Ghostwire: Tokyo – 東京の街並みが主人公(感想)

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般若の男によって無人の街と化した東京。主人公の伊月 暁人は妹を誘拐される。ゴーストハンターのKKと協力しながら般若の男に立ち向かうという物語。

物語は暁人の目線でしか語られない。般若の男の死生観やこだわり、KKが主人公と会う前の出来事、KKの仲間たちとの過去など、ほとんど説明がない。登場人物の行動原理がぼんやりとしている。物語に厚みを持たせる為の動機説明が欠けており、薄味な内容に感じた。

例えばこれがドラマやアニメであれば他の登場人物のエピソードなどが入って、なぜこの人物はこういう行動に至ったのかが視聴者は理解できるだろう。このゲームでは敵や登場人物の説明が少ないので行動が理解しがたい。性格や背景がよく分からない人物が極端なことを言ったり、思わせぶりなことを言っても、こっちは「なに言ってるんだ感」が強い。

封鎖された東京、過去と向き合えずに逃避している主人公。後半では暁人や妹の過去が明かされ、現実と向き合い、東京を解放する為に戦う流れは良かった。終盤は早足すぎる感じはあるが……。KKや般若の男の過去がもう少し説明されていれば厚みを持たせられただろうと思う。

無料のビジュアルノベル「Ghostwire: Tokyo – Prelude」ではKK目線で物語が展開し、仲間とのこれまでの経緯が描かれているかと思いきや、特にそういう配慮もなく、本編を補完する役割を担っていない。

お金のかかる3Dゲームでそういったシーンを描けないのなら、ビジュアルノベルの方で補完するのがうってつけだと思うのだが、そういう意図で作ったノベルゲームではないようだ。なので本編の物語が物足りなく感じて、手がかりを得る為にPreludeをプレイしても意味があまりない。

一方、東京の街並みは変質的な作りこみと密度。東京にありそうな交差点、駅、団地、ビルなどが再現されている。

日本に実際にありそうな風景だけど無人、そしてお化けが闊歩している異様な世界観。見慣れた風景と超常現象が組み合わさり、郷愁を抱くと共に超現実的な感覚に襲われる。プレイしたての頃はゾクゾクとするものを感じた。

街を歩くとネオンが輝き、雨によって道が濡れ、そこかしこに自動販売機、ビルからはベース音が響き、薄暗い道でもコンビニだけは煌々と明るくて安心感を与え、コンビニ内では軽薄でトンチキな店内CMが流れる。日本人にとって当たり前な空間がゲーム中に圧倒的なディティールで再現されており、圧巻。

初めの方は行動制限が強く、自由に歩き回れる場所が少ない。行ける場所が限られているからこそ、想像が広がり、どんな物語が待っているんだろうという期待感があった。

サブミッションは似たようなことの繰り返しと内容でパッとせず、Ubisoftのオープンワールドゲームをプレイすると毎回感じるあの感覚(※やらされている感)が蘇る。

あの感覚が嫌いな人はサブミッションは無視しても構わない。小学校のサブミッション「恐るべき子ども」だけプレイすればいい。

戦闘は変化に乏しく、初めの一時間くらいで大体の要素は味わえてしまう。風・火・水の三種類の属性弾をだらだらと打つだけ。敵が硬く、ヒット音も弱いせいで効いているのかよく分からないまま攻撃を続ける。

あとはその繰り返しで発展性に乏しい。スキルポイントを使ってレベルアップする要素もあるのだが、それによって戦闘の展開が大きく変わることはなく、初めから使えて当たり前な要素が使えないようにされているようなバランス。

あまりシューターをプレイしない人の為にこういう戦闘にしたのかもしれないが、それにしては弾速が遅い。不規則な動きをする敵には当てづらく、FPSで重要な射撃の気持ち良さに欠ける。

弾数制限が厳しいのだが弓矢もあり、これは威力が高めでステルスキルが可能。狙って当てる射的の楽しさが弓矢にはあり、これを使ってもっぱらプレイしていた。

しかし、どこでも補給できる属性弾と違って矢の補給はしづらい。後半は属性弾のだらだらした戦闘をやるのが苦痛だった。

プレイ時間は9時間程度。メインミッションだけなら5~7時間くらいでクリア可能ではないだろうか。街の異常な作りこみが素晴らしく、ぼーっと散策するのが楽しかった。いわゆるオープンワールドゲームは街の密度が薄く、代り映えのない風景で探索する楽しみに欠けるのだが、このゲームは別格だった。

しかし、サブミッションの類をやると類型的な内容のせいで途端にやらされている感が強まり、この風景が有効活用されているように思えない。これだけ作りこんだのにもっとうまい利用の仕方は無かったのかしらと思うところもあり。小学校のサブミッションを見てしまうとこのロケーションでガチホラー路線も見てみたかったなと思う。

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