ゲーム機やPCが大容量のムービーを扱えず、グラフィックス機能も貧しかった時代。レーザーディスクに実写やCGムービーを収録し、それにゲーム要素を加えたものをLDゲームとして販売し、一部で人気を集めていた。LDゲームの利点は美麗なムービーを味わいつつ、ゲームも楽しめる点にある。当時は大容量のムービーを扱えて、かつゲーム要素を導入できる媒体はLDくらいしか存在しなかったため、その試みは画期的なことだった。
ただし、LDゲームにも弱点があった。ムービーは本来見るもの(受動)であり、ゲームは動かす(能動)もの。その相反する要素を組み合わせるのは容易ではない。また、LDゲームの特徴はあくまで「大容量の美麗なムービーを見せること」に重視しており、ゲーム内容としてはおざなりなものが多く、コンソール機のゲームに比べると内容が劣っていた。それに加えて、「しょうもないボタン押しはいいから、美麗なムービーだけみたい」という人もいた。
そうした理由からLDゲームの人気は一時的なものでしかなく、その後にゲーム機やPCがCDを扱えるようになり、グラフィックス機能も進化したため、その役目を終えることになった。それからもCDやDVDを利用して、LDゲームのような作品が作られているが、上記の理由から細々とした人気にとどまっている。
Deadly TideはLDゲームの影響を色濃く残している作品だ。CGムービー上に敵が現れ、カーソルを合わせて銃撃するシューティングゲームである。いまでいうと、ゲームセンターのガンシューティングゲームや体感ゲームに近い。
操作デバイスはマウスとジョイスティックに対応。私はジョイスティックでプレイした。やはり、こういうタイプのゲームはジョイスティックで操作した方がゲームセンター気分や機体を操る雰囲気が味わえる。マウスで操作すると味気なかったのだが、ジョイスティックを使うと射撃の面白さが増した。
ストーリーは、宇宙から水棲エイリアンがやってきて、深海に住み着き、海の面積を広げていく。その侵攻を阻止するために地球海洋同盟(EOA)が立ち上がり、エイリアンとその基地を壊滅させるという内容になっている。主人公はハイドロファイターという水中用の乗り物のパイロットで、これに乗ってエイリアンと戦う。
いまの目で見るとムービーの質は粗いが(1996年作)、深海の描写やエイリアンの基地は幻想的でアートとして美しい。そこに爆発の描写やレーザー光線の蛍光色が合わさり、鮮やかな映像を演出している。
本作にはフライトモード、パノラマモードの二つのモードが用意されている。フライトモード時は画面が自動的に移動し、疾走感のあるプレイが楽しめる。視点移動はできず、画面移動も自動なのでとっさの反射神経が問われる。
一方、パノラマモードでは画面の移動が停止し、その場を360°見渡しながら敵を迎撃していく。こちらのモードは敵を自分で索敵しなければならず、早急に敵を発見しないと集中砲火を浴びるはめになる。
ちなみにどちらのモードでも自分で移動はできない。ゲーム中は基本的にこの二つのモードが繰り返され、緩急のあるゲーム展開を楽しめる。
水中ではハイドロファイターに乗りながら戦い、沈没船内ではアクアティックコンバットスーツを装着して探索していく。両者の操作方法は特に変わらない。前者はハイスピードな戦い、後者は閉塞的な空間でのサバイバル感覚を味わえる。
基本的にカーソルを合わせて銃撃するのは変わらないが、ステージ毎にゲーム展開がめまぐるしく変わり、マンネリ感を感じさせないように作られている。バリアー装置を破壊しなければ進めないミッションやエイリアン艇を操作するミッション、味方の母船を援護するミッションに脱出シーンなど変化に富んでいるといえよう。
スターウォーズ4のデススター攻撃戦を彷彿とさせるハイスピードバトルや入り乱れる状況や緊迫した展開は映画の主人公になったような気分を味わわせてくれる。また、後半は爆弾投下型戦闘艇が登場し、戦闘にも一工夫あり飽きさせない。また、条件によって進路が分岐するところがあり、さっきと違った展開になることも。
演出重視のゲームだが、その演出を押し付けがましいと感じなかったのは、美味しい所を自分でプレイできるからなのだろう。本作はLDゲームの影響を受けているゲームだが、美麗なムービーを見せることはもちろんのこと、プレイさせることにも拘っている点を評価したい。ゲームなのだからボスや敵は自分で倒せてナンボだ。ムービーシーンで操作できず、主人公がボスを勝手に倒したり、勝手に敵基地から脱出したりしては面白みがない。そういったシーンを自分で体験できてこそゲームではないだろうか。
攻撃はレーザーとボムの二種類。レーザーは弾が無限だが、連射するとオーバーヒートするため、的確な射撃を求められる。ボムは範囲攻撃でダメージも強力だが弾数に限りがあり、一つのステージで5個しか使えない。それゆえボムはここぞという時に残しておき、無駄撃ちしない方がいい。ステージ毎に難所というべき場所があるので、そこで効率的に使うのがベターだ。
体力(シールド)は自動回復方式となっている。現れた敵をいち早く殲滅し、連続ダメージを受けないことが重要だ。体力がなくなるとゲームオーバーになり、前のシーンからやり直しとなる。シーンのスパンは短いので、やり直しのウンザリ感が少ないのが幸いだ。
基本的に覚えゲーなので何度かやれば打開できるはずである。もしくは途中で難易度変更が可能なので下げるのも一つの手かもしれない。難易度は1,2,3と用意されているが、2でもかなり難しい場所がある。やり直しを前提にしているのではないかと思うのだが、それは私が下手なだけだろうか。
ゲームオーバーは体力がなくなる他に、イベントを失敗時にも起こる。たとえば、上から船の残骸が降ってくるシーンで時間内に扉を壊すことができなければ残骸の下敷きになり、ゲームオーバーになってしまう。ただし、そういうイベントはほんの一部だけなので安心して欲しい。
まとめ
本作は小気味良いアクション映画を彷彿とさせる展開と美しいムービー、そして疾走感のあるシューティングが楽しめる作品だ。LDゲームタイプの中でも特にゲーム性が高く、良質な内容に仕上がっている。LDゲームのシューティングが好きだった人にはぜひプレイしてほしい一品だ。また、LDゲームに興味のある人にも薦められる作品である。
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