Dead Space 2 感想

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モンスターの四肢を潰してやっつける戦略的部位切断システムを採用したホラーTPSの続編。採掘船「石村」の惨劇から三年後、今度は宇宙ステーション「スプロール」で再び悪夢に襲われる。

主人公のアイザックは前作のショックで精神に障害を負い、石村脱出後の記憶があやふや。登場人物たちはアイザックのことを知っているが、もちろんこちらは覚えていない。彼らは協力してくれるようだが、善意でやってくれているのか、それとも利用されているのかは定かでない。誰が味方で誰が敵か分からないミステリアスな展開が特徴となっており、前作よりも登場人物との絡みが多い。それゆえ今回も前作と同じように記録を集めて、真実を追い求めていくことになる。

人間の記憶は非常にあやふやで、時間が経てば経つほど細部は薄れ、都合の良いように書き換えられていく。しかし、記録は裏切らない。記録はその姿をありのままに保存する。だから人は正しい記憶を失わないように写真やビデオで記録にして残すのだ。だが、他人によって作られた映像・音声録音・文章がどこまで本当かは当事者しか知らず、疑い始めればきりがない。とりあえず協力者と思われる人物に従いながら進むしかないのだ。

前作のアイザックはほとんど無言を貫き、寡黙な主人公だった。余計な口を挟まないお陰で主人公との一体感を得られたのだが、今作では人が変わったように登場人物と会話し、主人公との距離が遠くなったように感じられてしまう。ただし、積極的にコミュニケーションを取るようになったことでドラマ性は格段に増している。この点は体験が好きか、それともドラマが好きかで評価が分かれるところだろう。映画的なストーリーが好きな人なら、より楽しめると思う。

前作で恋人のニコルの安否をアイザックは知っているもの、そのショックからは立ち直れておらず、まだ現実を直視できていない。その弱みがマーカーの影響で幻影として現れ、悩まされることになる。最愛の人のことを受けいられるか否か、そんな切ないロマンスが今回のテーマの一つとなっているのだが、良き想い出は見事に悪夢へと昇華されており、辛いことばかりがアイザックを襲う。しかし、今回の物語は新たな登場人物のお陰で救いがあり、後味は決して悪くないものに仕上がっている。

前作の操作は垂直同期を切っても照準合わせに少し違和感があったが、今作ではスムーズになった。暗いところが多いのでずっと銃を構えて移動した方がいいくらいだ。バイオハザード4は銃を構えている間は動けないという制約によって、じわりじわりと敵に追い込まれていく恐怖感や緊迫感を演出し、歩きながら銃を撃てないのがゲーム性としていたように、前作Dead Spaceの照準の違和感もホラー要素を助長させるための演出として活きていたが、今回はそういう制約をとっぱらったことにより普通のアクションTPSに近付いている。ホラーよりも爽快感を重視したと考えるべきだろう。

また、チェックポイントの感覚も短く設定されており、一発死してもすぐに直後からやり直せる。ビックリ系の演出を数多く取り入れ、緊張感の高いゲームプレイの本作だが、プレイしやすさに磨きをかけることで嫌なストレスが溜まりにくいように配慮されている。

ゲーム性はほとんど変わっていない。敵が近付いてきたら足を切断して、移動速度を落とし、攻撃を仕掛けてきたら腕を切断、ダッシュでやってきた場合はステイシス(一時停止させる能力)をかけて時間を稼ぐという具合だ。ネクロモーフの種類は小走りの子供、物陰に隠れて見つめるタイプなどが追加されているが代わり映えはせず、マンネリ感は否定できない。

キネシス(物を掴んで投げる能力)は発動速度や命中率が上がり、圧倒的に使いやすくなった。動かせるオブジェクトの数も前作に比べて増えており、敵にそこらへんのオブジェクトをぶつければ怯ませることもできるし、鉄棒やネクロモーフの爪なら一撃で倒せる場合もある。キネシスはいくらでも使い放題で弾の節約にもなるため、今回は使用頻度が高くなるだろう。手持ち無沙汰な時は物を掴んで投げていれば暇つぶしやストレス解消にもなる。前作よりも壊せるオブジェクトが増えたのが嬉しい。ついつい色んなところを壊したくなってしまう。ただし、たまにトラップが仕掛けられている場合もあるのでご注意を。

敵の死体は何かしらのアイテムを持っているため、残虐だが死体破壊は必須。しかし、死体の数には限りがあり、5体以上(それ以下かもしれない)になると初めの死体から消えていってしまう。つまり、敵のラッシュ時に死体を破壊せずに後に残しておくとアイテムを回収できなくなってしまうというわけだ。死体を破壊しつつ、敵に対応するのがDead Space 2のゲーム性といってしまえば聞こえは良いが、これは単に死体の表示数を削ってパフォーマンスアップを図っているだけと思われ、どうせならオプションで死体の数も変更できればよかったと思う。

店では武器やアイテムを購入でき、ベンチでは改造ができるのも前作と同じ。貧乏性の人は武器購入や改造のタイミングに今回も悩まされることだろう。何種類かスーツが登場し、それぞれ特殊な効果を持っているが、影響はそれほど強くない。新しいスーツを購入すれば他のスーツの基本性能もアップグレードされるので見た目で決めても問題はない。主人公のエディットができないだけに、こういう着せかえ要素で見た目を変えられるのは嬉しい。ただ、スーツに着替える度に変身シーンが流れ、これが結構長い上にカットできないので着せ替えの度にうっとおしさを感じてしまった。

武器は前作に登場したものに加えて、新しいものもいくつか追加されている。攻撃方法自体はどれもオーソドックスだが、外観が工作機械の延長という感じでユニーク。無骨で飾りっけはないが、それでいて安っぽくない。質実剛健な造形が所有感を満たし、愛着を沸かせるだろう。

宇宙ステーションを舞台にしたお陰で、ケレン味のある巨大な建造物群が登場し、機械のデザインや仕掛けも凝っていて、SF的な魅力が増している。今回も無重力ゾーンは存在するが、スーツにジェットパックが搭載されたことで自由に移動できるようになった。空中をゆらゆらと漂う姿は幻想的で美しい。360°縦横無尽に駆け巡れるジェットパックによる宇宙遊泳はSFらしさを強め、センスオブワンダーをくすぐるだろう。最近のFPS/TPSで無重力体験が味わえるゲームは少なく、ある意味新鮮だ。その他にも電車の中を滑り落ちたり、逆さ吊りにされたりなど、平衡感覚をファックするアトラクションも健在でゲームプレイの良いアクセントになっている。

今回もQTE(クイックタイムイベント)はあるが、Eキーの連打とシューティングで解決できるので苦にはならない。演出はダイナミックで迫力があり、なおかつ分かりやすい。QTEというとマイケル・ベイ映画のようにズーム多様やカメラのブレが激しすぎて何が起こっているのかよく分からない、音ゲーみたいなボタン押しを要求されてじっくり演出を見れないという不満がよくあるが、本作の演出は洗練されていてバランスが良い。シューティングゲームなのだからイベントもシューティングで解決するのは合理的であり、部位切断の要素も演出にしっかり活かされている。

さらに磨きのかかったゲームプレイ。前作ファンならマストバイ!

今回は登場人物との絡みが多く、誰が味方で誰が敵か分からないミステリアスな展開とニコルへの執着、そして新しい仲間との出会いなど、ドラマ性が大幅に強化されており、ストーリーが面白い。前作と違ってハッピーエンド寄りなので後味も良い。しかし、そのせいでアイザックとの一体感は薄れてしまったが、これは仕方のないことだろう。

シューティングはさらに洗練され、爽快感も高くなり、前作同様に完成度は高い。新規性はこれといってなく、まさに拡張パック的な内容。敵は使い回しが多く、目立って新しい要素もないため、マンネリ感は否定できないが、そもそもDead Spaceにそれ以外のものを求めるのが間違っている。前作のファンや宇宙を愛する人なら間違いなく楽しめるだろう。

・Dead Space 2 – 2月15日~2月18日の日記

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