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●Medal of Honor:Airborne(2007-Electronic Arts)

■ルートを探して、攻略していくのが楽しい堅実なアクションFPS

本作は映画的な演出とアクション性の高いゲーム性で人気を博したメダルオブオナーシリーズの最新作。2作目のパシフィックアサルト以降、PCでは約3年ぶりのリリースとなる。待ち望んだ人も多いのではないだろうか。メダルオブオナーシリーズの特徴と言えば、映画さながらのドラマ性や戦場の雰囲気を味わえる点だろう。思わずゲーム世界へと引き込まれてしまうような臨場感の高さが最大のウリとなっている。しかし、それを実現するためにゲーム進行がぎちぎちにコントロールされており、ここが「自由度が低い」などと批判される点にもなっていた。今作ではそれを意識してか、従来のシリーズが行ってきたゲーム展開から脱却を目指している。

サブタイトルに「エアボーン」と付いているように、今回は空挺部隊が主役だ。主人公もその一員となり、戦場へ赴くことになる。だが、その赴き方が普通のFPSとは一風変わっており、ここが本作の特徴と言えるだろう。

ミッションスタート時は輸送機に乗っているシーンから始まり、寸劇が終わると降下シーンへと移る。プレイヤーはパラシュートに揺られ、空中から戦場を眺めながら降下していく。この降下時に自由に操作可能なのである。どこにプレイヤーの降りようとしても自由なのだ。降下できる範囲に、いわゆる「見えない壁」は存在しない。マップには目標が数箇所あり、これらは必ず達成しなければならないが、どれからクリアしていくかはプレイヤーに委ねられている。降下地点をどこにするかによって、目標の難易度も大きく変わってくるのでスタートが重要。乱戦必至で目標付近に降下し、速攻で目標一つクリアを目指してもいいし、仲間と集まって攻めていくのでもいい。文字通り、自由な降下が許されている。

この降下システムを実現しているのが、制限の少ないレベルデザインだ。細部まできっちり練られており、自由な行動を許容する立体的な設計になっている。屋根に降下したとしても、梯子が用意されており、昇り降りが可能なのは当たり前。屋根伝いに飛び職のごとく進行できたりと高低差も活かされ、バリエーションの広い銃撃戦が展開できる。また、正面から進むのが難しければ、大抵抜け道があったりと抜かりがない。探せば探すほど様々な攻略方法が用意されている。こうしたルートを見つけていくのが楽しく、マップの攻略しがいがあり、思惑通りに敵の裏をかければ快感である。まさにプロの仕事と言うべき一級美術品のごとき複雑なレベルデザインと降下システムによって、今までに批判されてきた「自由度が低い」が払拭されている。

クリアしてない目標地点では、必ず敵と味方がいざこざを起こしており、集団戦の雰囲気が味わえるようになっている。基本的にはプレイヤーが突破口を開かなければならず、ここが従兄弟のコールオブデューティーシリーズとは異なる点である。NPC達はあくまで雰囲気を演出しているに過ぎず、ゲームに決着を付けるのはスーパーマンの自分である。NPCが勝手に敵を殲滅するようなことは本作では有り得ない。それゆえゲームらしい達成感がしっかり得られるようになっている。

しかし、攻められる範囲が豊富にあるためか、時々だが敵のAIが対応してこないことがある。物思いに耽っているかのごとく、そっぽを向いてこちらに気付かない。通常時はきちんとカバーも取ったり、うまく立ち回っているだけに惜しい箇所である。また、集団戦を演出するためにリスポーンを使って補っている場所があり、目の前に敵が現れたりするのは萎える点だ。

多少の問題はあるが、自由度を感じさせつつ、従来のような戦場の雰囲気も残しており、概ねうまく折り合いを付けていると言えるだろう。無い物ねだりをすると、演出にやや物足りなさが否めない。これは本作のゲーム進行と相反する要求なので強くは求めてはいけないのだろうが。

問題なのはシナリオだ。本来ならここでなりを潜めた大仰な演出のカバーをしておくべきと思うのだが、残念ながらあってないようなもので重要視されていない。一応主人公が用意されているが、ほとんど意味を成しておらず、登場する人間たちが全く描けていない。戦場は人間がいてこそ成り立ち、登場人物に親近感や共感を生むことで没入感に繋がる。人間を描けていなければ臨場感も損なわれてしまうし、せっかくの世界も薄っぺらく映ってしまう。しかし、本作では状況説明ばかりに終始し、物語性が希薄。おまけに挿入されるカットシーンがことごとく安っぽい。2007年はシナリオに優れた作品が多かったために、本作の不出来さが余計に目立っている。

プレイヤーを積極的に戦わせるシステムとして、グレードアップの要素がある。これは敵をヘッドショットしたり、倒した数を稼ぐと、その銃の性能が上昇するシステム。グレードアップすると集弾性の上昇、リロード速度の上昇、武器によってはグレネードランチャー追加などがあり、殺戮するのが楽しい。積極的に自分から戦おうという意思を湧かせる。本作の銃のサウンドはどれも本物っぽい臨場感があり、銃撃するのを心地良くさせるのに役立っている。また、銃撃が気持ち良くなる要素のひとつに、敵のやられアニメーションがある。敵は死ぬと、突然、力が抜けたように「こてーん」とズッコけるのだが、これが倒したという実感を強めている。

ライフはHaloのセグメント形式を採用しており、これは丁度良い塩梅だ。アサルトプレイもできるが、あんまり一気にやりすぎると一瞬で死んでしまうバランス加減が絶妙である。本作ではライフのマネージメントが重要となっており、気を配らなければならない。それゆえプレイにも自然と身が入る。ヘルスパックは難所にうまく配置されていることも多く、ここからもレベルデザインのバランス設計の巧みさが窺える。

リーンの仕様が特殊なのだが、これがうまく操作にハマっている。従来ではQキーで左リーン、Eキーで右リーンが普通だ。ところが本作では右クリック(アイアンサイト、スコープ)中に、WASキーつまり上左右を押すことでリーンが可能になっている。ADキーはもちろん左右。Wキーを押すと背伸び状態となり、少しだけ上を覗けるというわけだ。これによって操作の混雑さがなくなるばかりか、操作バリエーションも増えている。

降下5秒前。
リーンの操作は独特だがやりやすい
半端なく強いナチス兵。
屋根から進む。本作的にはアリだ。
ここのマップは構造がとても立体的。
銃がグレードアップすると一瞬スローモに。


○複雑に作りこまれたマップで銃撃戦を楽しみたい人に

さほど目新しさはないが、アクションFPSとして手堅い作り。複数のルートを持つレベルデザインが様々な攻略方法を内包しており、何度も遊べる深みを持っている。アクションFPSが好きならやっておいて損はないタイトルだ。古き良き純然たるFPSの楽しさがここにはある。

2008年3月19日 記

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