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長き歳月を経て復活したFallout最新作


 海の向こうでは思い出に残るゲームとして挙げられることの多いFallout。日本では残念ながら翻訳されなかったこともあり、AD&D(Baldur's Gate、Icewind Dale)シリーズに比べると知名度は低いが、一部でカルト的な人気を博した作品である。今作Fallout 3はそのFalloutシリーズの最新作だ。旧作のFallout 1とFallout 2はBlack Isle Studiosが開発していたが既に閉鎖しており、今作は版権を買い取ったBethesda Softworksが手掛けている。

 旧作と同じく、ゲームの舞台はアメリカが冷戦時代に危惧していた第三次世界大戦勃発によって崩壊した未来となる。すなわち我々がいま生きている現代社会が考慮されていない、50~60年代のアメリカ人の未来感が反映されたIf…の世界だ。ゲーム中にはその未来感を象徴とするキーワードが散りばめられている。たとえばラジオから聞こえてくるオールディーズ世代の流行音楽、フォードの原子力自動車、モダンなポップアート、炭酸飲料水の広告はその最もたるものだろう。しかし、その輝かしい栄光は第三次世界大戦の影響により朽ち果て、なんとも皮肉めいた哀愁を誘う姿で描かれており、本作独特の荒廃した世界の演出に繋がっている。

父を追って三千里

 核戦争によって荒廃した世界。人々は核シェルターVaultに潜み、核の影響を恐れながら生活を始める。主人公もまたVaultの中で育ち、一生を終えるのだと思っていた。しかし、ある日、父親がVaultから飛び出したことで運命が動き出す。主人公は父親の後を追い、生まれて初めて外の世界へ踏み出した。

 ゲームが始めると出産、赤子、少年、青年のシーンが挿入され、主人公の成長の過程が描かれていると同時にゲームのチュートリアルになっている。個人的に印象的だったのは少年時代の誕生日パーティーだ。Vaultの住人達に祝福されるところで、ふと昔の自分のことを思い出し、懐かしさと切ない気持ちに包まれた。Bethesdaにしてはずいぶん気の利いた導入部だ。この一連のハートウォーミングな演出ですんなりとゲーム世界へと没入させられてしまった。

 Fallout 1はウォーターチップ探し、Fallout 2はガーデンオブエデンクリエーションキット探し、Fallout 3は父親探しが目的となる。今作では前2作と異なり、主人公と両親の関係が物語の根幹に関わっていて、幅広い層が受け入れやすいテーマに設定されていると言えるだろう。

 Falloutシリーズのテーマである「何かを救うためには何かを犠牲にしなければならない-対価とその代償」は今作でも色濃く残っており、様々なところで迫られる決断に悩まされることだろう。Aを助けるためにはBを倒さないといけなかったり、Aを入手するためにはBを破壊しなければならないといった、円満に解決できない問題には苦渋を味わわされる。まるで他人の人生や命の選択までしたようなリアルな気分にさせられ、ゲームではありながら後味の悪さを楽しませる作りがとてもニクイ。

  ただし、どのクエストも必ず何かを犠牲にしなければならないかと言えば決してそうではなく、答えは2つ、3つと用意されているので丸く収めることも可能で選択肢の幅は広い。善人は善人らしく、悪人は悪人らしいプレイを許容する作りになっていて、1つに縛られることのないロールプレイが堪能できる。Falloutに正しい答えはない。自分が悩んで決断した選択こそが正解だ。 自分の思った通りに遊ぶのが本作を楽しむコツである。

今作では家族との繋がりが重視されている。

奥の深いキャラメイク

 今作でもSPECIAL、Skill、Perkは受け継いでいて、ここは旧作とかなり近い。まずSPECIALとはStrength、Perception、Endurance、Charisma、Intelligence、Agility、Luckの頭文字の略で、読んで字の如くいわゆる主人公のステータスが表されていいる。これが高かったり低かったりすると、頭は良いが非力だったり、おバカだけれど力は強いキャラになるわけだ。

  このSPECIALはゲーム冒頭でプレイヤーが数値を振り分けることになり、以降はD&Dのように基本的には変化しない。変化があるとすれば一部のレアアイテムでの上昇と一時的に引き上げる効果のあるアイテムの使用に限られ、日本産RPGのようなレベルアップによるステータス上昇は見込めないため、最初の振り分けが重要となっているのは旧作と同じである。

 旧作ではIntelligenceが低いとまともに会話すらできないというリアルな問題が発生したが、今作では多少低くても会話自体は成立するようになっている。しかし、Intelligenceが高いと選択肢に知的な会話で解決するという選択が増え、交渉がスムーズに運び易いというメリットは今作でも存在する。これはIntelligenceだけでなく、他のステータスにも言えることでStrengthが高ければ力を誇示した交渉、Charismaが高ければ相手を魅了させる交渉が選べることがある。

 Skillは武器の扱い、修理技能、回復能力、鍵開け、ハッキング、交渉、スニークなどが用意されており、これは主に能力を表している。Skillはレベルアップ時に一定数のポイント入手し、その度に振り分けていく方式だ。旧作とほとんど同じスキルが採用されているが、今作ではどのスキルも活かされていると感じた。たとえば鍵開け、修理技能、ハッキングは旧作ではほとんど使用することのない捨てスキルと化しており、別にポイントを振る必要はなかった。

  しかし、今作では鍵の掛かった箱やハッキングしないとアクセスできないコンピュータが増えているし、今回から武器に耐久度が追加されたことで修理技能も必要度は高い。どのスキルもまんべんなく重要性が高まり、何にポイントを振ろうかと悩まさせてくれる。

 Perkは特殊能力と表現すれば分かり易いだろうか。荷物重量を上昇させたり、ダメージを数%軽減させたり、歩く音を静かにできるなど、あれば便利な能力が数多く用意されている。スナイパーやガンスリンガーなど専門武器特化のものもあり、キャラクターの個性を付けるのに一役買っているといえるだろう。また、中には実用的なのか定かでないネタっぽいPerkもある。Perkはレベルアップ時に1つずつ得られ、レベルアップが待ち遠しくて仕方ない。

 以上のステータスや能力により、キャラメイクの幅が広いのがFalloutシリーズの特徴といえるだろう。このお陰で今度はこんなキャラ、次はこんなキャラで…2、3度遊ぼうという気にさせる。特に最強を求めるようなゲームではないし、自分の好きなように育て、自分のスタイルを確立するのが一番楽しめるプレイ方法だと思う。

どんなキャラにしようか。キャラメイクが楽しい。

寄り道に夢中になって

 世界はOblivion譲りの広大さを誇り、遥か遠くに見える光景へ実際に到達できて感動を覚える。こういったフリーローミング系のゲームではマップが広くても中身はスカスカでコピー&ペーストが多いということがよくあるが、本作はそのような貧しいゲームとは一線を画した豊かさに溢れている。マップのあちらこちらに様々なロケーションと関係するサブクエストが用意されており、その数や尋常ではない豊富さ。行く先々で新たな土地を発見し、飽きさせない。

  私の場合はサブクエストを半分程度こなした上でクリアするまでに40時間ほどを要した。隅々まで楽しもうとすると軽く50時間は越えると思われる。とにかくボリュームとその多様性において非常に優れているゲームだ。

 Oblivionよりも屋外でNPCと出会う確率が高く、これが旅を楽しくさせる要素の1つといえるだろう。行商と買い物をしたり、野盗と戦っている人に加勢したり、また反対に助けてもらったりといったことが頻繁に発生する。このような筋書きに依存しない偶然の出会いが世界に息吹と現実味を与えているのだと感じさせられた。この世界では主人公だけでなく、NPC達もちゃんと生活をしているのだ。

 クエストの目的はログに分かり易く記録され、目的地はOblivionのようにマーカーで表示されるので行き先で迷うことはないだろう。今作はマーカー通りに愚直に従っていればいいのだ。しかしながら、これによって手掛かりを頼りに自分で答えを探していく旧作のような達成感が薄れているようにも感じた。かといって便利さを損ねると一部ユーザーからは反感を買う可能性もあるだろうし、ここの兼ね合いは難しい問題か。

目の前に広がる光景はすべて到達できる。どこに行こうとプレイヤーの自由だ。

意外に楽しいV.A.T.Sとリアルタイム戦闘

  旧作は戦闘に入るとターン性へと変化するシステムだったが、今作ではほぼリアルタイムなシステムに切り替わっている。プレイフィールは一般的なFPS/TPSの感覚でプレイが可能だ。ただし、銃弾の集弾率はスキル能力に依存しており、スキル値が低ければ当然、弾は気まぐれに飛んでいく。スキル値の低い序盤では近距離でもなかなか思ったように命中できず、普通のFPSのようにプレイしようとするとイライラとすることも起こり得る。これはスキル値を高めれば改善し、大体60を超えた当たりからまともに弾が飛んでいく。それまではなるべく近距離まで近付いて泥臭い試合をすることになるだろう。

  シューティングが苦手な人向けとしてV.A.T.Sというシステムが用意されている。これは旧作でいうところの精密射撃(仕様はちょっと違う)で自動的にコンピュータが射撃を行ってくれるというもの。V.A.T.Sは敵が近くに居ればいつでも発動可能で、発動させると時間が一時停止状態になり、敵キャラクターへと画面がフォーカスされる。敵キャラクターの各部位には命中率が表示され、その確率で命中するようになっている。部位を選択して実行すれば射撃シーンへと切り替わり、自動的に射撃を行う。この射撃時はスローモーションで再生され、命中するかしていないかが分かり易く確認できる。攻撃が上手く命中し、スローモーションで敵が倒れていく姿は痛快である。

 また、V.A.T.S.は出会い頭の敵に対処する時に大きく役立つ。いきなり敵とバッタリ出くわすとどうしても慌てふためいてしまうが、そんな時にV.A.T.Sを使えば効率的な銃撃を行え、弾の消費が抑えられる。また、複数相手と戦う時には、敵Aの銃を叩き落し、敵Bの足を撃つといった戦術的な行動を瞬時に行えるメリットがある。

  ただし、V.A.T.Sは一回に攻撃を行える回数(AP-Action Point)が決まっているため、都合のいいように連続して発動というわけにはいかない。APは少し時間が経過すると回復するのでそれまではリアルタイムで戦うか、隠れる必要がある。ゆえに攻撃に失敗した時の展開を見通した計画性はいつも必要で、ここで各々の戦術性が問われることになるだろう。

部位によって敵に与える影響が異なる。

バランスと問題点

  旧作では銃弾に重量が設定されていたが、今作ではどの銃弾も重量が0に設定されており、無限に持ち運べてしまう。このせいでせっかくの重量制限の意味が薄くなり、武器は数個持つと荷物が一杯になる癖に銃弾は弾薬庫のごとく保存できるという、おかしなことが起こる。まるで日本のRPGのようだ。旧作では銃弾を何発持って…と、しっかりマネージメントする必要があったが、今作では何発持っていてもOKで制約が緩すぎる。

  これは回復アイテムにもいえることでスティムパックやRad-Xは重量が0のため、銃弾と同じく無限に持ち運びが可能だ。それにより回復アイテムを何個持って…というマネージメントが必要なくなり、あるだけ全部持った特攻プレイを可能にしてしまっている。

 また、回復アイテムの使用にも問題があり、戦闘中であろうとなかろうといつでもインベントリを開いて回復可能なのも制約に緩さを感じる。ダメージを食らったら、すぐに画面を開いて回復すれば死ぬことはなく、つまらないゴリ押し戦法さえも許容してしまっている。せめて戦闘中くらいは使用制限を設けるべきではなかったかと思う。

 レベルキャップは20に設定されているが、メインクエストをこなすだけでも上限近くまで到達する。サブクエストが豊富に用意されているゲームだけに早い内からレベルが頭打ちしやすいのは残念な点だ。また、バランスが緩めに設定されているため、後半は強敵が不在になってしまい手応えに欠けるのも問題だろう。幸いながらゲーム中に難易度の変更ができるようになっているので「ぬるいかな」と感じた時点で難易度を調整した方がよいと感じた。ノーマル難易度では序盤こそ苦しいものの後半はインフレする傾向にあるため、HardやVery Hardでなければ釣り合いがとれていない。



真摯にゲームを愛する者達がゲームファンに向けた渾身の一作

 Bethesda Softworksが開発すると知って、旧作をプレイした者としては複雑な思いを抱いていたが、そんな懸念を吹き飛ばしてしまうパワーをFallout 3は持っていた。金目当ての続編ものの出来にガッカリさせられる昨今、本作はシリーズのモチーフを手堅く抑えつつ、そこに最新ゲームとしてのアレンジを加えた質の高いRPGに仕上がっている。

 BethesdaのプロデューサーTodd Howard氏は「絶大な人気を誇る作品だけにプレッシャーを感じている。私達自身もFalloutのファンであり、ファンを裏切るような行為はしたくない」と述べていたが、個人的には約束に近いところまで到達していると感じられた。しかし、今作はFalloutらしい雰囲気を漂わせているものの、完全なる模倣までとはいかずネタを好き勝手に食い散らかした感も否めない。Bethesda的なバランスのさじ加減に違和感を覚える人も多いだろう。

  だが、いずれによせ総合的に見て、Fallout 3が高品質なRPGであることは間違いなく、ロールプレイが好きな人には是非遊んで欲しい作品である。

Fallout 3はRPGゲーマーを久々に熱中させてくれる大作だ。

良いところ ちょっと引っかかるところ
・作りこまれた広大な世界
・美しい廃墟
・膨大な量の凝ったサブクエスト
・ファンをニヤリとさせる旧作のネタ
・爽快なV.A.T.S
・筋の通ったテーマと物語
・多様なキャラメイク
・洒落たポップアート
・プレイヤーのモラルが問われる選択肢
・プレイヤーに優しい親切設計
・制約の緩い重量制限
・ちぐはぐなバランスカーブ
・捻りのないダイアログ
・客観視点時の主人公のぎこちないアニメーション
・親切設計すぎる

2008年11月20日 記
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