2009年に話題になったフリーゲームGravity Boneの流れを継ぐ作品。ちょうどSteamでセールだったので購入してみたが今回も10分程度で終わる内容でゲーム要素はGravity Boneよりもさらに薄く、実験的な作り。主観視点で操作できる映像作品と表現すべきか。
Gravity Boneはスパイの人生を表した分かりやすいものだったが、今回は各シーンが深読みできていくつも切り口がある。同じ登場人物によるIFの短編小説を繋ぎあわせたらこうなりましたよというか、ゲームの印象的なシーンだけを切り抜いて説明台詞やゲーム要素を省いたらこうなったというか・・・いずれにせよゲームのお約束や文脈にとらわれない作りに魅力を感じる。
これがGravity Boneと同じように一人のスパイの人生を描いたものだとしたら、やはりキモになるのはアニータのこのシーン↓をどう解釈するかによって見方が大きく変わってくる。初めはどちらかが裏切ったのかと思ったが、その後で明かされる恋幕事情を見る限りでは次元のおっさんが致命傷を負ったから主人公に任せて、アニータは「私は自分でなんとかするわ。早く行って!」と銃を向けて急かしていると解釈した方がよりロマンチックでタイトルの意味とも合致してくるようにも思う。ただ、血を流しているのがアニータと次元しかいないので無理やりと言えば無理やり。もうこのへんは主人公であるあなたが自分の好きなように解釈するしかない。
すでにGravity Boneという前例があるし、物語展開がより難解になってしまったのであの時ほどのインパクトやカタルシスは得られなかったがこのゲームでしか味わえない体験ができたのは事実だ。10分程度で終わる作品に$3を出すか、それともプレイ動画でも見て済ませるかはあなた次第だが、まず無料のGravity Boneをプレイしてみてその作風が気に入り、もっとそういった作品を発表して欲しいと思うならお布施として本作を購入してあげるのも良いと思う。個人的にはGravity Boneは衝撃的で傑作だったし、本作を買った価値はあった。