ありえざる星(フィリップ・K・ディックのエレクトリック・ドリームズ)を見た

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アマゾンプライムで配信中のフィリップ・K・ディックのエレクトリック・ドリームズ 第八話のありえざる星を見た。

宇宙旅行会社に300歳を超える老婆イルマがやってくる。イルマは死ぬ前に祖母の生まれ故郷、地球に行ってみたいという。地球はすでに消滅しており、彼女の夢を叶えることはできない。しかし、提示された大金に目が眩んだ旅行会社は嘘をつき、地球に似た星へとイルマを連れていく

これは良作。原作は使い古された題材なのでオチは変えられている。ぼんやりとした抽象的な終わり方なので好き嫌いが分かれそうな物語だ。ダイアローグ(会話)が大変美しい。変わるものもあれば、変わらないものもある。

私たちは作られた世界、作られた物語に一喜一憂している。夢の国もそうだし、映画やドラマだって全部詐欺みたいなものだ。夢を見せるということは果たして嘘をつくことと同義なのか。原作には存在しなかったが非常にディックらしいテーマが盛り込まれており、感動的な話に仕上がっている。

ただ、なぜ主人公と老婆が同じビジョンを見るのか。なぜ写真の祖父や祖母と同じ姿なのかは明確に語られない為、そこがもやっとする人もいるかもしれない。しかし、ここが抽象的だからこそ、明確に説明されていないからこそ、この物語は幻想的で感動を誘うのも否定できない。分からないからこそ面白い。未知だからこそ惹かれるのだ。

私見で無理やり解釈するなら老婆は主人公を一目見て運命の人と直感した。それは主人公も同じ。一緒に理想の夢(ビジョン)を見る相手と初めて出会った。主人公は夢を信じる老婆の純粋な気持ちに応えてあげたいと思った。写真の祖父や祖母は老婆の理想とする男女関係で主人公もそれに同意し、一緒に寄り添って終わるという話ではないか。写真やビジョンはあくまで隠喩で理屈で考えるよりも素直に感じた方が楽しめる作品。女の子はどんなに年を重ねても女の子で、純粋な気持ちは変わることがない。気遣いや優しさの物語。

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