際に有りそうな出来事とゲーム的なケレン味のあるトンデモ展開を合わせて、個性的な内容に仕上っていたのが印象的だ。ありきたりな日常もボタンを一つかけ間違えたらどうなるのか。そんな日常と非日常の境に焦点を当てたゲームデザインはオープンワールドゲームが多数発表されている2012年の現時点においても未だ目新しく、手垢だらけのGTA3フォロワーとは一線を画している。

しかしながら、何を血迷ったのか。今回は1やWeekendのようなステージクリア型の作りになっており、自由に街をうろつくことはできず、狭いマップの中で敵を倒したり、アイテムを集めるだけである。リリース前の動画では2のようなオープンワールド的な部分も見受けられたのだが、残念ながら製品版では一本道のミッションのみ。実開発がRWSからAkellaへ委託され、延期を何度も繰り返したことからも想像できるように何か問題があったのか、あるいはオープンワールドなゲームデザインに対して心境の変化があったのは確かだろう。

今作ではステージが始まった時点ですでに事件に巻き込まれており、普通の日常をプレイヤーが味わうことができない。初めから異常事態なのだ。これでは普通のゲームとなんら変わりがない。非日常とは日常があるからこそ異常性が際立つものだ。2が残虐だのなんだのうるさく言われたのは、日常描写がしっかり描かれていた為、余計に残虐性が際立って見えたせいではなかろうか。

四肢切断などのゴア表現は相変わらず健在なのだが、視点の違いによって2のようなインパクトは味わえないし、火達磨やスタンガン(3ではテーザーガン)による気絶はマイルドな表現に変化している。2はデュードになりきるという方向性だったが、3ではデュードを操作するという感じでキャラゲーに近い。2とは別物と考えてプレイするべきだろう。ただし、デュードの声優が諸事情(なかなか消息が掴めず収録に待ち合わなかったらしい)によって別人となっており、キャラゲーとしても微妙な立ち位置なのだが・・・。3の声優はこれはこれでアリではあるが、Duke NukemがJon St. Johnじゃなければ成立しないように、やはりあの声じゃなければデュードらしくはない。

ステージの合間に入るムービーはポスタルらしいシュールな笑いに富んでいて面白い。どのステージも異様でゲスいシチュエーションばかりでこれぞPostalという作りであり、憎まれ役のウーヴェ・ボル監督や巨根男優のRon Jeremyなどが出演していて、ネタ元を知っている人はニヤニヤ楽しめるだろう。ボル監督がナードたちとボクシングで戦うパロディはさすがRWSという他ない。

今回は善悪のカルマが導入されており、一般市民を助けると善、虐殺すると悪へと分岐が別れていく。異臭ガスやテーザーガン、拘束アクションなどの非殺傷系の攻撃手段が増えており、生かすも殺すも自由になっている(2も不殺で進めないことはないがかなり難しかった)。善悪でミッション内容はガラっと変わるので好きな人は二度楽しめるのではなかろうか。


風刺やパロディなど、ユーモアは相変わらずで面白いが、2よりも大味なバランスでシューターとしての作りはB級ロシアゲーの水準。オープンワールド要素も削除されている為、日常パートを期待してはいけない。動作がかなり不安定でクラッシュしやすい為、個人的には安くなるまで待った方が賢明だと思う。

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