Epic Games Storeで無料配布された時に入手し、インストールしたままプレイしていなかったSevered Steel。Unreal Engineを触っている時にライブラリにSevered Steelが残っているのに気付いてプレイすることにした。
プレイ前は「F.E.A.R.に影響を受けたFPS」というイメージを持っていた。それは合っている部分はあるものの、単なる模倣で終わっていない。QuakeやHalf LifeのアクションMOD、Max Payne、Mirrors Edge、Titanfallを組み合わせて、ハイスピードに先鋭させたFPSだった。
Max Payne、Mirrors Edge、Titanfallで私が物足りなく感じた部分をSevered Steelは埋め合わせてくれた。欲しいのはこういうことだったのだと膝を打つ思い、一つの解答が見えた。

Max Payneに足りなかったのはなにか
Max Payneでは飛び込み中にスローモーションになる。飛び込み中は死ぬことはないが、地面に落ちた時に無防備な状態が生まれ、そこを狙われると死ぬ。バレットタイムは回復に時間がかかる為、連発はできない。飛び込みやバレットタイムの使いどころを考えないといけず、これらは起死回生の一発になりえるが、窮地を招く恐れもあり、よく死ぬゲームだった。失敗した時の挽回が用意されていなかった。
Mirrors Edgeに足りなかったのはなにか
Mirrors Edgeの面白さはパルクールを駆使してゴールを探すところにある。敵の銃を奪って戦うこともできるが銃撃戦は面白みがなかった。パルクール+シューターの方向性は模索されておらず、中途半端に銃撃戦が挿入され、異物として存在していた。

Titanfall2に足りなかったのはなにか
Titanfall2はダブルジャンプや壁走りが実装されており、機動力が高い。しかし、それらは謎解きの為のもので、戦闘に使わなければならないテクニックではない。たとえ、壁走りしながら敵を撃つというカッコイイアクションが行えたとしても、必ずしもそうする必要はなかった。
Severed Steelではどうなのか?
Severed Steelには壁走り、飛び込み(Shiftキー)、スライディング(Ctrlキー)などのアクションが用意されており、これをスタントシステムと表現している。これらのスタント中は無敵であり、主人公に弾が当たらない。映画のヒーローがアクション中は敵がどれだけ弾をばらまこうが当たらないのと同じように、このゲームではスタントさえやってれば当たらない。

しかし、スタントは忙しいし、このゲームの展開は早くて、頭と手の処理が追い付かない。そこで利用するのがバレットタイムである。右クリックを押せばバレットタイムが発動し、時間がスローモーションになる。これならスタントも銃撃も両立できる。
だが、バレットタイムは使用時間が限られており、敵を倒すか、時間が経過しないと再利用できない。これは困った。

ただし、その問題を解決する抜け道がスタントに用意されており、スタント中はバレットタイムも無限で使用できるという設定になっている。すなわちスタントを維持すれば無敵とスローモーションを使い続けることができる。
これは非常に合理的で、なおかつ洗練されている。スタントは忙しいがバレットタイムでコントロールできる→バレットタイムは時間制限があるがスタント中は無制限になる、という循環構造になっており、実装されている機能が見事に噛み合っている。
Max Payne、Mirrors Edge、Titanfallで私が納得行かなかった部分への答えになっており、高機動アクションFPSの一つの到達点といっていい。

Severed Steelでは敵の攻撃を恐れて障害物に隠れなくていい。シューターなのに敵に近寄っていい。飛び込みとスライディングを繰り返す変態機動をすれば堂々と姿を現して戦っていいのだ。だって変態なら無敵なのだから。
しかも、一部の人にしか許されない変態機動がこのゲームでは手軽に行える。習熟に時間がかかり、一部の人にしか操れないのではなく、万人ができる。とても現代的なゲームだ。
ゲームの楽しいメカニズムのいくつかについて、もう少し掘り下げさせて下さい。バレットタイムのアクロバットと、積極的なアクションにより発生するエンゲージメントで防弾状態を維持するというシステムを組み合わせたのはなぜですか?
https://www.unrealengine.com/ja/developer-interviews/severed-steel-is-an-fps-inspired-by-superhot-and-hotline-miami-made-mostly-by-a-solo-dev
Larrabee 氏:FPS ゲームをプレイするとき、ダメージを受けたくないな、と私はいつも思っていました。視野が狭いことと当たり判定が不明なことから、良い設計の FPS ゲームでさえ、開発者が恣意的にダメージを与えているのではないかと感じることもあります。Severed Steel のスタント システムでは、障害物の後ろに隠れるだけでなく、スタントを連鎖させることで、どんな場所にいてもダメージを軽減したり防いだりすることが可能です、戦略的には敵に向かって移動することが安全な行動となるため、非常に積極的なプレイが可能となります。
Severed Steelが抱える問題点
弾薬問題
これまでの高機動アクションFPSが抱える問題を解決した一方で、私の納得のいかない要素がいくつかあった。一つは弾薬。このゲームでは弾薬の所持はできない。銃を一つだけ所持し、弾が切れたら敵の持っている銃を奪うことが推奨されている。
前述したスタントの仕様で近接戦闘は容易に行えるものの、好きな銃を使い続けることはできない。銃をぽいぽいと入れ替えていく必要がある。これはこれでパズル的面白さがあるのは同意するが、気に入った銃を使い続ける余地もあれば良かったと思うのだ。
このゲームはこれまでの問題をスタントですべて解決してきた。それならばスタント中は弾が無限になればいいのではないか。どういう理屈なんだと言われるかもしれないが、アクション映画の主人公がマガジン以上に弾をばらまいているように、スタント中はそういう無敵シーンがあってもいいのではないかと私はチラシの裏で思った。ただ、この問題は初回プレイ時は解決されないが、FIREFIGHTモードで一応解決できる。

物語性を求めるひとは
これは私にとっては問題ないのだが、一部の人には問題になるかもしれない。このゲームには設定や物語はあるようだがカットシーンでは文章や台詞がなく、絵が表示されるだけ。主人公は誰で、出てくる登場人物が何者でどうなっているのかはほとんど分からない。
プレイヤーに想像の余地を残すために敢えてこういう作りにしているのか、それともローカライズや声優などの手間を考えてこういう作りにしたのか。意図は定かではないがそこそこの枚数の絵や演出が用意されていたので主人公の独白を入れるだけでも印象は違ったものになったのではないかと思う。

ただ、個人的にガチガチのシューターに物語性は求めていない。例えば長いカットシーンだったら邪魔だとすら感じることもある。このゲームにおいては作者の意図する「激しいアクションのちょっとした休憩」として十分機能していたと思う。
ゲームの背後にある物語について教えて下さい。また、その物語とゲームの仕組みはどのようにつながっていますか?
Larrabee 氏:これは、主人公が復讐を行う物語です。主人公の Steel (スティール) は、Edensys (エデンシス) という会社で長年働いていましたが、仕事で怪我をしてしまいました。そして、Edensys は怪我をした彼女をもう価値がないと判断して捨てることにしました。こうしたバックストーリーにより、プレイヤーは戦っている場所に対する思い入れが強くなります。また、短いカットシーンもありますが、これは激しいペースでアクションが進む中でのちょっとした休憩として機能しています。戦う場所は、Edensys の地下から始まり、工場、カフェテリア、トンネルなどさまざまな場所で展開されていきます。最終的には幹部がいる場所である、美術館、華やかな庭園、大理石のタイル張りの会議室などが戦場となります。
https://www.unrealengine.com/ja/developer-interviews/severed-steel-is-an-fps-inspired-by-superhot-and-hotline-miami-made-mostly-by-a-solo-dev
時間的ボリュームの短さ
あとは価格の問題だ。私は無料で入手したので価格について不満はない。ただし、キャンペーンは2時間程度で終わる。FIREFIGHTモードがあるとはいえ、定価¥2,570と考えると時間的ボリュームは少なめと言わざるを得ない。これは本作がどれだけ魅力的だったとしても相対的にやや高めの価格設定だと感じる。買う時には注意願いたい。
頻繁にセールで90%オフをやっているようだし、無料配布やバンドルに入っていることもあるのでそういうタイミングで入手するのも手だろう。
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