Shellshock 2: Blood Trails (2009 - Rebellion)
未熟な技量で争いの愚かさと悲惨さを訴えかける
Shellshock 2: Blood Trailsは安易なやっつけ仕事のような出来の凡作だ。ストーリー、銃撃戦、グラフィック、AI、すべての要素が及第点を満たしておらず、全体が安っぽさに包まれている。唯一、独創的な部分と言えば、ベトナム戦争に感染者(ゾンビ)の要素を加えた点だろうか。鬱蒼としたジャングルや寂れた集落に謎のウイルスの感染者が蔓延り、いわゆるベトナム戦争モノのゲームとは違った展開が繰り広げられていく。ベトナムの大地でアジア人の感染者に襲われるのは新鮮味があり、また従来のゾンビゲームとは多少の差別化が図られている。
ゲーム中では感染者が人間を貪り食う姿、死に物狂いで襲ってくるベトコン、哀れな姿の死体がまざまざと描かれており、戦争の悲惨さを訴えかけると同時に狂気的な雰囲気も体験させる。本作はShellshock(砲弾ショック-神経症の一種)と名付けられているように、色々とショッキングな体験を内包したゲームである。
ゲームの完成度、ゴア表現。色んな意味でショッキング。 |
ゾンビゲーに重厚な物語なんて必要?
特殊部隊の隊員である主人公は機密プロジェクトWhiteknightと行方不明の弟を追って、ベトナム(及びカンボジア)の紛争地帯に赴く。しかし、現地にはベトコン以外にも敵が存在しており、戦いは三つ巴戦へと発展していく。
戦争に対する皮肉や人間の愚かさを描いている部分は少しだけあるものの、全体的に見るとあっさりとしていてメッセージ性もかなり薄い物語である。弟との繋がりも綿密に描かれているわけではなく、主人公に感情移入しにくい。また、ゲーム中のカットシーンも薄っぺらい内容で特別優れているとも言えない。
弟ビジョン「最低だな、おれって」 |
ベトコンとの銃撃戦はバリューゲームのように安っぽい。しかし、感染者との戦い、感染者とベトコンとの三つ巴戦は一味違ったサバイバルホラー的な駆け引きが楽しめる。ベトコンが感染者の襲撃を必死に迎撃している姿は見ていて楽しい。そして、感染者との戦いはホラーゲームのような演出がふんだんに用意されており、「ビクッ」と驚かされることが何度かあった。
感染者はゆっくりと近付いてくることもあれば、いきなり走り出して接近してくるなど、不規則な行動で翻弄してくる。後半は感染者が一度にたくさん登場し、一人でLeft 4 Deadをプレイしているような心細さを感じさせる場面がある。
感染者の血塗れた造形はどれもおぞましく、恐怖感を味わわせるのに貢献している。しかし、感染者のバリエーションが少ない為、同じ顔をした感染者が並んで登場することも珍しくない。それに感染者の動きもバラエティに乏しく、画一的である。最初こそ驚かされるものの、次第に行動が読めてきて恐怖感は薄れてしまう。
感染者はみんな良い表情しているんですよ。 |
不満点がいっぱい
本作にはクイックタイムイベント(キー押しの要求)がふんだんに盛り込まれているのだが、うざったらしいだけの上にしつこいほど繰り返される。クイックタイムイベントは敵に掴まれたイベントとブービートラップに掛かった際に発生するようになっており、前者は強制的にやらなければならず、後者は一部分だけ回避可能になっている。特にうざいのが敵に掴まれた際のクイックタイムイベントだ。とあるチャプターでは五回強要され、ほとほとウンザリさせられた。一回、二回なら焦らせる効果があるかもしれないが、いくらなんでも度が過ぎる。
そして、動作が安定しない。見た目のクオリティのわりに重く、私の環境では30fpsを割り込むことも多い。マウスの操作に変なスムージングと遅れが生じていることにより銃撃が定まらず、操作面でもイライラさせられる。また、弾薬を拾う為に毎回スペースキーを押さなければならないのも面倒だ。
クイックタイムイベントなんて、誰が求めているんだ。 |
B級ゾンビゲーとしてならアリかも
全体的に安っぽい雰囲気が漂っており、大作ゲームと肩を並べる出来ではない。B級映画的(チープ)なゾンビゲームを求めている人なら楽しめるのではないだろうか。ゴア表現は悪趣味なくらいグロテスクだ。
・これまでの日記
2009年4月5日 Shellshock 2: Blood Trails - 胸糞悪い
2009年4月5日 Shellshock 2: Blood Trails - 戦争神経症と死の欲動
2009年4月4日 Shellshock 2: Blood Trails - 振り上げた拳の所在
2009年4月5日 記