・魅力的なキャラと起伏に欠けた物語
不思議シリーズ第一作目。天涯孤独の少女ソフィーが喋る本のプラフタと出会い、プラフタの記憶を取り戻しながら一人前の錬金術士になる物語。
登場人物は基本的に善人揃い。いつものアトリエシリーズのようにほんわかした雰囲気で優しい物語が綴られていく。プラフタの記憶が話の主題ではあるが物語が大きく動き出すのは終盤で、面白くなってきたと思ったら一瞬でエンディングを迎える。クリアまで25時間。
今までのシリーズは時間制限付きの目的によって、プレイヤーを誘導していたが今回は時間制限がない。時間制限がないことで自分のペースで進めることができ、時間消費を計算せずに一つずつ物事を完了させていけるのは利点とも言える。だが、展開がゆったりとしすぎている感が否めない。プラフタが重要な記憶を取り戻すまでは目的らしい目的も見えず、先へ進めるための原動力に欠けている。
新シリーズの一作目ということもあり、時間制限を無しにすることで初心者にもとっつきやすい内容にはなっている。しかし、プラフタの記憶以外になにか成すべきことがあったり、興味を抱かせるような謎があればもっと深みが増したのではないかと思う。物語が進むに連れてプラフタの素性も明らかになっているがそこもあっさりとしすぎている。
・プラフタの記憶が道筋
プラフタのレシピは虫食い状態となっており、「○○すれば思い出すかも」というヒントだけ表示されている。そこから推測して素材を集めたり、オブジェクトを調べることでプラフタが記憶を思い出し、錬金術のレシピが増えていくのは面白いシステムだ。
今までは調べる必要の無かったオブジェクトや場所もこのシステムによって見て回る必要性が生まれている。ヒントが具体的すぎて作業的な側面も感じずにはいられないが漠然としすぎているのも考えものだし、今まで無かった取り組みとしては評価できる。
・昼夜で違った顔を見せるフィールド
移動は全体マップから各フィールドに入っていく方式。トトリやメルルのアトリエでお馴染みのシステムだ。
昼夜のサイクルが実装され、素材を拾ったり、マップを移動したり、敵と戦ったりする度に時間が進み、風景も変化していく。夜にしか出てこないモンスターや素材など、昼夜を活かした工夫も凝らされている。
アーランドシリーズのカメラは固定だったが、今回は右スティックで視点を自由に回転できる。固定カメラでは奥行きや手前が見づらいことがあったがそこが改善された。
フィールドの広さはアーランドシリーズから変わらず、見えない壁が多く、かなり狭い。せっかく昼夜が導入されたのだからもう少し自由にフィールドを歩けてもよかったかもしれない。
・ターン制でランダム要素が増した戦闘
戦闘はターン制に変更。1ターン毎に仲間と敵の攻撃が繰り返される。アーランドシリーズのような敵に出番を回さず、ずっと自分のターンという風な戦術は取れなくなった。
アシスト攻撃やアシスト防御は勝手に発動し、任意で発生させることはできない。勝手に攻撃が連携技になって、派手なラッシュが続いたりするのだが自分が介入する余地がないので置いてけぼり感が強い。アーランドシリーズよりも戦闘にランダム性が増し、しっかりとした戦術を組みづらくなった。
敵は強めのバランスに設定されている。装備の更新が進まないこともあり、何戦かすると瀕死、強力な敵に初見で殺されることもある。それに加えて敵が5匹くらいのグループで現れることも少なくない。序盤はソフィー以外の仲間にも攻撃アイテムを持たせて、しっかりとダメージを与えていかないと厳しいバランスだ。
中盤辺りから装備が充実し、戦闘の難度は下がってくる。今回はイージー・ノーマル・ハード相当の難易度設定が用意されているので自分で調整するのも手だ。難易度設定によって素材の質も変わってくる。
・歴代最高?パズルのような調合
調合はアーランドシリーズからガラッと変わった。今回は見た目も完全にパズルだ。錬金釜は正方形のパネル(4×4、5×5マスなど)になっており、そこに素材のブロックを配置していく。素材はテトリスのブロックのような形になっていて、重ならないように綺麗に並べるとボーナス点が入り、調合品の能力がより高まるというシステム。
素材毎に形が異なるのでどうやってうまく並べて、高い能力を得るか。試行錯誤が楽しい。今回は調合品を作りたくて調合するというより、パズルが面白いから調合するという本末転倒レベルで中毒性がある。アーランドシリーズの調合は計算ドリルを解くような感じが強かったが今回はテトリスやパネルでポンのような直感的なパズル的面白さがあり、ついついやってしまう。
・時間制限がなく、ゆっくりと楽しめるアトリエ
毎回、なにかしらの変更を加えて差別化を図っているシリーズだが今回はパズルのような調合システムと時間制限無しが大きな特徴だ。キャラクターのデザインも魅力的で3Dモデルもよくできているが物語には深みが足りていない。
今回の物語のテーマは目的と手段だ。ソフィーは他人の願いを叶える為に錬金術を活用し、その気持ちが自信の成長に繋がった。一方、錬金術士の中には錬金術を使うことが目的となり、他者を犠牲にするのを厭わなくなったものもいる。
我々も普段生活している中で目的と手段を混同し、道を見失うことが多々ある。生きていく為に仕方なくやっていたことがいつしか目的となり、他のモノを犠牲にしながら一つのことに固執し、孤立してしまうことも少なくない。大事なのは視野を広げることだ。
我々には可能性がある。たとえ一つのことに失敗したとしても他の方法で補えたり、創意工夫によってよりよい解決に導くことも可能なのだ。自分のことを信じ、他者を愛し、信じ合い、支え合うことで叶えられる願いもある、ということをソフィーのアトリエは言いたいのかもしれない。多分、そういう意図は100%ないと思う。