Deus Ex: Human Revolution 感想

・能面のようなキャラクターたち

サイバーパンクを題材にした近未来FPS/RPG。Deus Ex、Deus Ex:Invisible Warの続編になるが、ストーリーは一作目のDeus Exの前日譚に相当し、オーグメンテーション(義体技術)が話の中核となる。

今回の主人公はアダム・ジェンセン。義体技術を研究しているサリフインダストリーのセキュリティを担当していたが、ある日武装集団の襲撃に遭い、半殺しにされる。恋人のメーガンの助けによって死は免れたが肉体が半壊した為、義体化で命を取り留める。ジェンセンはサリフインダストリーの依頼を受けながら、テロの鎮圧や揉み消された事実を探っていく内に世界の陰謀に巻き込まれていくというストーリー。

大筋の物語は一本道ではあるが、選択によって多少の変化は用意されている。重要人物と交渉するシーンが何度かあり、どれを選ぶかでその人物の未来が変わる。交渉シーンは緊張感があり、選択によって反応が分かりやすく返ってくるのが面白い。

しかしながら、登場人物の表情が全体的に乏しい。眉間や目はきちんとアニメーションしているのだが、頬が全く動かず、顔の動きが固く見えてしまう。交渉シーンでは人物がアップで表示されるのだが、それが余計に表情の乏しさを強めてしまっている。また、プリレンダのムービーシーンでは頬も含めて表情が豊かな為、リアルタイムレンダでの乏しさが浮き彫りになっている。交渉シーン自体はよく出来ているのだが、これのせいでやや残念な感じになっているのは否定できない。例えば、義体技術がまだまだ不十分で顔面の研究が進んでおらず、サイボーグは表情に乏しいというのなら理解できるし、物語にも沿っているのだが、生身の人間も能面のような表情の為、そのような誤魔化しも効かない。

それに暗殺時のアニメーションも真顔で行われる為、違和感が強い。首絞められているなら、焦って苦しそうにするとか、驚いた表情をするとか、いくらでも出来るはずだ。しかし、本作はまったく努力が見られず、首締られようと殴られようと”真顔”か”目をつむる”くらいである(苦しそうなアニメーションもあることにはあるが真顔パターンが多いために真顔が目立つ)。現実的にそういう状態の場合、真顔が正しかったとしても、映像表現でそれはあり得ない。主役に斬られたら、切られ役は大仰に苦悶の表情を浮かべながらバッタリ倒れる、それは当然のことだ。

・多様性のあるプレイスタイル

Deus Exの特徴である”自由度”は今回も健在といっていい。アサルト/ステルスどちらでも攻めることが可能で、マップ内のルートも一本道ではない。銃撃で真っ向から戦うか、一人ずつ暗殺していくか、天井やダクトをを通ってスルーするか、どれを選ぶかはプレイヤー次第。エリアの規模はIWと同じくらいだが、ロード地獄のIWとは異なり、こちらは一つのエリア内ではロードが発生せず、スムーズなプレイが可能となっている。

ただ、スケールが大きく立体的な作りだったDeus Exに比べると、本作はこじんまりとした印象は否定できない。クエストエリアと街エリアは地続きで、ストーリー的に戻れない状態を除いていつでも行き来できる。クエスト途中で弾丸が無くなったので武器屋で補充なんてこともできる。

一番初めのミッションでは会話の選択肢によって装備が変わってくる。アサルトプレイの場合はアサルトライフル、ステルスで遠距離戦の場合はトランキライザーガン、ステルスで近接戦の場合はスタンガンという風に自分のプレイスタイルに合わせた装備品が支給される。それ以降も選択肢によって条件が変わったり、サブクエストを引き受けるか否かも選択可能。

過去作のバイオモッド要素はすべてオーグメンテーションに吸収された。オーグメンテーションは21種類用意されており、エイム強化・防御強化・落下ダメ無効化・光学迷彩・インベントリスロット増加・ハッキング強化・レーダー強化・ジャンプ力・スピード強化・雑音低減・腕力強化・エネルギー強化などがある。

アクティブ系のものはエネルギーを必要とするが、エネルギーやヘルスは自動回復の為、回復には困らない。回復アイテムはお馴染みのチョコバーやジュースなどがあるが、速攻で回復したい時に必要になるくらいで、過去作よりも必要性は大幅に下がっている。

エネルギーは暗殺時(なぜ首を締めるだけなのに必要なのか。サイボーグの癖に生身の人間よりもひ弱じゃないか)に一スロット必要になる為、序盤は暗殺の連発ができないようになっている。ただし、暗殺はボタン一つで確実に殺せる為、これぐらいじゃないとバランスが吊り合わないという判断だったのかもしれない。

大きくて重いオブジェクトを運べるようになる腕力強化は過去作に比べると使い勝手が良くなっている。今までのシリーズでは腕力強化はコストに見合わず、利用価値は低かったが、今回ようやく本来意図した使い方ができるようになったとみていいだろう。足場を作って壁を乗り越えたり、敵にレーザープリンターをぶつけて転倒させたり、大きな音を立てて引き寄せたり、入り口に自動販売機を置いて出入りできないようにしたり、色々と使い道があり楽しい。すべてのオブジェクトを動かせるわけではないが、触れるものやアイテムは黄色い輪郭線が表示されて知らせてくれるのは手間が省けて助かる。

倒した敵は引きずることができて、他に見つからないように隠せる。死体からアイテムをルートも可能で、使っていた銃は必ず地面に落とすようになっている。同じ銃は一つしか持てなくて、重複する場合は弾丸のみ手に入る仕様。インベントリはお馴染みのスロット方式。初めは半分のスロットしか使えないが、オーグメンテーションを強化することでフルスロットになる。武器はアタッチメントを装着することにより強化が可能。好きな武器を強化していけばいいだろう。武器の取り扱いは初めから普通に使えるレベルで、Deus Exのようにスキル値で命中率は変わったりはしないので、好きな時に好きな銃で戦えるようになっている。Deus ExのようなRPG的制限が好きな人には不評かもしれないが、シューター好きな人には今作の方が好まれるだろう。

敵のAIはステルスプレイもできるように鈍感なバランスで、背後から近づけば100%見つからず、視界の範囲も狭い。警戒状態もすぐに解けるのでステルスを維持しやすい。また、右クリックでカバーができることで壁から壁への移動が容易になり、客観視点によって周りの状況が探りやすくなったのも難易度低下に繋がっている。一発のダメージ量が大きく、主人公は連続して攻撃をくらうとすぐ死ぬようになっているが、防御強化を施してカバーを駆使して自動回復を待てばよっぽどのことが無い限り死ぬことはない。銃弾はたんまり手に入るし、ヘッドショットなら一撃で敵を倒せるので過去作よりも難易度はかなり低く、このあたりは不評が多いかもしれない。

・経験値に制限されるプレイスタイル

プレイスタイルやルートの自由度の高さは前述した通りだが、すべての行動に経験値が絡んでくる為、経験値を獲得したいプレイヤーは自由に振る舞うことができない。

1.パソコンや扉のハッキングで50XP~400XP程度の経験値を獲得
2.敵を銃殺すると10XP~20XP。気絶や暗殺をすると50XP獲得
3.隠し通路やダクトを通ると探索ボーナスとして100~300XP獲得
4.アラーム鳴らされずにエリアをクリアすれば500XP獲得

1.パソコンにログインする場合はたとえパスワードを知っていたとしてもパスワードでログインすると経験値が得られない為、なんでもかんでもハッキングしなければならない。アラーム装置や扉も何がなんでも解除しなければ大損になる。

2.敵を殺さなければ経験値がもらえないので、スルーできる状況だったとしてもすべて殲滅させなければならないし、銃殺すると経験値が低い為、ステルスで気絶か暗殺を選ばざるを得ない。

3.隠し通路やダクトを通ると経験値がもらえるので、時には後戻りしてすべてのルートを探索せざるを得ない。

4.敵に発見されずにクリアすると高経験値がもらえるので、ステルスプレイをせざるを得ない。

本作では以上のように行動に報酬を与えるようになっている。そのため早くレベルアップしたいプレイヤーは高経験値を得られる選択を取らざるを得ない。テーマかつ醍醐味の一つであるオーグメンテーションをいち早く覚えるにはステルスとハッキングを心がけるしかないわけだ。メインクエストで得られる経験値が序盤1000XP~終盤3000Xp程度であり、ハッキングや敵を倒して得られる経験値は決して無視できる量ではない。経験値なんてどうでもいいというプレイヤー以外は経験値主体の行動をしなければならず、主人公は銃撃戦をした方が明らかに手っ取り早く進めるのに、それでは経験値が得られないからステルスをするという、手段が目的化した状況に陥っている。何の為のステルスプレイなのかがもはや分からない。

初代の主人公は始めは銃撃スキルが低く、命中率が悪かったので近接プレイや敵のスルーが重要だった。銃弾の数も限られており、ヘルスは自動で回復しない為、回復アイテムを温存するためにステルスプレイが有効だったわけで、自然とステルスプレイをさせるようになっていた。経験値はクエストをクリアすることでしか得られないから、どんな行動をとっても別に良かったのだ。どんどん先へと進んでもアイテムの取りこぼしをするくらいで、経験値には差は出ないようになっていなかったわけだが、本作では経験値取得の仕様が異なった為、ステルスせざるを得ないという風になっている。

また、過去作で登場したマルチツールやロックピッキングはなくなっており、すべてがハッキングに集約されているが、ハッキングさえ鍛えておけばすべてのルートを探索可能と言ってもいいくらいで、選択の重要性が低くなっている。たとえば、初代ならロックピックやマルチツールの数が限られている為、大きな金庫を一つ開けるか、それとも小さな金庫を三つ開けるかで大いに悩んだものだ。先に使い込んだせいで後のものが開けられなくなったりしたのも良い想い出。そのせいで後ろ髪を引かれる部分はあったが、それによって選択の重みを実感できたのも確かだった。本作の場合は出来ることは初めからたくさんあるが経験値がもらえなくなるのでステルスしながら高経験値を得られる方法をとっていくという風に、逆に制約を感じさせる作りになっている。

・今風に味付けされたDeus Ex。経験値を無視できればより楽しめるが・・・

完全なステルスプレイが簡単に出来るようにしてしまっているせいか、初代のように敵が本気で殺しにかかってくる場面が全くなく、シビアさや選択の重要性は原作とは程遠い。プレイスタイルの多様性も他のFPSに比べれば豊富なものの、Deus Exの続編としては物足りなく、手軽な部分で小奇麗に収まりすぎている。分量は20時間超と長く、プレイスタイルに自由があるので飽きにくい作りになっており、初代を超えるような完成度や新規性はないが、今風のバランスに最適化されたDeus Exと考えれば悪くはない出来であり、ステルスアクションファンならきっと楽しめる一作である。

・プレイ途中の日記 2011/8/25~28

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