Vampire: the Masquerade – Bloodlines 感想

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Vampire: the Masquerade – BloodlinesはTRPGの「Vampire:The Masquerade」をベースにしたアクションRPGだ。主人公は行きずりの異性によってヴァンパイアにされ、闇の世界で生活せざるを得なくなり、やがて氏族による勢力争いに巻き込まれていく。自由度の高いキャラクター育成システム、ヴァンパイアの生活を体験できるフリーローミング系の世界、奇抜で充実したミッション内容がこのゲームの特徴である。


エログロな世界観が魅力的。

プレイヤーキャラのステータスは自由に設定できる。クランは7つ用意されており、それぞれ得意分野が異なり、腕っ節の強いものや魔術が得意なものなどに分かれ、ゲームプレイに大きな影響を及ぼす。アトリビュート、スキルなどを合わせると25項目にも及び、どのスキルを重視していくかでプレイスタイルも異なってくる。なんでもかんでも戦闘でゴリ押してもいいし、あるいは交渉でなるべく争いを回避することも可能だ。組み合わせによるバリエーションは膨大でリプレイ性は高いといえる。

視点はFPS/TPSに切り替え可能。近接戦闘時は強制的にTPSとなる。アクションゲームとしての出来は安っぽい仕上がりで当たり判定や攻撃の感触もイマイチ。ガチンコのFPS/TPSに比べると厳しい。スキルによってダメージや命中率が変わるので、あくまでこれは主観/客観視点のRPGという前提でプレイするべきだろう。

キミはどんなキャラにする?

ヴァンパイアにとっての血はマナのようなもので、血を消費することで魔術が使える。魔術は一時的な能力上昇、攻撃、混乱、状態異常など、強力なものが多く、活路を切り開くキーアイテムとなっている。その代わり、血は有限であり、一度に乱発はできない。血が少なくなると暴走して、人間を見境なく襲ってしまう可能性がある。血を補給するには輸血パックを使うか、あるいは生物から吸血するしかない。

しかしながら、罪もない一般市民を見境なく吸血したり、ヴァンパイアであることが世間に知れ渡るのはご法度。この世界のヴァンパイアは人間社会に溶けこみ、共存を目指す、規律正しい種族だ。

血の安全な補給方法は下水道でネズミを捕まえたり、暗闇で浮浪者を襲ったり、売春婦を買うことだ。特に下水道は誰にもバレることはないので気軽に吸血できる。一度にネズミから吸血できる量は少ないが、ネズミ算のごとくたくさん沸くので数には困らない。

スペクトラルウルフ。狼を召喚し、敵を襲わせる。

ゲーム進行はフリーローミングタイプで、メインクエストをクリアしていくと移動できるエリアが増えていく。フリーローミングといってもGTA 3のような広大なフィールドが舞台ではなく、Deus Ex: Invisible Warのようなこじんまりとしたロケーションの集合体に近い。ゲームに登場する建物は入出可能なものが多く、広さよりも密度を重視している。ロケーションはたくさん用意されているものの、夜を題材にしたゲームなため、薄暗い場所しかなく、あまり代わり映えはしない。街では多数のNPCが存在するが、生活味に乏しい。プレイヤーが手を出さない限り、イベントなどを除いて、NPC同士が勝手に争ったりはしない。

街には必ずお店があって、ここでアイテムを売買できる。購入できるアイテムは武器、弾薬、服、本などだ。服は街に一種類しか置いておらず、着せ替え的な要素は乏しい。高価な服は防御力が上がるが、敏捷性が落ちるものもあるので状況に応じて着替えるのが無難だろう。本を読むとスキルが上昇するが、十分なリサーチスキルがないと読むことができない。リサーチスキルを上げて本を読むか、それともその経験値を他に回すか、悩むところだ。

中華街。ここには変化妖怪が住み着いているという。

クエストをクリアすると経験値を獲得し、それでステータスやスキルを上げることができる。単に敵を倒しても経験値は入らない。そのためミッションを隅々までクリアし、経験値も頂いてしまおうという気にさせる。敵を倒しても武器か、弾薬を落とすくらいであり、同じ武器は重複して所持することはできないため、戦闘はメリットが少ない。敵を倒して経験値が習得できてしまうと戦闘重視のプレイヤーが有利になってしまう為、このゲームではスニークや交渉重視のプレイヤーも公平になるようにデザインされている。また、スニークや交渉で解決した方が経験値が多く得られる場面もある。

誰にも見つからずに任務を遂行してほしいという依頼があったりするものの、見つかったとしても得られる経験値が減るだけで一応クリアできるようになっている。注意深く捜すと他にも解決方法が用意されているという場面は多く、これができなかったから失敗という一辺倒な展開は少ない。しかしながら、後半に行くほど強制戦闘の頻度は多くなり、たとえ交渉重視だとしても戦闘せざるを得ない局面はいくつかあるため、最低限の戦闘はこなせるように成長させるべきだろう。世の中には交渉で解決できない人種もいるのだ。

表情豊かなNPCたちとの会話が楽しい。

クエストには期限が設定されているものもあり、引き受けるタイミングが遅すぎて失敗ということもありうる。メインクエストの進める時は注意しなければならない。クエストはクエスト画面で管理され、ここには目的が簡潔に示されているのでログをきちんと読んでいれば迷うことはないだろう。

RPGゆえに文章量は多く、選択肢も複数用意されており、それによって先の展開が変化することも少なくない。交渉スキルが高いと選択肢が増え、脅しや説得をしやすくなる。獣のように暴力的に解決してもいいし、現代人らしく和解を目指すというのもアリだろう。人間として、そしてヴァンパイアとして、どう振舞うかはプレイヤーに委ねられているのだ。

それをより実感させてくれるのがヒューマニティーとマスカレードのパラメータだ。前者は人間としての倫理や道徳性、後者はヴァンパイアの掟を表し、倫理や掟に背いた行動をとるとパラメータが下がり、暴走しやすくなったり、度が過ぎた場合はゲームオーバーが待っている。一部のクエストではヒューマニティーとマスカレードのどちらかを天秤にかけなければならず、厳しい選択を迫られることになる。TRPGで一般的な善悪の価値観が、本作ではヒューマニティーとマスカレードで表しているのだ。善悪は見方や置かれている状況で変化するものであり、一概にNPCのいうことを聞いたから善、それに背いたから悪というのには賛同しにくい。しかし、Vampire:The Masqueradeでは人間社会とヴァンパイア社会の法に触れたものにはペナルティーを与えるという合理的な措置が取られている。このシステムはヴァンパイアの苦悩や葛藤、ひいては死活問題をうまく表現しており、ゲームプレイやテーマに直結していると言えよう。

主人公はヴァンパイアの宿命に翻弄されていく

文字通り、ヴァンパイアをロールプレイできるRPG。闇の眷属として裏社会を生き延びよ

ヴァンパイアを題材にしたゲームはLegacy of Kain、From Dusk Till Dawn、BloodRayneなどがあるが、ヴァンパイアの生活まで密着したゲームとなると意外に少ない。闇の眷属になりきってロールプレイしたい人やオーソドックスなファンタジーRPGに飽きている人にはうってつけのゲームと言えるのではないだろうか。ヴァンパイアの闇社会を題材にしたアングラな臭いはこのゲームの大きな特徴だ。

人間、ヴァンパイア、妖怪、人狼が主人公の前に立ちふさがる。

●Vampire: the Masquerade – Bloodlinesの日記 2011年1月9日~1月26日

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