Far Cry 3 – 優れた三半規管(1)

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美しい広大な孤島、それを最大限に活用したゲリラ戦、最新技術とゲームデザインを見事に融合し、Painkillerと共に2004年の話題をかっさらったFar Cry。普段は一回ゲームクリアしたら十分な私もFar Cryだけは5回以上リプレイし、何度やっても飽きさせない懐の深さがFar Cryにはあった。その後、紆余曲折を経てFar Cryの看板はUbiが管理し、続編が作られることになった。舞台はFar Cryのイメージとは程遠い砂漠と荒野しかないアフリカ、変なところは無駄に凝っているわりにゲーム的な制約が歪で面倒くささばかりが目立ち、Far Cryらしいかと言えば「う~ん」と言わざるを得ず、かといって個性的かと言われれれば「STALKERやBoiling Pointに比べて・・・」という中途半端な内容で惜しい出来だった。その時の印象はプレイ日記感想に書いているのでそちらを参照頂きたい。

今回もUbiの開発だし、どうせ残念な出来なんだろう。Crytekも迷走してるし、Cryシリーズは完全に死んだのだ・・・と思われたがFar Cry 3は意外や意外によく出来ている。Far Cry 3の出来の良さを見るとFar Cry 2はわざとあんな苛立たせる作りをしていたんじゃないかと疑いたくなるほどだ。Far Cry 2の反省点を活かし、初代への敬意も感じられ、似たようなゲームが乱立するオープンワールドジャンルの中で完成度の高い作りとなっている。

オープンワールドというとどうしても同じ事の反復が続き、10時間もすればダレてしまいがち。Far Cry 2は武器が揃わない、初めの10時間あたりは苦痛だったし、ボリュームの水増し感も酷かった。ミッションの依頼先がマップの最北端なら目的地は最南端という感じで50倍に薄めたカルピスを何十回も飲まされているような気分を味わった。プレイしてもらえれば分かるがこれは誇張じゃない。Far Cry 2をプレイした人は頷いてくれるだろう。

今回もやはり同じことの反復ではあるがそれが面白くないかと言われれば決してそうではなく、むしろ面白い。20時間くらいは一気にやってしまうほどは面白い。カルピスに例えるなら今回は自由にカルピスを飲んでいいし、カルピスを飲んだらアメちゃんももらえる。アメちゃんが欲しいから色んな調味料を混ぜてカルピスを飲む、カルピスを飲んだ分だけアメちゃんももらえて嬉しい。まさに幸せのスパイラルである。

・オリジナルへのリスペクト

今作の舞台は南国の孤島。FPSの舞台に似つかわしくない、バカンス気分を味わえる風景こそFar Cryの醍醐味。ドンパチも目の保養も一緒にしちゃえばいいじゃない!ということだ。ヴァレリーたんはいないがヴァレリーたんみたいな服装のガールフレンドはいる。ゴムボートにジェットスキー、月の光が水面に反射する夜の風景、旧日本軍の船への潜入、カメラ(双眼鏡)によるマーク機能、ヘリとの戦い、ハングライダー、丸腰での脱出、ガールフレンドが操作する車に乗りながらの戦闘、これらすべてはFar Cryにあった要素だ。Far Cry感がものすごく高い。

Far Cry 2は砂漠と荒野しかなかったのでステルスはスナイパーライフルによって行うのが定石だったが、今回はFar Cryと同じように草むらに隠れられるし、投石で敵の誘導も可能だ。AIの認識はオリジナルよりも鈍感で緩いバランス、一度発見されたとしても上手くまいて別の場所に身を隠せば再びステルス状態が維持でき、ストレスをかけない方向で調整されている。

AIはFar Cry 2のようなウォールハッキングをすることもなくなったし、鈍感気味ではあるもののゲリラ戦を楽しませるには十分な知能を持っている。一本道ゲームのAIと遜色はなく、アサルトとステルスプレイを上手く両立しており、自由度が高い高いと言いつつもテキトーにドンパチするしかない底の浅いオープンワールドゲームの戦闘とは比べ物にならないほど面白い。ゲームの核となる戦闘がきちんとしているから反復的なミッションもダレずに遊べてしまう。

Far Cry 2の時は人畜無害だった動物たちも今回は野性味を増し、襲い掛かってくる。敵がコモドドラゴンやクマーに全滅させられていることも日常茶飯事で争っている姿を見るのが楽しいし、動物の入った檻を狙撃して破壊し、意図的に人間と争い合わせるようなところも見られる。この場合はプレイヤーが見つからずにいればステルス状態は維持されたままだ。

・快適性が大幅に向上

サブクエストというか類型的なアクティビティが大量に用意されているがファストトラベル機能によって移動のストレスは軽減された。敵の拠点を制圧すれば味方のものになり、そこへもファストトラベルが可能になる。前作では検問を制圧する意味がなく、ただの弾の浪費でしかなかったが今回は味方の勢力が拡大し、敵勢力が弱まるという合理的な利点が用意されている。

Far Cry 2は武器の携帯数が少なかったが、今回は自由に最大4つの武器を持ち運ぶことが可能だ。拳銃、SMG、AR、SR、火炎放射器、フレアピストル、弓となんでもござれで自由に狩りを楽しめる。

・苦労に見合った報酬

Far Cry 2は敵を倒しても弾も大して手に入らず、敵を倒す行為が自己満足でしかなかった。Far Cry 1もその傾向はあったが、障害を地形を利用して回避するというゲームデザインが前面に押し出されていたし、Far Cry 2のような理不尽に無限リスポーンをすることもなかったから問題はなかった。今作は敵を倒せば経験値を獲得し、新たなスキルを習得して強くなれ、敵や動物の死体からはアイテムを入手できる。人間や動物を狩ることに対して十分な報酬が用意されていてより楽しませる。

また、経験値の量が過剰である為に些細な損得は許せてしまう。というのも拠点の制圧は普通に行うと500XPしかもらえないが完全ステルス状態なら1500XPもらえる。実に三倍近い差があるわけで効率厨の私としては普通なら見逃せない。経験値が限られている場合はPCのパスワードを知っていたとしてもハッキングせざるを得ないし、アサルトでやった方が楽な場面でもステルスをせざるを得ないが、本作には経験値の取得方法が大量に用意されている。敵の殺害、ミッション、サブミッション(アクティビティ)、レリック・日本兵の手紙集めなどなど、恐らくすべてのスキルを覚える以上の経験値量が用意されていると思われ(敵はリスポーンするのだから無限であるが)、効率厨としても後ろ髪を引かれずに気持ち良く遊べるのだ。むしろ効率厨なら一回の戦闘に時間をかけるよりも数をこなす方が効率的と考えるかもしれない。良い意味で効率厨の頭を悩ませる作りでプレイスタイルを縛られずに遊べるのがとても良い。

とはいえ、メインミッションでは一部だけプレイスタイルを縛られるところがある。このへんは一辺倒な遊び方にならせないようにわざと強制しているのかもしれないし、オリジナルへのリスペクトを表すためなのかもしれない。一方、敵を倒してスコアアタックするミニゲームもあるのだがこれは点数を稼ぐためにどう倒していくかを考えさせられ、本編とは違った戦闘を楽しめる。

・いずれにせよ買い

Far Cry好きでFar Cry 2にガッカリさせられ、犯された・・・いや陵辱されたような気分を味わった人こそ遊ぶべきである。営業まわりは相変わらずクソだが、今回ばかりはUbiちゃんの開発は頑張った。オープンワールドゲームとしても完成度が高く、他も見ならうべきであろう。最後まで一気にクリアできそうだ。

コメント

  1. よし買う姉さんのれびゅーで買う
    これスチームでも日本語ですか?

  2. 基本的に英語版です。
    Steamの場合、起動設定に -language japanese を付けるとUIや説明だけ日本語化されます。
    ただし、日本語化すると会話字幕が表示されなくなります。
    私はスキルやハンドブックを読む時だけ日本語化してましたね。

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