FPS UnKnown

BlackSite: Area 51(2007-Midway Studios)

■単純なドンパチゲームに戦う意味を問いかける必要は

エイリアンと死闘を繰り広げる?BlackSite:Area51
アメリカ、ネバダ州にある軍事施設の通称をサブタイトルに付けている通り、シナリオの根幹を成しているのはアメリカ政府の陰謀である。ただし、“巨大な頭部で目が細い二足歩行の生き物”の野望を打ち砕くようなお約束の展開はない。巨大なエイリアンや改造人間のようなギミックが登場するものの、焦点が当てられているのは戦争に巻き込まれた人間。これがこのゲームの利点でもあり、欠点にもなっている。

アメリカ政府がどうの…、お偉いさん方がどうの…、度々ゲーム中にこういった問いかけが見られる。時には長ったらしい会話シーンを設け、現実で発生している政治的問題をゲーム的にデフォルメしながら登場させているシーンも多い。それによって敵の存在や襲ってくる意味があることを伝え、それでもなお自分達が戦わなければならない必要性や疑問を改めて考えさせるのである。なんでまともに状況も知らされないまま戦火に放り込まれて、クソッタレどもの相手をしなければならないんだと。

単純に現れた敵をただ倒すだけのものが多い中、こういった試みをしてくるゲームは少ない。このゲームではイデオロギーを押し付けるのではなく、現代社会をシニカルに皮肉りながら、それに対して疑問を投げかけている。しかし、そのようなギミックははたしてFPSに必要だろうか。実際プレイヤーに考える隙を与えてしまった結果、ゲーム世界との剥離感を生んでしまっており、ゲームのテーマとしてちぐはぐな印象を与える。何も考えずに敵を倒してバンザーイ!の方がよほど気持ちが良く没入も出来たはずだ。

また、政治的な部分に固執したせいで、話の膨らませ方にも枷を与えてしまっているように思えてならない。同じMidwayから2005年にリリースされたArea 51の方がエンターテイメント性が高く、Area51を題材にしたゲームとしては面白みがあった。政府の陰謀から、地球外生命体の侵略へと発展するシナリオ展開はベタながらも娯楽作品として昇華されていたのだが、残念ながらBlackSiteではそのような盛り上がりのある展開に欠けてしまっている。

皆から信頼されるヒーローではなく、一介の兵士として戦場に投入された主人公は何が起こっているのかも分からないままゲームが進み、最後は弱々しいラスボスを倒して終わりというあっさりとしたもの。“巨大な頭部で目が細い二足歩行の生き物”が「ワレワレは このワクセイを シンリャクする!」というような展開の方がゲームとして盛り上がったに違いない。本作は“戦争に巻き込まれた人間達”を描くのに夢中になるあまり、娯楽としての楽しみが損なわれている。登場人物をしっかり描写するのは大切なことだが、それと同時に起伏のあるシナリオ展開も用意しておかなければならないのだ。

●エイリアン戦はいまいちだが、銃撃戦は及第点を満たす

大怪獣と戦えるのがこのゲームの魅力だ
仲間と共にする場面が多く、部隊行動を取れるようになっている。こちらが仲間に命令出来るのは「あそこへ行け」、「あいつを攻撃しろ」、「機銃を使え」、「ドアを開けろ」等。命令をしない場合は勝手に付いてくるようになっている。しかし、部隊を指揮するゲームとしてうまく機能しているのかと言えば、頭を捻らざるを得ない。

主人公が強すぎて、仲間を頼りにしなくても進んでいけるようになっているバランスと命令を下しても仲間が行動するのが遅いのが原因であろう。仲間に命令を下すよりも自分でガンガン突き進んだ方が手っ取り早い場面がほとんどで、命令したとしてももたもたしていることが目立つ。仲間の移動速度は遅く、プレイヤーが敵を倒した頃にようやく到着というような場面も何度かあった有様だ。

あくまで機能が用意されているだけであり、部隊行動の雰囲気を味わわせる要素に過ぎない。仲間は倒れても戦闘不能に陥るだけで少し経てば復活するのが救いだ。仲間が死んだらゲームオーバーというような理不尽はこのゲームにはない。基本は主人公がアサルトプレイでガンガン進みながら、敵を薙ぎ倒していくゲーム展開である。

敵となるのはエイリアンと改造された人間。エイリアンは圧倒的な存在感を放つ大型のものから、小型のものまで登場するが、どれも動きが画一的で駆け引きは面白みに欠ける。近接攻撃を仕掛けてきたり、爆発するエイリアンは一直線にこちらに向かってくるだけで、近付かれる前に倒せてしまうのだ。攻撃パターンのバラエティに乏しいため、行動は容易に読める。ゆえに戦闘は盛り上がりに欠け、脅威にも感じない。大型のエイリアンは存在感こそあるものの、こちらも動作が単一的。しかも、イベント的な登場が主で戦えるシーンが少ない。

一方、改造された人間や生態兵器との銃撃戦は白熱する。敵のパスワークはしっかりカバーポイントを取りながら、こちらへと向かってくるなどなかなかのもので、エイリアン戦よりも駆け引き性が高い。エイリアンよりも、改造人間との戦いの方が楽しめるに違いない。銃を使ってくる敵の場合、こちらもカバーを取りつつ戦っていかないと苦しい場面もあるが、同じ場所でカバーし続けていると壁やオブジェクトが破壊されて、一気にピンチに追い込まれる場合もある。全てのオブジェクトが破壊可能なわけではなく、限定的ではあるが、こういった要素は銃撃戦を盛り上げるのにうまく貢献している。もちろん、こちらが敵が隠れている柱を破壊して、追い込むことも可能だ。

銃撃戦に関しては褒められる
武器はFPSとして基本的なものが用意されているが、一部武器を除いて弾薬が不足しており、実質的に弾薬に困らずに使っていけるのはアサルトライフルとショットガンくらいなものである。スナイパーライフルやロケットランチャーの弾薬は得られる場所が少なく、プラズマランチャーも後半にしか登場しないため、武器のバラエティが乏しく感じられてしまう。また、武器を2つしか所持しないため、弾薬を温存しておいてとっておきの場面で使うということが出来なくなっており、FPSとしての楽しみを狭めている。

アサルトライフルやハンドガンは実銃タイプで、銃撃感がそれなりに感じられ、シューティングの快楽性も得られる。しかし、ショットガンのようなSF武器は撃っている感触やヒット感が薄い。弾の軌跡が分からず、どこに飛んで、どこに当たったのか分からない上、サウンドも軽すぎる。弾を溜めて一気に放出するギミックをショットガンに付属するため、実銃ではなく敢えてSF武器にしたのだと思うが、これは失敗だっただろう。

プラズマランチャーもそうだが、SF武器のデザインはどれもちゃちで、トイザらスにでも売っているかのような安っぽさが漂う。ショットガンには弾を溜める機能などいらないから、実銃を採用するべきだろう。はじめ実銃ベースのアサルトライフル(多分M4)を握っていた時は、てっきり鉛弾でエイリアンやら改造人間といったSFの敵と戦っていくものだと思い、そこに意外性を感じられたのだが。エイリアンのテクノロジーということなら、もっと突飛なものを用意して欲しいものである。

●有り余る冗長さ加減。乗り物、会話シーン、乗り物…

アクションシューターとしての基本的な部分は良く出来ている部類に入るだろう。ただ、問題なのは銃撃戦が少ない点である。5時間程度で終わるボリュームなのにも関わらず、このゲームは乗り物に乗って移動するシーンがとにかく多く、FPSとして満足にプレイ出来ないのだ。 機銃を操作するシーンが2回、車に乗って移動するシーンが3回(乗らなくても進めるが、移動だけのところもあるので乗った方がいい)と用意されており、ミッションの半分以上を占めているのではないかと思うほどの冗長さ加減。

もっと銃撃戦を楽しみたいという願いとは裏腹に、下らないビークルシーンばかりが登場する。これはFPSであり、乗り物ゲームではないのだから自重して欲しいものだ。少しだけ乗り物で移動するシーンが用意されているのならば、ゲームの緩急を付ける働きとして機能すると思うがそればかりでは苦痛にしかならない。

冗長な乗り物シーン。乗り物、乗り物…こんなの誰が望んでいるんだ
ヴァイラスのような機械仕掛けの敵も登場。下半身を壊すと、上半身が這って襲ってくる
迫力のある巨大エイリアン。特撮大怪獣好きにはたまらないシチュエーション
近接タイプのエイリアンは動きが単調
トイザらスに\1980で売っているショットガン



■いかんせんボリューム不足

FPSとしての基本的な部分は割合しっかり出来ているのだが、クリアまで5時間程度と短く、おまけに欲しくもない乗り物シーンがたくさん用意されている。不要な部分を切り捨てて、改造人間との銃撃戦を中心としたゲーム展開ならばよかったのだが、これでは遊び足りない。ボリュームから考えて、少し値段が下がってきてから購入するのが妥当だろう。

2007年12月22日 記

©2007 FPS UnKnown