DOOMとid Softwareの歴史について説明した動画になります。
書き起こし
まずDoomとは、1993年にMS-DOS用に発売されたFPSです。MS-DOSはWindows OSの前のOSですね。FPSはファーストパーソンシューター、主観視点のシューティングゲームの略です。開発したのはid Software。idはDoom以前にもFPSを開発しています。
一番初めはHovertank 3D(1991)。主人公は戦車、迷路を探索して人間を助け、エイリアンを倒すというゲームデザインのFPSです。マップはかなりシンプルな作りですし、壁は単色、テクスチャや模様は付いていません。
その次がCatacomb 3-D(1991)。
主人公は魔法使いで地下墓地で悪い魔法使いやモンスターを倒すFPSです。主人公の移動はHovertank 3Dよりも早くなり、画面上に主人公の手が表示され、壁にもテクスチャが付くようになりました。
idの開発者、ジョン・カーマックは「アドベンチャーゲームでも雰囲気は出せる。だけどアクションゲームの方がより驚きや緊張感を与えられて、カタコンベ3-Dをプレイした人間は目の前にモンスターが現れると驚くんだ。これこそ自分たちが作るべきゲームだと思った」と語っています。
Hovertank 3DやCatacomb 3-D以前にも主観視点のゲームはありました。有名なUltimaのダンジョンシーン(1981)、Wizardry(1981)、Might and Magic(1986)、Dungeon Master(1987)など。これらは主観視点ではありますが一歩ずつ進んでいくRPGでFPSのような高速なものではなかったんです。
idの開発者たちはシステムはシンプルなアクションの早い駆け引きに魅力を感じたんですね。
そしてWolfenstein 3D(1992)が発売されます。
これはアメリカの軍人ブラスコビッチがナチスの城から脱出するFPSです。
武器はナイフや銃となり、画面の真ん中下に表示されています。敵は人間で現代的な設定で、FPSの基礎がここで出来ました。
まだこの時点ではマップは四角い部屋と通路だけで複雑なものではありません。
このゲームは評判が良く、ユーザーの中にはグラフィックやサウンドを差し替えたり、独自のツールを作ってマップを作ったりして、改造する人たちがでてきます。
ジョン・カーマックはそういった改造を見て、まるで昔の自分を見ているようだと感動し、 次のゲームではプログラムのソースコードやツールをファンに提供したいと思ったと語っています。
カーマックもUltimaのプログラムを解析して、胸をときめかせていた時期があったんですね。
そしてDoom(1993)が発売されます。
元は映画エイリアンのゲームを作りたかったんですが版権交渉でつまづいています。有名な映画の版権を小さいソフトハウスに任せることはできないということで20世紀フォックスが断っています。ここでエイリアンのゲームを作っていたらまた別の歴史になっていた可能性もありますね。
版権を取れなかった結果、エイリアンに代わるモンスターはないかと考えて、当時、テーブルトークRPGで遊んでいた設定を取り込みます
地獄の悪魔が世界を蹂躙する設定ですね。悪魔の群れをヒーローが倒すという単純明快な設定なら誰でも理解しやすいということで決まりました。
ゲームの内容はWolfenstein 3Dよりも複雑化され、マップには階層があり、縦の表現もできるようになりました。シークレットエリアも沢山用意され、マップを探索する楽しみが本作では強化されています。
敵のキャラクターもWolfenstein 3Dよりも個性的になり、火の玉を撃つインプや銃撃してくるゾンビコマンド、直進して襲ってくるピンキーデーモンなど攻撃方法が多彩で、プレイヤーは敵に応じて戦い方を変えていかなければなりません。
Doomは数百万本売れ、大ヒット作となります。オンラインプレイも導入され、ネットワークを通じて日夜戦うプレイヤーも現れ、Doom人気は過熱していきます。
1995年にはWindows95に移植され、マイクロソフトのパーティには当時最強と言われていたスレッシュというゲーマーが参加し、Doomの対戦トーナメントで勝利を押さえ、100万相当のパソコンを獲得しています。
そして、カーマックはWolfenstein 3Dの時に決めていた、改造しやすいゲームとしてDoomを設計し、開発用のツールなども配布しました。当時はDoomの改造データのことをWADと呼ばれ、その数年後はMODという総称で呼ばれるようになります。
Where’s All the Data?(データはどこだ?)
改造しやすさからDoomでは様々なMODが作られ、グラフィックやサウンドを少しだけ差し替えるものから、すべてのデータをガラッと差し替えて、まるで別のゲームのようなMODを作る人も現れました。すべて差し替えたものはトータルコンバージョンと呼ばれたりします。
当時は著作権が緩い時代でもありましたし、特に海外のPCゲームメーカーはこういった改造文化に寛容でした。うまく利用することでコミュニティの発展やゲームの寿命を延ばすのに成功しています。
DoomのMODを作っていた大学生のティムウィリッツをidは雇用し、この方は2019年までidで働いていて、ディレクターを努めていました。実際に働いてみないと人間性は分からないけど、能力はMODの出来で大体検討がつくと。MODはポートフォリオ代わりにもなってるんですね。
1999年、コロンバイン高校銃乱射事件が発生し、Doomを含む暴力表現のあるゲームは非難の的になります。乱射事件の犯人はDoomが好きでコロンバイン高校を模したマップを作り、遊んでいたことからゲームの影響で事件に及んだということに都合よくされたんですね。
実際は高校生活でのイジメが原因としてあるんですがニュースメディアはゲームとかコミックとかアニメとか、子供が好きなカルチャー、大人が気に入らないもののせいにするのはよくあることです。
日本でも宮崎勤の時にニュースメディアはサブカルチャーを原因とし、オタクの迫害がありました。アメリカでも似たようなことが起こっていたんですね。
ゲームやアニメ好きでなにが悪いんだと。大人がプリキュアやアイカツしたらイカンのかと言いたい。
1995年にDoom IIが発売され、人気は不動のものになりました。Doom IIはDoomを下地に武器や敵キャラクターを追加し、新しいエピソードで作った拡張版のような内容です。Wolfenstein 3DからDoomになった時のような革新性はありませんでしたがゲームとしての完成度はDoom2でより高まっています。
その後、Quakeなどの別シリーズを経て、Doom3が2004年に発売されています。グラフィックは大きく進歩し、2004年はFar Cry、Painkiller、Half Life2などがありましたがその中でもDoom3のグラフィックやアート・デザインは大変優れており、当時の最高峰のものでした。
敵のキャラクターはDoomから引き継いだものが多いですがゲームデザインは変化があり、暗闇を懐中電灯片手に進み、デーモンが現れたらショットガンに持ち替えて一撃をくらわすというスタイルになっています。ゲームスピードは過去作よりもスローペースになりました。
マップ内にはオーディオログやメールなどが配置され、そこから物語や設定を読み取って進んでいく側面もあります。この変化に「これでこそ新しいDoomだ」という意見もあれば、「なにも考えずに撃ちまくるのがDoomだ。これはDoomではない」という意見もあり、賛否両論がありました。
そして2016年にDOOMとしてリブートされます。内容は今風にリメイクしたDoomといった感じで、ゲームデザインはDoom2やBrutal Doomを意識したものとなり、グラフィックは最新ゲームに見劣りしない技術が盛り込まれています。
ただ、挑戦心は感じられず、時代を牽引するものではなくなったのも事実ですね。良くも悪くも安全パイな内容です。
時代が進むに連れて開発期間が長くなり、開発費が高騰、一度コケれば会社もコケるような綱渡り状態になり、昔のように挑戦がしづらい環境になったというのも要因としてはあるのかもしれません。
個人的にはこのDOOMはオンリー・ユーであって、ビューティフル・ドリーマーではないという印象を持っています。
うる星やつら オンリー・ユーは押井守が初めて監督を務めた映画で、元々は他の方が監督をしていたものが途中で頓挫し、TVアニメをディレクションしていた押井さんが引き継ぐことになった作品です。
短納期の中で押井さんはベストを尽くして、ファンが楽しめる内容にまとめた結果、ファンや原作の高橋留美子さんからは評判が良かったものの、映画評論家や伊丹十三からはアニメの延長で映画ではないと批判されます。
押井さんはその経験から自分の好きにやろう、自分の意思を作品に込めなければ映画にはならないと誓いました。次回作ではプロデューサーをうまく騙して好き勝手に作ります。ファンや高橋留美子さんからは「これはうる星ではない。押井さんの映画」と言われますが、他のアニメファンや映画好きから作家性が明確に現れていると絶賛されるんですね。
現在もビューティフル・ドリーマーは語り継がれているけれど、オンリー・ユーはそうではない。
2016年版のDOOMは自分はそういう風に感じたんですよ。
ファンムービーであって、映画ではない。語り継がれるようなものではないかなという印象でした。
次回作のDOOM Eternalもその延長のようになるのではないか。時代は変わった、一時代が終わったというのを強く感じる次第です。
みなさんにとってDoomとは、どういう存在でしょうか。
というわけで今回はDoomシリーズを紹介してみました。
コメント
大手さんで続編系の尖った作品はもう無理っぽいですね
ここ数年はsteamでインディーズメーカーの素晴らしい作品が
多く見られるので、そういったところ10社ぐらいにDOOMを
発注してそれぞれに作らせたら面白いと思うんですけどね
そういった点では任天堂はやはりすごい
名前で草。
Serious Samはインディーに関連作を作らせていますが本編に比べると……ですね。
続編なのにあまりにもそれまでのイメージと乖離したものを作るのはどうなんだという部分もありますがファイナルファンタジーはそのへんが良くも悪くも挑戦心はあると感じます。