風変わりな設定のゲームを開発しているElls&Pillsの最新作(2025年8月1日発売)。主人公はオフィスチェアに縛り付けられた状態で目覚め、ビルから脱出する方法を探さなければならない。
主人公には制限時間10分の爆弾がくくりつけられている。短い時間の中で9階から1階まで降りなければならないが、道中には別の被害者や階段などの障害が立ちふさがる。障害の解決方法はそれぞれ用意されており、一度失敗したら次はこうしようと対処が可能なのでパズルゲームを解くような面白さもある。
WSキーで前進後退、ADキーで回転となっており、キー操作は単純。キー押しっぱなしは対応しておらず、トントンと押さなければならない。操作方法は単純だがキャスター付きのオフィスチェアなので独特の慣性が働き、滑るような動きとなり、制御が難しい。
このオフィスチェアのもどかしい動きが特徴の一つとなる。この慣性を制御できるようになってくると気持ちが良い。壺おじやQWOPに類する作業ゲー(苦行ゲー)であり、そういったタイプが好みなら合うだろう。アップデートでイージー・ノーマル・ハードの三段階が用意され、転倒の条件が緩和されている。
転倒したり、モノにハマると復帰はできず、Rキー長押しでリトライするしかない。途中の階から再開するなどの手段はなく、初めからやり直しになる。10分以内でクリアできる長さだが、何度もリトライすることになるだろう。

私はホラーゲームには怖さを感じないのだが、このゲームの登場人物の露悪的な表現には気味の悪さ、居心地の悪さを感じた。言葉が通じない狂気、常識が通じない相手の恐怖感が見事に描かれている。

アップデートによって、クリア後に「番号0809」モードが解禁される。こちらはショットガンを装備した普通の男性が主人公で、本編とは別側が体験できる。本編の縛り付けられたプレイとは異なり、開放感が得られるが特に目的などはないと思われる。こちらのモードでも最奥まで行くと何かがあるなどのオチが用意されていると作品としては締まったものになるのではないだろうか。

オフィスチェアに縛り付けられた窮屈なプレイ感覚は新鮮味がある。人間はなにかしらのルールや立場に縛られて生きている。国、地域、会社、家族などの共同体に帰属して生きていく為にはそこのルールを守る必要があり、みんなが守っているからこそ秩序が生まれ、一定の快適な暮らしが維持される。秩序を守らないものが現れるとその共同体は破壊され、無秩序に支配されてしまう。自分自身に制約を課し、日々の研鑽を積み重ねることが人間にとって大切なのだとElls Tales: Chairboundは言いたいのかもしれないし、そうではないのかもしれない。100%そういう意図はないと思う。

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