ゲームのプレイキャラクターとはそれを操作するプレイヤーの身体の延長のようなものである。私たちプレイヤーは当然ながらゲームの世界に直接触れることはできない。その代わりを務めてくれるのが主人公、すなわちプレイヤーキャラなのだ。
初めて操作するキャラクターの動きはぎこちない。しかし、時間が経過するに従って、プレイキャラクターが本当に自分の身体の延長のように感じられ、一体感が得られるようになる。現実ではできないことを本当に体験しているかのように感じる。ゲームをプレイしたことのある人なら誰しも経験があるだろう。
Ruinerはサイバーパンクをテーマにした俯瞰視点のアクションゲームだ。そして、上記のような身体の延長を強く感じさせるゲームである。サイバーパンクの世界では身体を改造し、普通では不可能なことを可能にするのはよく見られる表現だがそれをアクションゲームを通じて体験させてくれる。
本作の主人公は兄をさらわれた弟になる。手助けしてくれる女ハッカーと協力しながらパンクなやつらをなぶり殺す。文字通りの分かりやすい物語だ。登場人物はドイツもコイツも一癖ある人間ばかりで美しい2DCGとユーモアに富んだダイアローグ、光過敏てんかん発作を恐れない奇抜な演出で物語は彩られる。
どのキャラクターのCGもかっこよく、かわいらしく、美しい。漫画やアニメ文化が豊かな日本人の目から見ても魅力的なキャラクターデザインで「海外だから」という前置きをしなくても十分通用するものに仕上がっている。
それぞれのキャラクターの口調はしっかりと差別化されており、女ハッカーに至っては顔文字を乱用して茶目っ気を感じさせ、本当に存在するような実在感を与えている。洋ゲーのキャラクターはあまり印象に残らず、そのせいで会話も退屈なものが多いのだが本作では印象深い魅力的なキャラクターを多数用意することで見事なストーリーテリングを展開し、ついつい先が見たくなる動機に繋がっている。
予算の都合だと思われるが3Dのカットシーンは少なく、ボイスもほとんど入っておらず、ビジュアルノベル風の画面構成で会話を成立させているが洗練されたカットインやUIによって逆に新鮮に感じさせる。これが一般的な3Dゲームのように全編3Dカットシーンでフルボイスだったらこの独特の印象を与えることはできなかったのではないか。ビジュアルノベルの良点を本作で実感するとは思いもしなかった。
ゲームプレイとしては俯瞰視点でキャラクターを操作するアクションゲームになる。体力とエネルギー(魔力のようなもの)はゲージ制。最後のワンゲージは自動回復するので粘ろうと思えばかなり粘れる。チェックポイントは細かく区切られており、ボス戦は死にやすいのだが(死にゲーというほど難しくはない)チェックポイントのお陰でリトライをサクサクと行え、余計なストレスを与えない作りになっている。
本作の特徴的な操作として連続ダッシュの存在がある。短い距離なら一瞬で移動できるのだが瞬間的に敵の背後に回って鉄パイプをお見舞いしたり、ダッシュ中に出合い頭に殴ったり、銃弾をダッシュで回避したりとダッシュが戦闘の要といっていい。敵も同様にダッシュを行うことがある為、戦闘は高速展開となる。
一時的に時間を遅くする機能はあるのだがそれでも戦況は一瞬で変化していき、めまぐるしさと忙しさで考える暇もなく、頭はトリップ状態。厚みのあるシンセサイザーとノリの良いビートによるBGMも合わさって、自分がゲーム世界で鉄パイプ無双をやっているような没入感を与えてくれる。
武器は近接武器と銃を一つずつ携帯し、銃を何種類も持ち歩くことはできない。ただし、銃の弾が無くなればルイナー銃という威力は弱めなものの弾薬無限の銃に切り替わるので遠距離攻撃ができなくなるわけではない。といっても銃はステージに大量に配置されているので好きなタイプの銃をとっかえひっかえして使えるようになっている。
敵を倒すと経験値が手に入り、レベルが上がるとスキルポイントを割り振れる。スキルは体力や攻撃能力を上げるパッシブスキル系、バリアやスローモーション、地雷や敵洗脳などのアクティブスキルなど幅広い。どのスキルも有用なものなので個人個人でかなり異なった攻め方になるのではないだろうか。
スキルポイントの割り振りは自由に行える。この敵は近接が痛いからこうしようとか、遠距離が痛いからこうしよう、という風に場面場面に応じて最適なビルドで攻められるようになっており、そのバリエーションの多さによって飽きさせない。
高速戦闘とテンポの良いゲーム展開、魅力的なキャラクターによる掛け合いが素晴らしい
個人的に俯瞰視点のアクションゲームは好みではなく、サイバーパンクを題材にしたゲームも多すぎてノリ気ではなかったのだがプレイを始めると止め時が見つからず、一気にクリアしてしまった。幅広いビルドで自分の好きなように敵をぶっつぶせる爽快感とリトライがしやすい作りで戦闘にストレスが無く、素直に楽しい。
美しい2DCGのイメージとユニークなダイアローグが毎回楽しみで先へ進みたくなる魅力に溢れており、ゲームプレイ、ビジュアル、サウンドのすべてが高いレベルでまとまった良作。クリアまで5時間。