Bionic Commando – 見た目はモダン、中身はオールド(1)

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独特なワイヤーアクションでカルトな人気を獲得したヒットラーの復活の続編。横スクロールアクションからTPSへと生まれ変わり、三次元の移動が楽しめるようになった。

主人公は前作から引き続きスペンサーが担当、相棒のスーパージョーは指揮官として登場する。時間は前作から約10年後。帝国軍を倒し、役目を終えたバイオニック兵士たちは世間から冷たい目で見られ、政府によって投獄されてしまう。政府から逃げ延びたものはテロリストとして活動し、政府へと反旗を翻すようになった。テロ活動が大規模化し、政府軍の手に負えなくなった頃、死刑囚としてとらわれていたスペンサーに白羽の矢が止まる。スペンサーはテロ組織を壊滅させるため、再び戦場に身を投じることになった。

前作はナチスドイツ、今回は帰還兵と反戦問題をテーマにしている。ヒーローが悪いやつらをやっつけるヒロイックな物語から打って変わって、帰還兵が冷たい仕打ちを受ける重い内容が描かれており、スペンサーやスーパージョーの印象もずいぶん違う。まるで別物のようだ。他の戦争ゲームが触れたがらない題材を取り入れているのは興味深いが、あまり詳細に描かれていない。

伝統のワイヤーアクションは今回も健在。壁や天井を掴んで移動したり、敵やオブジェクトを掴んで投げ飛ばしたりできる。ワイヤーアクションのタイミングやエイムは甘く、バッチリ合わせなくても補助してくれるようになっており、前作に比べて難易度は低い。コツを掴んでくるとターザンのごとく物から物へと軽快に飛び移れるようになり、ワイヤーを駆使した移動が爽快に感じられるようになる。オブジェクトを掴める距離になると照準が変わるので、掴めるか掴めないかの表示が曖昧でいらいらするといったことはない。

しかし、ワイヤーの距離が短めで、掴めると思ったら掴めない距離だったということが結構ある。オブジェクトまでの距離表示はあった方がよかったかもしれない。

ほとんどのオブジェクトは掴むことが可能で縦横無尽に移動できるが、マップが小さく、立ち入り禁止区域(放射能汚染区域)が多いため、窮屈な印象を与える。見た目は開放的なデザインだからこそ、余計に窮屈な感じが強まっている。立ち入り禁止区域は青色の霧で表現されているものの、分かりづらいところもあり、飛び込んだ場所が立ち入り禁止区域だったりして一瞬で死んでしまい、ストレスが溜まる。

また、スペンサーは泳げないので海に落ちると数秒後に死ぬ。すぐにワイヤーで浮き上がれれば大丈夫だが、そういう時に限って周りに掴めるものがなかったりする。海に入ると身動きができなくなるため、周りにオブジェクトがなかったら死んだも同然だ。このゲームの死亡原因は敵に殺されるよりも、事故で死ぬ方が多い。前作も穴に落ちてよく死んでいたので、これはリスペクトと解釈すべきかもしれない。

武器はハンドガン、手榴弾、重火器の3つを所持できる。重火器はロケットランチャー、グレネードランチャー、ショットガン、スナイパーライフルだが、一度に一つしか持てない。想像していたより銃の威力が強めで、ワイヤーを使わなくても銃だけで立ち回れる。しかし、ワイヤーを使えば敵を蹴り飛ばしたり、宙返りしながら銃撃するといった曲芸的な戦いが展開できるので、積極的に活用していくべきだろう。

敵の種類は少なく、倒し方がパターン化しているため、だんだん単調に感じてくる。ゲームの流れもワイヤーで移動、敵と戦い、またワイヤーで移動の繰り返しでイベントなどの変化がほとんど用意されていないため、マンネリ化に拍車をかけている。横スクロールアクションの頃はそれで十分だったが、TPSになると途端に単調さが目立つ。個人的には乗り物イベントの類は嫌いなのだが、こういうアクションゲームには乗り物イベントのようなものが必要かもしれない。

グラフィックのクオリティは高く、隅々まで丁寧に作られている。さすが現代都市の描写に手馴れたGrin(開発メーカー。本作が遺作となり、すでに解散済)といったところ。澄み切った空の色が印象的で、ワイヤーアクションで空中を駆け回っていると心が晴れやかになる。

見た目は今風だが、中身は古典的。パターン化されたボス戦、リファインされたBGM、事故死の多いマップ、前作への敬意が端々から感じられる。しかし、それが仇となり、万人受けしなかった原因のように思う。前作のファンは横スクロールへの支持が根強く、本作の立ち位置は微妙と言わざるを得ない。前作よりも人を選ぶゲームだろう。廃墟都市をワイヤーアクションで飛び回る雰囲気を堪能したい人は挑戦してみてもいいかもしれない。雰囲気ゲーなところが少なからずある。

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