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Terrorist Takedown 2(2008-City Interactive)
ネイビーシールズ出動せよ
FEARだけどFEARじゃない

City Interactiveの看板シリーズTerrorist Takedownの最新作。今作でシリーズ5作目なのにも拘わらず、タイトルに2と付いている通り、心機一転という意味合いもあるのだろう。

今回から新たにエンジンはJupiter Extended(FEAR、Condemnedが使用)を採用している。エンジンを採用する際にMonolith(FEARの開発元)及びTouchdown Entertainment(Monolithから分離したエンジン開発部門)とはどういう経緯があったのか、本作ではFEARのリソースが大々的に流用されており、ゲームプレイ自体もFEARを彷彿とさせる面がいくつも見受けられる。それによりFPSとしてレベルアップしている部分は確かにあるものの、悪く言えばこれまでのTerrorist Takedownシリーズに比べて個性が薄いのは否定できない。

舞台は中東となり、敵はもちろんテロリスト。武器は現代兵器オンリーでSF的な要素は登場しない。スローモなどの特殊能力はなく、ライフは自動回復方式が採られている。プレイフィール自体は上記にも述べた様にFEARのそれに近く、外見だけを入れ替えた印象。エフェクトやサウンドにしてもそうだし、AIのルーチンやアニメーションなどはFEARそのままといった感じで敵が多彩な反応を見せてくれる。

ただ、素材がFEARと同じだったとしても、FEAR並に戦闘が楽しめない。その原因はレベルデザインとバランス加減にある。まず、レベルデザイン。これは設計面、アート面の両方に問題を抱えているが、先に関係のある設計面から話しておこう。

例えばFEARのレベルデザインは室内中心だったが、AIが普通に行き来できるくらいの部屋と空間、それに応じた適正な敵の数が用意され、AIが様々な行動を取ってこちらを翻弄しながら戦うという具合だった。本作ではそうはいかず、一方通行で狭い空間が多い為に行動が制限されてしまっており、AIのポテンシャルを殺すハメになってしまっている。また、用意された空間に対して敵の配置も多すぎて、現れた瞬間に薙ぎ倒すような展開が中心。FEARのような空間を活かした戦術性が必要とされる場面が少ない。

ロケーションは美しい場所もあるんだけれど・・・
自動回復方式を採用した弊害のせいでもあるだろう。メディパックで回復していくライフ管理の場合、ダメージを負うことはリスクにそのまま繋がる。ライフが有限であれば、無闇にダメージを食らい続けているとジリ損を味わうだけだ。だからこそ、おのずとダメージを食らわないような行動が必要となり、FEARのような空間を活かした戦術性が必要となる。

しかし、自動回復方式の場合は全くの別だ。自動回復方式では許容以上を喰らわないようにしておけばゲームオーバーにはならず、ライフは無限に存在すると言っていい。「これくらいまでならダメージを食らっても大丈夫だろう」という、さじ加減が分かっていると少しくらいの無茶でぞんざいなプレイでも許されてしまう。それ故に慎重な行動を取る必要性がない。

この甘過ぎるバランスを考慮して、登場する敵の数を多めにしているのだろう。しかし、レベルデザインの設計が不味過ぎたせいでAIはポテンシャルが発揮できず、敵の賢さや強さを実感しながら戦う場面はほとんど存在しない結果になっている。

上記では自動回復方式を悪としているが誤解なきよう。レベルデザインやバランス次第では自動回復方式が合っているゲームだって存在する。難易度バランスに問題を抱えるバリューゲームやB級ゲームの場合は自動回復方式を採用した方が、詰むリスクを回避できて無難な選択と言えよう。ただし、本作の味付けは相応しい結果とは言い難かった。

そして、レベルデザインのアート面について。これはエンジンになんら手を加えていない為に悪い部分が顕著に現れている。例えばFEARを思い出して欲しい。暗闇と室内の描写が長けており、遠景や屋外には向いていなかったのをご存知だろう。本作ではこのようなFEARのエンジン設定そのままを引き継いでいるにも拘わらず、イレギュラーなロケーションを何故だか選んでいる。

一見すると中東の街並の雰囲気は良い感じなのだが、真昼間のロケーションを表現するには影の描写やライティングが明らかに適しておらず、ちぐはぐな描写が散見。ホラーテイストな雰囲気はないはずなのに何故かホラー風味が漂ったり、明らかに目視で生活出来ないような暗闇でテロリストが生活していたりと、最近のゲームにしては考証があまりにも不自然なところが多すぎて、興醒めせざるを得ない。屋外のロケーションではブラシが素人感丸出しなど、バリューゲーの雰囲気はこういうところからも臭わせてくる。

火花が綺麗だ(FEARそのままだけれど)
入り組んだ地形がもっと欲しかった
サイトを覗くと集弾性が高まる
ありがちだけど、こういう展開も
機銃を使える場所はあくまでイベント的
仲間と共闘する場所は皆無

あと一歩。一般価格のレベルに近付いたが、バリューの臭いは未だに残る

FEARのリソースを使用している為にクオリティは底上げされ、だいぶん遊べるFPSに変わった。ただし、FEARそのまま過ぎてオリジナリティが薄く、レベルデザインは不慣れなところが窺える。正味プレイ時間は3時間弱だったが、もう嫌というほど存分に戦闘を味わえた。バリューゲーとして買うのなら、そこそこ楽しめる一品。あくまでその範疇の認識で。

2008年6月2日 記
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