今回は前回、前々回のエントリーで書き足りなかった部分の補足を行いたい。一気に書けばよかったのだが、時間的都合でブツ切りになってしまった。申し訳ない。
●拡張性の高いUIデザイン
MMORPGのウィンドウはユーザーの好きな位置に配置できる。OSのウィンドウのように、ステータスウィンドウはこっち、スキルウィンドウはこっちという風にだ。これはMMORPGが効率重視なゲーム性だからではないかと考える。
どんな配置が見やすいかはユーザーの慣習に左右されるため、ステータスウィンドウは上にあった方が見やすいという人もいるだろうし、その逆の人もいるだろう。なので、ウィンドウの配置はユーザーでいじれた方が効率性は増す。
また、ウィンドウデザイン自体をカスタマイズ可能なMMORPGなどもある。今はプレイしていないので現状は分からないが、βテスト時代のラグナロクオンラインでは、ユーザーがウィンドウデザインのカスタマイズが可能で、それぞれがスキンを作り、配布したりしていた。外見重視なものが多かったが、なかにはユーザビリティが考えられていて公式のスキンよりも使いやすいものもあった。
MODなどもそうだが、こういう拡張性はPCゲームならではなのかもしれない。
●中級者以上の為のショートカットキー
Diablo系RPG(クリックゲー)やストラテジーゲームはすべてマウスで操作可能(フルマウスオペレーション)だと初心者はとっつきやすい。攻撃したり、防御したり、魔法を唱えたりといった操作がマウス一つでできると覚えることが少なくて済む。
攻撃はAキー、防御はDキー、魔法はCキーのように、いくつもキーを覚えるのは大変だし、それだと慣れるまでには時間が掛かってしまうだろう。初心者に「なんだか難しそう」という印象を与える可能性もある。
ショートカットキーは、ユーザーが操作とシステムを習熟した時に真価を発揮する。
「全体マップを見るために、地図のアイコンをクリックするのは面倒。
複数のユニットを選択するために、マウスをドラッグするのは面倒。
操作には慣れた。もっと効率的な操作をしたい!」
その要望に応えるのがショートカットキーだ。
全体マップはMキー、複数ユニットの選択はAキーなど、ショートカットキーを一発押すことで機能を実行できれば、マウスの面倒な操作をする必要が無くなる。操作に慣れてきたら、マウスからショートカットキーへ段階的に移行していけばいいのだ。
むろん、ユーザーによって「マウスに適した操作」と「ショートカットキーに適した操作」が出てくる。マウスとショートカットキー、両者をうまく使い分けていければ効率的な作業を行える。
また、ショートカットキーは変更(コンフィグ)できた方がよい。ユーザーにはそれぞれ異なる慣習や身体的特徴(指の長さ・手の大きさ)がある。だから、ユーザーが好みのキーに変更できる方が望ましい。そうすることで個々のユーザーの効率性が増す。
●指だけじゃなく声も利用。さらには脳も?
上でショートカットキーの利点を述べたが、これはPCゲームのデバイスがキーボードだから可能な例である。家庭用ゲーム機のパッドはボタンの数が少ないため、いくつもショートカットを割り当てるのは不可能だ。このボタンの少なさが家庭用ゲーム機でリアルタイムストラテジーゲーム(RTS)を出しにくい要因の一つになっている。
しかし、最近ではUbisoftがその問題に対して果敢に挑戦している。Ubisoftがボタンの少なさを補うために用意したのは「音声入力」(以前から音声入力を搭載したゲームはあったがUbisoftほど熱心ではなかった)。なんとマイク越しの音声命令でゲームを操作可能なのだ。
たとえばTom Clancy’s EndWarでは「部隊ワン、攻撃、エネミーアルファ(部隊1はアルファチームを攻撃しろ!)」という風に命令すれば、部下がそれに従う。このボイスコマンドシステムのお陰でパッドでは難しかった複雑な操作を迅速に行える。そして、なおかつ司令官気分も味わえるようになっているというわけだ。
余談だが、最近では脳波マウスなるものが販売されていて、念じるだけでコンピューターの操作ができる可能性が出てきた。もしかしたら、直感的なイメージを思い描くだけで、ゲームを操作できる日が来るのかもしれない。
あとがき
UIデザインはユーザーが何の疑問を抱かずに自然に扱えることが望ましい。不親切なUIデザインはゲームの難易度を上昇させ、システムへの習熟を遅れさせ、ユーザーを遠ざける可能性がある。テストプレイや難易度調整を行う際、単にゲームバランスを変更するだけでなく、UIデザインに問題がないかもチェックするべきだ。開発者にとって扱いやすいUIが初心者にとって扱いやすいとは限らないからだ。それだけ慣習(慣れ)というのは恐ろしい。すべてのゲームのUIがユーザーにとってやさしいものであることを望む。
とりあえず、今日でゲーマーの為のUIデザインの話は終わり。また追々、各ゲームのUIについて話したい。