押井守、『DEATH STRANDING』を語る

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デス・ストランディングについて語る押井さん。押井さんは戦場のヴァルキュリアバットマンやドラクエビルダーズでも「映画はゲームにもう勝てない」ということを仰っていて、今回も同じ趣旨のことを言っていますね。

押井さんのファンとしては実際にプレイしているところを見たかった。 押井さんはいまのところゲームプレイ中の生の反応って見せていない。押井守の『Fallout4』通信はあくまで日記だったし。

デス・ストランディングは来年にPCに移植されるということで、その時に私はプレイしようかなと思っています。メタルギアソリッドVはプレイして、物語や演出は面白かったけど内輪受けが強い部分もあったし、ゲームデザインはFar Cry 2やマーセナリーズレベル。今回はすべてを一新した新規IPということで一見さんでも入りやすいじゃないかと思う。

インディーのようなゲームデザインにAAA(トリプルエー)クラスの表現を組み合わせているところが今回の目新しい点。メタルギアソリッドVはAAAクラスの真似事をして、表現は海外に負けていないが主にゲームデザインの部分で古さを感じた。そこが今回は真正面から殴り合う形ではないので克服されているんじゃないかと期待している。

私はオープンワールドゲームの移動が退屈でしょうもなくて水増しに感じるんだけど、デスストは「歩く」ことにも面白い仕掛けが施してあるから、その点もある程度は解消されているんじゃないかな。

シミュレーター寄りのニッチなゲームデザインはAA(ダブルエー)クラスの本場なわけだけれども、アートや表現力についてはAAAクラスにはやっぱり劣る。ユーロトラックシミュレーターはグラフィックが一段階落ちるし、The Hunter: Call of the Wildは物語(ミッション)が退屈。そこが主題ではないんだけれども。

デスストは範囲を絞ることで中規模開発でありながらAAAクラスの表現に追いついている。オープンワールドといっても荒涼とした世界を舞台にすることで建物などはあまり存在しないし、登場人物を抑えて量よりも質を重視している。

コジマプロダクションの規模ではRockstar GamesやAAAクラスと殴り合っても勝てないわけで、デスストの物語や世界観は開発規模をしっかり計算して作られたものだと考えられる。メタルギアソリッドVでの紆余曲折が今回は活かされているんだろう。今回は大企業の後ろ盾がなく、ジャブジャブ金を使いまくることはできないし、より緻密に戦略を練らなければならなかった。

登場人物に有名な役者を起用しまくったのも戦略の一つ。実際の役者を起用するメリットは二つあるわけだけれど、まず一つ目は宣伝効果。有名な役者を起用すればタダで宣伝してもらえる。ジブリが毎回、芸能人を起用するのはなぜか。建前では「自然な演技が欲しい」とか言ってるけど、実際は芸能人を起用してTVで宣伝してもらえるのが本音。

ただ、ジブリの場合は声の演技ができない芸能人を主役に抜擢するからひどいことになってるわけだけれど、デスストの場合は知名度も演技も抜群の役者だからそこは問題はない。そもそもCGの場合は3Dスキャンだけ本人がやって、声や動きは別の人間がやってもいい。脇役のギレルモ・デル・トロは役者ではないので英語の音声も別の人がやっているようだし(私は彼のスペイン訛りの英語がかわいいと思うけど)。

役者の起用方法もセンスがあった。ティーザームービーを見ても華のある役者にさらに華を持たせるような見せ方がうまいというのかな、単に登場人物に実写の人を起用してますって感じではない。

本人の魅力が伝わるような見せ方がうまい。これは小島さんが映画オタクでよく観察しているというのと、実際に本人にあって親密な関係を築いているところが大きいのだろうと思う。AAAクラスのゲームで役者を起用する例が最近多いけど、ここまでうまくPRできている作品ってのはなかなかない。

そのへんのノウハウはメタルギアソリッドVでの経験もしっかり活かされているんじゃないかな。ステファニー・ヨーステンさんはいわば実験体のようなものだったけど、作中で一番印象深いキャラクターは彼女で、小島さんの中でも実写の役者という方向性に勝機を見いだせたからこそ、今回のデスストに繋がっているのではないか。

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