FPS UnKnown

Ghost Recon Advanced Warfighter 2 (2007-GRIN)

■マゾヒストウォーファイターよ、再び立ち上がれ

理不尽で無理難題の惨劇が再び繰り返される
Rainbow Sixとタクティカルシミュレーターの双璧をなすPCゲーム畑から生まれた至宝Ghost Recon(GR)。一度はコンシューマの悪い大人達に誘拐拉致されてしまったが、良識あるGRINがPCゲーマー向けに味付けを施し、Ghost Recon Advanced Warfighter(GRAW)としてソフィスティケートされた姿で再び我々の前に帰ってきたのは2006年5月の頃になる。

シビアで過酷で理不尽で不条理で強引で残酷で解せない作りは被虐嗜好の気がある我々マゾヒストゲーマー(MG)達を歓喜させ、MG予備軍の被虐嗜好の蕾を刺激し素質を開眼させるに至った。戦場の厳しさをありとあらゆる方法で叩き教え込む鬼軍曹のような試練に唇を噛締めながら立ち向かい、達成した時に訪れるカタルシスが性的快感の坩堝へと陥れた前作から約一年。Xbox360から少し遅れて、ようやく2007年7月にMG待望の続編GRAW2が登場となる。絶望に満ちたメキシコシティで悲劇は二度繰り返される。数え切れない程の理不尽と戦う準備は出来ましたか?

舞台は引き続きメキシコの市街地が中心。核使用を企てるテロリストを阻止するのがGhost部隊の目的となる。ヘリからいきなり放り出される前作と違って、今回はGRやR6のように舞台背景を説明するブリーフィングが用意されており、旧作に親しみを感じている人は懐かしさが込み上げるかもしれない。

ストーリー展開は「ミッチョー!ミッチョー!」と小うるさい将軍様の命令を忠実に従いながら核発射阻止するのが目的であり、R6:Vegasのような意外な展開があるわけではないので期待しない方がいい。ミッチェルの存在感はやや強化されており、ミッチェルファンにとっては嬉しいシーンが増えている。他部隊との会話シーンで思わずニヤリとする一言が聞けたり、ハリウッド的なアクション映画よろしくミッチェル単身で挑む姿に痺れる憧れる。思わずコチラも「ミッチョー!ミッチョー!」と叫んでしまう始末である。

●盛り上がりに欠ける演出

戦車は出オチばかりであまり燃えない
GRAWと言えば演出過多な展開が醍醐味かつ特徴であった。突然目の前で大使館が爆撃されたり、戦車がわんさか押し寄せてきたりと、とにかくド派手でプレイヤーの予想を大きく超える演出が挿入され、臨場感の高い映像美が驚かせてくれた。今作では更に進化!…と言いたいところだが、残念ながら地味に収まってしまっている。

内容としては前作とあまり変わりはないが見せ方や盛り上げ方に問題があり、迫力がいまいち伝わってこないのだ。戦車が登場するシーンにしても前作ではプレイヤーが篭城する建物の間近くまで接近し、その圧倒感や威圧感に慄いたものだが、今作では遠くから狙ってくるのみとなり、安全地帯から撃つZEUS(ロケットランチャー)や空爆のいい的になってしまっている。前作では戦車一台ヘリ一機に恐怖を覚えたものだが、今作では弱体化しているのもあって存在感が余計に薄く感じてしまう。

また雰囲気作りも前作に比べると弱い。ヘリからメキシコの街並みを見渡しながら出撃するシーンが無くなり、カットシーンだけで描写されるようになって味気ない。ヘリの移動シーンは冗長な部分が確かにあったが、立ち並ぶビル群の圧巻とした眺めを目に焼き付けてからリベリング降下を行う一連の流れはこれから戦場に赴く士気を高め、戦う意欲を高揚させてくれていたのは間違いなく、今作のような数秒の短いカットシーンとブリーフィングだけでは雰囲気の伝播が不十分で気分が乗ってこない。

荒地と化した市街地や荒涼とした山岳地帯が舞台となるが、マップは全体的に短くこじんまりとした作りになっており、あからさまに道が塞がれてルートが限られている所が随所に見られて、ハリボテのようで気分が萎えてくる。例えルートが限定的でもプレイヤーにそう感じさせないのが上手いレベルデザインなのは言わずもがなだが、本作では一見広そうに見えるが実は狭くてガッカリさせられる所が多く、マップの見せ方が下手である。

●難易度は低下したが新たな問題が浮上

隊員カメラから指揮。移動地点も表示されて分かり易くなった
ゲームの内容は前作を強襲。注意深く索敵しながらキャンパーを見つけて排除、突然現れるサディスティックな展開に対して臨機応変に対処、もしくは成すすべなくやられてしまう流れは共通である。今作からの変更点はクイックセーブの追加、攻撃態勢(アサルトorリコン)の選択、隊員視点からの指揮、敵の武器を取捨可能、敵の索敵能力の低下となる。

これらの変更点は前作で不満が挙がっていた点を解消している。特にクイックセーブの追加されたのは大きい。前作ではチェックポイントセーブのみで任意でセーブを行うことが出来ない癖に突然装甲車や敵が大量に現れて瞬殺。10分前に巻き戻しなんてザラで起こり、弥が上にも理不尽な展開に憤りと脱力やストレスを感じる部分があり、そのせいで難易度も非常に高くなってしまっていた。

今回はクイックセーブがあるお陰で無茶な展開が訪れようとも、きちんと要所要所でセーブを心掛ければ無駄な時間を費やすことなくトライ&エラーを行え、前作を投げてしまった人も根気さえあればなんとかクリア出来るようになっている。ただし、ロードしても体力回復しなくなっているので注意して欲しい。クイックセーブでどんな展開が起きようとも余裕があってつまんないという人はチェックポイントセーブだけで進めると前作同様の緊迫感とクリア時の達成感が味わえるだろう。Mな人には是非ノークイックセーブ主義をお薦めしたい。

前作はどうしても敵に受け身をとらざるを得ない場面が目立ったが、今回は敵の発見能力が低下し、リコン(スニーキング)モードが取れるようになったので隠密行動も可能になっている。しゃがみ移動を心掛ければほとんど先手が取れ、サプレッサーで暗殺すれば周りにも気付かれない。発見能力が低下しすぎたせいか、隣の死人に気付かず呆けている場面は流石にどうかと思うが、異なったアプローチで攻略出来るようになっているのは歓迎したい。

と言いたいところだが、このせいで仲間の存在が希薄になってしまっているのは否めない。仲間を細かく指揮しながら一緒に行動するよりも、プレイヤー一人で索敵しながら暗殺していった方が楽に進めてしまう場面が多いのだ。例えリコンモードにしようと、仲間が言う事を聞かずに余計な場所へ行ってしまい敵に気付かれる危険性を孕んでいるのでいつも心身が落ち着かず、どこかで待たせておいた方が安心できる。ダメージを食らわず進めるにはプレイヤーが一人でスニーキング行動を取るのが最善。難易度をいくら上げようとも敵の集弾率は高くなるが発見能力は向上しない為、この法則は覆りはしない。前作ではチェックポイントセーブの縛りと敵の異常な発見能力により、仲間を頼りにする場面が大いにあったが、今作ではただの足枷でほとんど出番がなく、ミッチェル一人で事足りてしまう。難易度が下がった弊害としてGRAWがウリにしている分隊機能のコンセプトが必要な場面は少なく、本末転倒に陥っているように思えてならない。前作に慣れたプレイヤーからすると手応えが弱く感じられるだろう。せめて難易度によって敵の反応を鋭くするべきだった。

蜂の巣へ飛び込む無茶。これもまた性的興奮への一歩
初めこそ理不尽さは減少しているが、後半になると凶悪な展開が頭角を現し始め、特に最後のミッションは操作する前に仲間が殺されてしまうという冗談のような悪夢が起こる。戦車やヘリの突然の強襲は理不尽と言えどもプレイヤーが対処できる余地が残されていて割り切ることが出来たが、ゲーム開始する前に虐殺されてしまっては対処のしようが無くこればかりは納得がいかない。4人揃うまで何度も何度も長いロードを繰り返すのも馬鹿馬鹿しい以外の何者でもない。

ただ歪なバランスで理不尽なのは前作から同様であり、継承しているに過ぎない。本作を購入する人もGRINのサディスティックな一面を見越してのことだと思われる。むしろ逆に突き詰めると、そういう過酷な逆境を望んでいる人達なのではないだろうか。しかも最後までプレイした人なら少なからずマゾヒストの素質があるとお見受けするのだがどうか。

少し目を閉じて考えて欲しい。罵倒や加虐されることに性的快感や陶酔を感じたりしないだろうか?苦痛を快楽へと転換したことはないだろうか。もし心当たりがあるなら、GRAWのそれも性的嗜好を盛り上げる為の演出の一つ、不条理な戦争の再現と割り切って、寛大なMの心で倒錯できるはずである。そうすれば今日から君もれっきとしたマゾヒストウォーファイターの一員。絶望的な苦境を乗り越えるからこそやりがいは百万倍、達成感は一億倍で帰ってくるのは保証しよう。

不条理な展開と逆境の連続が次々と強襲するマゾヒストのためのタクティカルシューター。
それがGhost Recon Advanced Warfighterシリーズなのだ!

武器輸送車MULE。登場する場所は少なくあまり活用できない
本編でも野外戦がもっと欲しかった
夜間ミッションはスニーキングし放題!タダですタダ
今回は銃座を扱えるようになった。蜂の巣にしてしまえ
タクティカルマップはズーム出来なくなり使いにくくなった
C・Q・B!C・Q・B!



■拡張パックGRAW1.5。前作が好きなら買い、それ以外は知らん

クイックセーブや敵の弱体化によって難易度は下がっているが、GRAWのサディスティックで理不尽に思える展開はしっかり継承されている。全体的にマップが小さくなっているのは残念ではあるが、たった一年の開発期間を考慮すれば十分な仕事振りである。本編のマップをCOOP出来るようになっており、前作同様にマルチが楽しそうな雰囲気。前作が好きなら買っても損はしないだろう。初めてプレイしようという人には前作よりもこちらをオススメするが、マゾヒスト仕様なので覚悟すること。

2007年7月25日 記

□Link
Ghost Recon.com
Ghost Recon Files

©2007 FPS UnKnown