ガジェット – 泳ぐ深層心理

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クリア。ガジェットの場合、「クリアした」というより「観た」といった方が適切かもしれない。アドベンチャーゲーム的なパズル要素はほとんどなく、半自動的にムービーが進んでいく。感触としてはムービーを自分の指でめくっていくような感じが近いか。

ストーリーは旧ロシア映画のごとく難解で抽象的。NPCは言っていることがバラバラ、それに加えて説明過小。あやふなまま話が進んでいく。そして、オチも意味深な終わり方だ。様々な解釈が可能なストーリーとなっており、ある意味マルチエンディングなのかもしれない(各々の解釈的な意味で)。

計器萌え
個人的に、ガジェットは鉄人と同じく、人間の意識や精神をテーマにした話のように感じた。ただ、描写の一つ一つがあやふや過ぎて、どこまでが現実で、どこまでが幻想なのかの区別が難しい。もしくはすべてが幻想に過ぎず、仮想現実内の話なのか。

仮説1.
主人公はレジスタンス(もしくは反政府的な考えを持った人間)ゆえにセンソラマ(洗脳装置)に掛けられ、思考を矯正させられるのだが、センソラマが未完成なため、完全な洗脳には至っていない状態。スロースロップとオロフスキーが洗脳因子だとすれば、ホースラヴァーと六人の科学者はそれに対する反抗心(現実世界ではオロフスキーがセンソラマを悪用しているのだが、仮想現実ではホースラヴァーが悪用しているように見せかけられている)。そして、十二人の乗客は、主人公の洗脳された意識と反抗側の意識の集合。または今までにセンソラマに掛けられ、自我崩壊を起こした人間たちの意識の残滓(センソラマテストでFailedのハンコを押された写真がその証拠か)。行く先々に現れる「少年」は、主人公の意識に一番近い純粋な存在。

謎の少年の正体とは・・・

仮説2.
センソラマは現実と切り離された精神世界を構築するための装置。オロフスキーの掲げた目標-「完璧な意思の統一」「完全なる覇権の成立」は、センソラマによってすべての人間の意識を一つにするのが目的。地球に衝突する彗星は肉体放棄の暗示、The Arkは精神世界へ旅立ちの暗示。しかし、センソラマが未完成なため、主人公の意識は孤立し、彷徨っている状態。

朽ちたセンソラマ

撮影監督モートン・ハイリグが1960年代に開発した元祖VR機器「センソラマ」と同名の機械をゲーム中では「洗脳装置」と扱っていることからも分かるように、仮想現実がキーワードになっているのは間違いないと思われる。モートン・ハイリグがセンソラマのことを「新世代の映画」といったように、庄野氏もガジェットをそのような位置づけで企画したのではないかと勝手ながら想像した。五感体験を目指していたセンソラマと違い、ガジェットは「観ること」「触れること」しかできないが、それでも映画とは異なった体験を生み出せていたと感じる。

クリアまでは約三時間程度。アートワークが大変素晴らしく、私は閉塞的な世界観に惹きこまれた。一気にプレイしてしまうほどに。L-Zoneの時もそうだったが、やたらと計器が登場する。計器はインタラクティブムービーと親和性がいいのか、それとも庄野氏が単に計器萌えなのかは定かではないが、計器マニア歓喜な作品だ。ガジェットでは色んな計器が登場し、それらに触れることができる。

誰の話を信じて、誰の話を信じないか。それは君の自由だ

感想はのちほどまとめる。ゲームとは言いがたい作品なので、いつもとは趣向の違った感想になりそう。

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