Cold WarやPainkiller:Overdoseなど、悪い意味でクセのあるゲームを開発してきたMindware Studiosの最新作。今作はPainkiller:OverdoseのようなオールドスクールなFPSだ。
主人公は臨床心理士のアリス・ドレイク。彼女は幼い頃に悪夢にうなされ続けた結果、夢の中をコントロールできる能力を獲得した。アリスはその力を使って、恐怖症やトラウマを抱えている患者の心理に侵入し、その原因を取り除くのを生業としている。設定は映画のザ・セルに近いかもしれない。ゲームだとアリスインナイトメア(オマージュか)やPsychotoxicが近いだろうか。精神疾患を超能力で力ずくでぶっ壊すというのはなんとも豪快な話だ。
ステージロード中に患者のカルテが表示される。カルテには患者の症状が記されており、それがステージ内容に反映されている。たとえば、アラクノフォビア(蜘蛛恐怖症)の患者の場合、舞台は蜘蛛の巣のような作りになっていて、蜘蛛の敵が登場するわけだ。それぞれの患者の症状とステージを照らし合わせて、世界観を楽しむのも一興かもしれない。
Painkiller:Overdoseは煉獄という設定を活かして、なんでもアリなステージ構成になっていたが、それぞれのステージには何の説明もなかった。今作は精神病患者のトラウマをステージの背景としており、説得力が高い。
ゲームスタイルはPainkillerライクなクラシックFPS。「避けて撃つ」が基本的な戦法となる。
アリスの初期武器は超能力。プライマリがパイロキネシスで、セカンダリが念力だ。パイロキネシスは効果範囲が狭く、雑魚殲滅専用。念力はダメージと共に一時的に敵を硬直させる効果もあるが一度に一体しか使用できないため、効率が悪い。また、これらの超能力を使うには敵が落とすエネルギーを補給するか、エネルギーが自動回復するまで待たなければならない。この初期武器以外の銃は弾が無限で撃ち放題である。
それぞれの武器にはプライマリとセカンダリが用意されている。ガトリングガンにはロケラン、ショットガンには冷凍弾、ライトニングガンにはエネルギー弾等、二つの機能を使い分けることが重要だ。
ただし、Painkillerのようにプライマリとセカンダリを同時発射することはできない。それぞれの攻撃には「タメ」があり、それが終わらないと次の攻撃には移れないのだ。たとえば、ガトリングガンの場合なら、ガトリングガンを撃っている最中はロケットを発射できないし、ロケット発射後はリロードが終わらないとガトリングガンを撃てない。
武器は一度に二つまでしか所持できない。特定の場所で銃を入れ替えて使っていくことになる。そのため取捨選択を誤ると辛い展開になるだろう。弾が無限なのと銃が多すぎると操作がごちゃごちゃするのを嫌って、こういう仕様にしたのかもしれないが、私はこの仕様には賛成できない。先の展開が分からないのに武器を選ぶもクソもないし、数ある武器を状況に応じて使い分けていく方がこういうタイプのゲームには合っていると思う。いまのところガトリングガンが万能でライトニングガンはいらない子という印象。
敵にはヘッドショットの判定があり、ヘッドショットなら一撃で倒せることも多い。はじめガトリングガンの威力が弱すぎると感じていたが、ヘッドショットの存在を知ってからは一番活用するようになった。
Qキーを押すとゴーストが前方に走り出し、もう一度Qキーを押すとゴーストの位置までテレポートできる。この能力は逃走する時や敵に接近する場合などに有効だ。
一定量の敵を倒すとバーサクモードに移行する。これはPainkillerでいうところのデーモンモード(Doomのバーサクモードの方がいいか)に相当。
バーサク状態時は画面が灰色になり、敵が赤いハイライト表示になり、主人公の攻撃力が上昇する。スピードも上昇していて移動に爽快感がある。
マップは狭い場所が多い上に邪魔なオブジェクトも多い。そのせいか、敵の数はPainkillerに比べると抑えられている。敵の攻撃は目視で避けられるものがほとんどだが、マップがあまり広くないので逃げ場がなく、攻撃を受けてしまうこともしばしば。敵が回復アイテムをよく落とすのはそういう意味(くらうこと前提)なのかもしれない。
マップはリニアな作りでスポーンする敵を倒すと扉が開いてく。敵の出現する量が異様に多く、だらだらとした作業プレイになりがちでテンポの悪い場所が多い。Painkiller:Overdoseもそうだったが全体的に間延びしている。私はこういうタイプのゲームが好きなので苦にならないが、短気な人は「いつまで続くんだよ。エンドレスエイトか!エンドレスエイトなのか!」と感じるかもしれない。むしろ、この間延び感は悪夢を象徴とした意図的なものなのかもしれない。
敵が赤い霧のような表示の時は攻撃が効かない。そういう場所には裏の世界に入るためのポータルが用意されているので、ここから裏へ入ると敵に攻撃が効くようになる。ただし、裏の世界に居る場合は、表の世界の敵には攻撃が効かないようになる。
裏の世界に居る時は超能力エネルギーを消費し、エネルギーがなくなるとダメージを受けてしまう。きちんとエネルギーを回収するか、表の世界へ出入りする必要がある。
敵のデザインは悪趣味なものが多い。 Cold WarやPainkiller:Overdoseなど、前々からMindware Studiosのデザインセンスはヘンテコで悪趣味だと感じていたが、今作ではここに極まれりという感じである。だが、今回はそれが良い方向に向いている。この悪趣味極まりないデザインは悪夢という題材にピッタリだ。彼らは普通なら汚点であるものを個性へと昇華している。初めからこの路線でいけば問題なかった。
【雑感】
デザインが悪趣味なのは悪夢のせい。
敵の出現量が多く、間延びしているように感じられるしつこさは悪夢のせい。
たいしたグラフィックじゃないのに、High設定にするとクソ重いのは悪夢のせい。
なんでも悪夢のせいに出来てしまう設定の強みに飴をやろう。それぞれのステージの世界観は個性的で面白い。この悪趣味な世界観を楽しめるか否かで本作の評価は180度変わってくるだろう。武器バランスに偏りがあり、戦闘はPainkillerと比べると質が落ちる。
コメント
とてもわかりやすいレビューありがとうございます。
他にも銃声や銃撃感?(弾が当たると仰け反ったり血飛沫が飛んだり)は
いかがなものでしょうか?
もしよろしければ教えていただけると助かります。
銃声は金属質ですね。高音が強調されている感じ。個人的に、安っぽい印象は受けませんでした。
当たり判定は微妙ですね。実弾系は弾の軌跡がないので当たっているのか分かり辛いです。
血飛沫はちゃんとあります。近距離だと画面が血だらけになります。
弾を命中させると仰け反りもします。
ゴアは派手で爽快です。ロケランを当てると体がバラバラになりますし、冷凍状態の敵もこなごなになります。
視覚的な爽快感はしっかりしている方だと思いました。