Serious Sam 3: BFE – 源流を継承しつつ新たな魅力を身につけた続編

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続編物の宿命

一度ヒットすれば二匹目のドジョウを狙って、続編が作られるのはゲーム業界で当たり前のように行われている。新規タイトルは一から設計しなければならず、また宣伝や資金集めも難しい為、続編物はそういう面で多大なメリットがある。もちろん、これはゲームのみならずあらゆるメディアで行われていることであり、日夜、様々な続編物が作られている。

しかし、元の作品を愛しているファンとしては続編物は続きが楽しめるという嬉しさの反面、原作に泥を塗るような駄作が生み出される危険性もあり、手放しで喜べるようなものではない。ファンにとって原作とは自分自身の一部のようなものであり、それらが傷つくのは耐え難いものだ。

だが、実際のところは原作のネームバリューを目当てにした駄作が次々と生み出されており、原作者が関与していない続編物はその傾向が極めて強いと言えるだろう。また、原作者が関与していたとしても、楽に売上を伸ばしたいあまり、ライトユーザー向けにカジュアルで浅ましい方向へと作り変えられることが度々あり、原作の良さをぶち壊したり、勘違いしているケースも少なくない。それに加えて、素晴らしい原作がある場合は、続編物のハードルはさらに上がる。ファンは原作を心の中で美化しており、続編物がそれを大きく超えなければ褒めることはない。多少改善しただけでは「二番煎じ。代わり映えしない」と言われるのが関の山で、新規ユーザー向けに作れば「日和った。原作者は死んだ」と言われるのがオチだ。

続編物が成功するには、原作の良さを作る側がきちんと理解しておかなければならず、その魅力をより引き立て、広範囲な層が楽しめるにはどうすればいいかを考えて設計しなければならない。一見、簡単なように見えて、原作という縛りがある続編物の製作は大変困難なものなのだ。

Serious SamシリーズはThe First Encounter(FE)、The Second Encounter(SE)、Serious Sam 2(SS2)とリリースされており、Serious Sam 3: BFEは4作目に当たる立派な続編物である。FEとSEは同時期に製作されたものであり、評価はそれほどブレがなかったが、SS2は変更点が多く、賛否両論があった。今作はSS2から約6年ぶりの新作であり、また今風のアレンジが加えられていることからファンは不安を抱えながらリリースを待つしかなかった。

結論から言ってしまうと、確かに今作は過去作と異なる点があるものの、根っこの部分は同じであり、今回取り入れられた要素は根っこの面白さをより引き立てている。ファンをないがしろにせず、新規ユーザーにもとっつきやすくした設計変更に続編物のあるべき姿が見えた。減点方式で評価するなら手放しでは褒められない部分はあるものの、それを超える面白さで凌駕している。

回避が生む古き良きプレイ感覚

現代を舞台にしたFPSでは即着が主流であり、敵の攻撃を見て避けることは難しい。そのようなFPSでは敵の攻撃を回避するには遮蔽物に身を隠すしかない。本作では敵の攻撃は概ね目視で避けられるように作られており、原作の良さを守っている。敵の攻撃をギリギリの距離でかわし、一矢を報いる戦術は単に撃ちまくるだけのFPSとは異なる面白さを与え、古き良きプレイ感覚を味わわせる上でも重要な部分である。

今回、追加されたスクラップジャックという敵はその”かわし”の面白さをより体感させてくれる。スクラップジャックは両手のロケットランチャーから同時にロケット弾を放つのだが、中心に向かって飛んでくるバイオメカのロケット弾とは異なり、二つのロケット弾の間に空間が出来る。つまり、スクラップジャックの中心に向かって進めばロケット弾には当たることはない。発射位置をプレイヤーに合わせようとする為、こちらもそれに合わせてズレる必要はあるが、常に中心を進めば接近戦に持ち込むことも難しくはない。ロケット弾とロケット弾の間をすり抜けていくギリギリ感はさながら弾幕ゲーのようであり、普通の銃撃戦とは違った面白さと緊張感が味わえる。

攻撃は最大の防御

多くの敵の攻撃を目視で避けられるものの、目視による回避が難しい敵も存在する。クローン兵やアラクノイドの銃撃は高速の為、走り回っていても当たってしまう。ただし、人型の敵は攻撃すれば確実に怯み、攻撃や移動を中断させることができる。小型のモンスターも一定のダメージを与えれば怯むようになっており、攻撃することで回避が可能だ。怯みは敵の攻撃を回避する手段だけでなく、銃撃による手応えも感じさせ、爽快感の向上にも繋がっている。

また、バイオメカやスクラップジャックのロケット弾は銃撃によって爆発させることができる為、目視による回避が難しい場合でも避けられる。アラクノイドアダルトの攻撃だけはどうしても身を隠す必要があるが、それ以外の敵の攻撃に対しては身を隠す以外の回避方法が用意されており、このシリーズの面白さの一つである回避が今作でもしっかり継承されている。ただし、遮蔽物やキャンプできる場所が増えており、身を隠して戦いたいユーザーはそういう戦い方もできるようになっている。

ダッシュとリロードが生む戦術性、ホロサイトによる狙い撃つ面白さの向上

これまでの作品では一定の速度でしか移動できなかったが、今作ではダッシュが可能になった。屋外での移動速度はFEやSEと変わらない為、ダッシュすれば今まで以上に高速な戦闘が楽しめる。敵を銃撃で怯ませつつダッシュで接近して至近距離で一撃をくらわすという芸当ができるようになっており、ダッシュによって近接戦闘の可能性が広がっている。敵に接近すればEキーで一撃必殺の格闘が繰り出せるので接近戦に大きなメリットがあるが、格闘アニメーション中も無敵ではなく、周りの状況を見ながら繰り出す必要があり、リスクももたせることで銃撃戦とのバランスが保たれている。

スレッジハンマーはダッシュ中でも振り回すことができ、威力も小型の敵なら即死させるほど強力だが、きちんと照準を合わせながら振り下ろす必要があり、攻撃に失敗すればダメージを受ける危険性も孕んでおり、こちらもきちんとリスクを負わせることでバランスをとっている。

リロードが必要な銃が増えており、それを考慮した戦いを強いられる。このシリーズに慣れているものからすると煩わしさを感じるのも事実だが、リロードが必要なことで武器の使い分けは今まで以上に重要になっており、「後退しながら連射すればいいだけ」では通用しなくなった。アサルトライフルの上位武器に当たるミニガン(弾薬は別)はリロード無しで連射が可能なものの、弾薬数は限られており、過去作よりも弾薬のバランスがまともになっており、弾薬管理の面白さは本作の方が上だ。

ハンドガンはアイアンサイト、アサルトライフルはホロサイトを覗ける。ホロサイトを覗くと視点が若干ズームされ、遠距離の敵を狙い撃ちやすい。今まではスナイパーライフルくらいしか視点をズームできるような武器はなく、敵らしき物体に向かってテキトーに弾をばらまいておけば良しというデザインだったが、ホロサイトの導入により敵の姿をしっかり捕捉しつつ銃撃する必要があり、狙い撃つ面白さが向上している。

ダッシュ、リロード、ホロサイト、この三つの今風の要素はプレイしてみるまで不安要素でしかなかったが、実際のところは駆け引き性を高め、面白さを引き立てる方向に上手く働いており、また今風の操作性に慣れたプレイヤーにもとっつきやすくなっている。

シングルでもスタンダードCOOPでも楽しめない要素はコインCOOPで真価を発揮する

暗闇の屋内ステージがいくつか用意されている。屋内では移動速度が下がり、屋外との差別化を図りたかったのだろう。しかし、暗闇では敵の攻撃を避けづらくサムの面白みである回避が十分に発揮できない。その上、構造が複雑な為、COOPでは初見のプレイヤーは迷いやすく、分断させてしまう。なぜか今回は集合用のポータルが用意されていない為、迷ったプレイヤーは先頭集団がリスポーンポイントを更新するまで待って自爆するしかない。このシリーズのCOOPは他のゲームに比べてバラバラに行動する性質が強いのだが、暗闇ステージのせいで余計に別行動をさせてしまうつくりになっている。

ブライドウィッチはプレイヤーを拘束する能力があるのだが、無敵時間が長く、C4やキャノンを使わなければ戦闘が長引きやすい。COOPでもスピーディーなゲーム展開をぶち壊す要因になっており、ダレを生じさせる。

と、上記のように思っていたのだが、コインCOOPをプレイしてからは意見が変わった。コインCOOPとはプレイヤー毎に残機が決まっており、スコアや1UPを取ることで残機が上がっていくシステム。残機が無くなると傍観するしかない為、普通のCOOPに比べて死のリスクが格段に上がっている。COOPではシングルよりも敵を強くすることが可能であり、デフォルトのシリアスよりも難しい設定にもできる。高難易度でのコインCOOPは非常に緊張感が高く、暗闇のステージやブライドウィッチが恐ろしい存在へと変貌し、退屈と感じていたこれらの要素が面白く感じられる。コインCOOPはその性質上、プレイヤー同士の連携も高めるシステムであり、より協力を重視したい場合はオススメのモードだ。

ゆるやかな戦闘の激化

今までに比べるとスロースターター気味のゲームバランスであり、序盤はハンドガンとショットガンだけで少数の敵と戦う局面が中心となる。前述したように古き良き部分をしっかりと守っている為、DOSゲーのような面白さはあるのだが、シリアスサム特有の大量の敵を強力な銃火器で撃ちまくる展開を序盤から味わうことはできない。そのため初めから激しい戦いを求めている人は肩透かしをくらう可能性が高い。

しかしながら、DOSゲーのようなゲームデザインが好きな人は序盤も楽しめると思われ、個人的には中盤までが一番面白く感じた。シリアスサムはDOOMの後継作と言われているが、FEやSEの時点でベクトルはやや異なっており、DOOMらしさで言えば今作の序盤戦の方がよほどそれらしい。

中盤以降はシリアスサムらしい展開へと変貌していき、いつものバカさ加減が存分に味わえるのでファンは安心していい。序盤はDOSゲー、中盤以降はシリアスサムという風にゲームデザインの移り変わりを感じさせる作りは、きっと今作がFEの前日談に当たるストーリーであることも関係あるのではないだろうか。原点に還るという意味でこの構成は悪くなく、ゲーム展開もFEやSEと違ってハイパーインフレ気味ではない為、最後までダレずに楽しめるのではないかと思う。

原作の良さをより引き立てることに成功した続編物。シリサムファン以外の一見さんにもオススメ

リリースされるまでは半信半疑だったが、プレイを始めてからは一気に虜になった。新規要素は概ね良い方向に働いており、  一部の要素に関してもモード次第では面白いものへと変貌し、続編物にありがちな失敗は重ねていない。このシリーズは戦いこそが醍醐味であり、物語性は重視されていない上に物語的には一番初めに当たるため、新規ユーザーは今作から始めても何も問題はない。シューティングに飢えている人は是非チャレンジして欲しい一品である。

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