とりあえずCOOPのホストでクリア。クリア時間は4.3時間で最近のゲームの中でもかなり短め。ムービーやイベントシーンを除けば4時間を切るほどのボリュームか。先に結論を言っておくと、私はF.E.A.R.3なんて一ミクロンも期待していなかったし、開発がMonolithからDay 1 Studiosへと変わり、きっと散々な内容にしかならないだろうと思っていたがそれは覆された。F.E.A.R.3は過去作に敬意を払いつつ、これまで断片的だった物語にもきちんと整合性を持たせた総決算的な内容に仕上がっており、完全な劣化二番煎じで何の捻りもなく終わったF.E.A.R.2に比べれば健闘していると思う。
キャンペーンCOOPは二人プレイに対応しており、ホストがポイントマン、クライアントがフェッテルを操作する。ポイントマンはこれまでと同様、一般的な銃火器とスローモーを扱う。パンチではなくなったがナイフ攻撃(ホイールボタン)や飛び蹴り(ジャンプ+ホイールボタン)、スライディング(走りながらホイールボタン)も健在で、近接戦闘を楽しむ余地も残されているが、初代のような一撃必殺では無くなっている。初代は打撃やキックが敵に触れた途端に死亡で、いささか常識外れだったので、今作の方が自然といえば自然か。スライディングで敵を転ばした後に銃撃でフィニッシュというコンボが組み立てられたりするし、この辺は好み次第だろう。
フェッテルは超能力を駆使して戦うことになり、二人のプレイは差別化されている。フェッテルは敵の動きを静止させることができ(その間に衝撃波も撃てたりする)、そこをポイントマンが攻撃を叩きこむといった協力プレイが可能。仲間を生む忍者やヘヴィーアーマーなどの強力な敵にはフェッテルの縛り攻撃が非常に有効である。
また、敵に憑依して能力を引き継ぐこともでき、銃兵に乗り移ったら銃で攻撃、バールのようなものを持った暴徒ならバールのようなもので攻撃、自爆暴徒なら敵に突っ込んで自爆、果てにはヘヴィーアーマー兵にさえ乗り移れて、幅広いプレイスタイルを味わえるのが特徴となっている。乗り移っている際の体が死んだとしてもフェッテル自身は死んだことにはならず、あくまで体が破壊されただけということで済み、ポイントマンに比べて能力が優遇されていると言えよう(この優劣の差は物語上でも重要な要素となっている)。ただし、スローモーと同様に憑依にもパワーが必要な為、ひっきりなしに憑依することは不可能となっている。
ヘルスがなくなると瀕死状態になり、死ぬまでに数秒の猶予が与えられる。その間に相方が復活させられれば再起でき、死んだ場合はゲームオーバー。瀕死状態では足を引きずりながら動きまわることができ、安全な場所へ逃げこむことが可能で、その間もピストルで攻撃できるので瀕死状態でも手持ち無沙汰にならないのは良いところだ。
COOPはシングルでは一人(まだプレイしていないがそうだと思われる)で進むところを二人で攻略していく風になっている為、どうしてもオーバーパワーになり、難易度は低くならざるを得ない。カバーを一切利用しない無茶な戦い方をしていても強力な敵が出てくる場所以外で死ぬことはないので、FPS経験者ならノーマルよりも上でプレイした方がいいかもしれない。
マップのエリアは明らかに区切られており、一方通行感は否めず、初代のように多層的な空間で敵と駆け引きする場面はあまり見られないが(COOPでは難易度が下がるので余計にあっけなく終わる)、敵の激しい動きや遮蔽物から遮蔽物へと狡猾に動きまわる様は再現できており、なんだかんだいってこれはFEARなんだと実感させる(レベルデザイン的にCity Interactiveのテロリストテイクダウンシリーズぽくもあるのだが)。F.E.A.R.2ではこのシリーズによって重要な要素だったリーンが削除されてしまったが、今回は遮蔽物に張り付き、リーンのように覗き込む動作が可能となっている。コンソールではボタン少ないし、操作が複雑になるからリーンなんて無くしてしまえではなく、どうすればリーンを実現できるか、持ち味を殺さずにいられるかを考え、代案を用意した努力は評価したいところだ。
銃を撃つときちんと反動で銃身が跳ね上がり、銃撃感は過去作に負けず劣らずで撃っていて気持ちいい。血は水分が多くてケチャップのようだし、四肢切断のゴアもやや過剰ではあるが、敵は攻撃を受けると怯み、しっかりとしたヒット感を味わわせてくれる。
4時間という少ないボリュームながら内容的には同じことの繰り返しが多く、特にポイントマンはそうなりがちだが、COOPではフェッテルの多様なプレイスタイルと協力しながら戦うことになるので飽き飽きとはしなかった。それにFEARといえば反復的な内容だったりするので、良い意味に捉えればこれもリスペクトの一種ととれなくもない。
他にFEARの再現としては派手なエフェクトが挙げられる。グレネードのパーティクルは丸くて透明な衝撃波がボワンと広がっていく、まさに初代のそれであり、ファンは嬉しく感じるのではないだろうか。窓ガラスを代表として細かなオブジェクトを破壊できるところも良い。敵のパターン、銃のデザイン、展開もシリーズを踏襲したものになっており(プラスCondemned: Criminal Origins)、世界観に関しては冒険せずに無難なところで落し込み、原作レイプ的なところは少ないと言える。
個人的に嬉しかったのは二人がパワードスーツに乗ることができて(フェッテルは兵士に乗り移ってからじゃないと乗り込めない)、メックによる協力戦を楽しめたところだ。メックウォーリアやShogo好きの私としてはタマらないシーンだった。
また、パワードスーツに乗り込み、家の壁を破壊していく描写はF.E.A.R.: Extraction Pointの対メック戦(メックが病院の壁を破壊しながら主人公を追い詰めていく)を彷彿とさせ、圧迫感と緊張感に満ちたあのシーンが私はとても好きだったので立場は逆ではあるが再現してくれた心意気が嬉しかった。
なぜか完全日本語版で遊ぶことができたのでストーリーも堪能できた。ポイントマンとフェッテルの確執がメインではあるが、ベケット、ハーラン、アルマの主要なキャラについてはきちんとそれらしい理由をつけて完結させており、これまでのシリーズのようなもどかしさは少ない。説明不足だった1の補完も行っているのは見事だ。1と2の設定は引き継いでいるが拡張版は無かったものとして考えられているようで、ジンはヒロイン的な立場で復活している(顔が様変わりし、誰これ状態。日本語版の音声は滑舌が悪すぎ、棒演技で台詞が頭に入ってこないのだが・・・)。
ゲームプレイやストーリーはどちらかというと保守的で冒険はしていない。クリエイターたるもの冒険するもの、尻馬狙いの冒険していないものなんて・・・という批判はあるかもしれないし、そういう人には本作は向いていないと思うが、Monolith以外のメーカーにF.E.A.R.の冠を付けたゲームを作らせるという無茶なお題をDay 1 Studiosは、オリジナルを作ったメーカー自体が原作レイプを行うような世の中で上手く処理した方だと個人的には思う。冒険が許された時代と異なり、一度の失敗すら許されない中、実績を積み重ねる為に無難な仕事をするのは致し方ないことであり、これだけの結果を残せたのだからDay 1 Studiosの次の作品では面白いものが見れるんじゃないか、なんて期待もしている。
概ねは前述したように無難な作りと言えるが、少なくともCOOPは特徴的な内容に仕上がっていて、そのお陰で凡作には至っていない。ただし、あくまでこれはCOOP(ポイントマン)に対しての評価なので、シングルプレイの場合は意見が変わることはあり得る。COOPとしてはかなりアリなFPSだと感じました。