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今度のゾーンはどんな味?みんなの大好きなゾーンが帰ってきた!
PCゲーマー期待のあの名作の続編-Clear Sky
 
 度重なる延期でFPSプレイヤー達をやきもきさせ、約6年にも及ぶ難産の末に生まれたS.T.A.L.K.E.R.: Shadow of Chernobyl。発売した当初は、その生い立ちから半ばネタ的な扱いを受けたが、蓋を開けてみれば独創性に溢れた魅力的な世界観と奥の深い内容を併せ持つ素晴らしい出来映えに仕上がっており、待たせた甲斐は十分にある作品であった。

 今回のS.T.A.L.K.E.R.: Clear SkyはS.T.A.L.K.E.R.: Shadow of Chernobylの続編となる。不可思議な領域“Zone”が舞台になるのは今回も同じだ。ただし、続編といっても時間軸は前作Shadow of Chernobylの一年前に当たり、前日譚というべき内容となっている。つまり、前作の登場人物達の生い立ちが今作では描かれているというわけだ。Clear Skyでは主人公がScarという人物になり、彼の視点から“真相”へ迫っていくことになる。

予想を裏切る二転三転が欲しかった展開とエンディング

 メインストーリーのオチは既に前作をプレイした人なら知っての通りの予定調和で、特に捻りもなく終わってしまうのは残念なところだ。Strelok達の行動や過程も別段驚きもない。せっかくClear Skyで加えられた派閥の要素も後半の展開には大して絡まずに終わってしまうのも惜しい。前作では願望機の存在やゾーンの秘密、Strelokの正体など神秘的な謎が用意され、それらが物語へとプレイヤーを引き込む原動力となっていたが、今回はそのような心惹かれる仕掛けが薄く、前作に比べて物語の展開が魅力に乏しい感は否めない。

 また、メインクエストにしても退屈なお使いが多く、地下探検のような心をくすぐられる任務がほとんど存在しないのも痛い。前作では地上と地下の配分が適度な塩梅で配置されており、環境の変化に富んだ構成によってメリハリが十分付いていたが、今回の進行は平坦な感じが強い。サブクエストの内容は予想を裏切らず、前作通りバリエーションに乏しいままで似たようなものが占めている。終盤はやっつけ感の漂う展開で、メイン、サブクエスト共に作り込みの浅さを感じずにはいられない。

 前作に引き続いて舞台はゾーンということで、ロケーションは半分以上が流用されている。新規といえるロケーションは湿地帯と市街地の二つくらいなものだ。しかしながら、既存のマップには建造物やオブジェクトを新たに配置され、地形が変形していて異なる道が開けていたり、といった工夫が見られることにより、前作そのままという感じは抱かない。そもそもS.T.A.L.K.E.R.というゲーム自体が特殊で、何回リプレイしても飽きがなかなか現れず、むしろゾーンを徘徊し続けるのが病みつきになるような不思議な作り。その独特な奥深さがS.T.A.L.K.E.R.の希有な点であった。何回もクリアしたけど未だにプレイしているよという人も多いだろう。今作での多少の焼き直しは恐れていないような作りにGSCのS.T.A.L.K.E.R.に対する自信が窺える…というのは買いかぶりすぎだろうか。

今作では仲間と行動するミッションが増えた。
ゾーンにより面白みを与える新要素
 
  今作の目玉といっても過言ではない、派閥の要素は銃撃戦に新鮮味を与え、前作とは異なるシチュエーションが味わえるようになっている。拠点の占拠や防衛が行える派閥の争いなど、仲間の繋がりを訴えかける仕掛けが用意され、彼らと共闘ができるようになったのは嬉しい。

 仲間とずっと一緒に行動したり、戦略ゲームのように命令を下すことはできないが、同じ旗の下で活動する同士の存在が感じられることで心境がずいぶん違うものだ。同じマップ内に仲間が居ると、自然に安心感が生まれてくる。これは前作では味わうことのできなかった感覚だ。もちろん、派閥に加入しないで一匹狼で進めるのは自由である。どの派閥とも当たり障りなく進める場合は一匹狼が無難な選択かもしれない。

 派閥はClear Sky、Loner、Bandits、Freedom、Dutyが用意されており、どこに加入するかはプレイヤーの自由だ。ただし、メインストーリーを進めないと派閥には加入ができないようになっている。進行度合いによってアンロックされていくので、最初からどこにでも加入できるわけではない。

 特定の派閥に加入するとトレーダーの掲示する価格通り(仲間外だと2倍の価格になる)で物品が売買でき、派閥戦争に関われるようになる。言葉にすると少し大仰に聞こえるが、派閥戦争とは簡単にいえばイス取りゲームのことだ。仲間と会話して占拠を促すことで敵拠点へと攻めこみ、敵を全滅できればそこは自分の派閥の陣地となる。どんどん占拠していけば、敵の勢力をマップ上から消滅させることも可能だ。つまり、自勢力が強いほど安全地帯が多くなり、ゾーンの旅が楽になる。 しかし、逆に敵が襲来して、防衛しなければならない場合もあり、仲間が全て倒されると拠点を失い、危険な地帯が増えてしまう。ちなみに派閥の勢力図はPDAから確認ができ、分かり易く数値化されていることにより、派閥機能の効果が実感できるように上手く作られている。

 派閥争いはランダムに発生し、仲間の増援が現れるかは運頼みである。私の場合、敵の拠点を落としたのはいいが、仲間リーダーが一向に現れないせいで占拠ができないということに度々遭遇した。今後のパッチで、この問題が改善されることを祈ろう。

改造は魅力的だが、大金が必要だ。
  派閥の機能に続き、今作で加えられた装備の修正と改造の要素はゾーンの生活をより楽しくさせている。前作では使い古した武器や防具は捨てるか、売るしか選択肢がなかったが、今回はマイスターに相応のお金を支払えば修理してもらえ、一つの装備を愛用し続けることが可能になった。せっかく手に入れたレアな武器が損傷し過ぎて使いものにならないという悲しい出来事は今回は起こらない。

 一方、改造はお金を支払うことで銃の命中率や防具の耐久度を上昇できる。各々の装備毎にスキルツリーが用意されており、命中率と集弾率を上昇させると二段階目の命中率上昇が選べるが、その際は取り回し向上や発射速度が選べなくなるという仕様。すべての機能を上昇させられるわけではなく、どれを選択するか考えなければならない。改造はその効果に見合う金額を要求され、それにより金回りが上手く機能するようになっている。前作はお金の使い道がなく、貯まっていくばかりであったが、今回は金欠に悩まされることになるだろう。

 武器の性能は改造の要素が取り入れられた影響なのか、前作と同じ銃でも性能は低めになっている。例えば射程距離は短く、命中率は悪く、といったようにそこらへんで拾った初期状態の銃はあまり使い物にならないから注意だ。改造を加えることで、ようやく人並みに戦えるようになってくる。序盤ではそれに気付かないか、金銭的問題を抱えていることで苦戦を強いられるのは必至。前作以上に辛い戦いになることだろう。しかし、最大まで改造すれば前作以上に強くなるので、後半の戦闘は楽になる。改造のお陰で拳銃も今回は使える武器に変わっている。

銃撃戦は面白みを増したが、やや度が過ぎるAI

 臨機応変に戦うAIの評判はよかったが、今作では若干の強化がされている。手榴弾を投げてくるようになったのは恐ろしい。前作では同じ場所にキャンプしながら戦っていても大丈夫だったが、今回はピンポイントなところに手榴弾が投げ込まれ、移動しながら戦う必要性が生まれることによって、駆け引き性が増している。しかし、この手榴弾の投擲がいささか正確過ぎる感は否めず、足元に投げ込まれて即死というパターンが非常に多い。手榴弾が飛んでくるだけでも恐ろしいのだから、もう少しアバウトでもよかったのではないだろうか。

 そして、AIの行動が追加され、見栄えのいいアクションを行うようになった。例えば、目の前に障害物があれば飛び越えたり、カバーポジションからブラインドファイアで牽制するなどして、戦闘描写に迫力が増している。敵が死んだ時にやられるアニメーションが発生するようになり、銃を振り回しながらRIKIYA Styleで倒れるのは前作にはなかったケレン味を生んでいる。

 回復の仕様が変更され、絆創膏では止血しかできなくなり、回復するにはメディキットを用いらなければならない。前作では絆創膏の連打だけで回復が事足りる場合が多かったので、今回はしっかり差別化がなされていると言えよう。

アーティファクト探しにはスリルがいっぱい!
つかもうぜアーティファクト

 アーティファクトは今回も存在するが発見方法が異なっている。前作では道端に普通に転がっていたが、今作ではアーティファクトの姿が普段は見えず、存在する場所に達することでようやく姿を現すようになる。しかし、その付近には必ずアノマリーが存在し、容易には近づけないような工夫がなされ、どうやってそこへ到達するかをボルトを頼りに考えねばならない。

 アーティファクトは普段姿を現していないのに、どうして見つければいいのかというと、ずばりアーティファクトを検出する機械が今回は用意されている。この検出機を使い、ドラゴンボールよろしく位置を探っていくのだ。アナクロなアーティファクト探しは冒険心をくすぐる面白い作業。まるで気分は宝探しのようである。

 ちなみにアーティファクト検出機は3つのバージョンがあり、世代が増すごとに検出能力が向上するので、見つけにくい場合は性能のいい検出機を入手するといいだろう。アーティファクト検出機を使っている際は片手しか使えないようになっており、拳銃を使わせる理由として上手く働いている。

 前作では存在しなかったエミッションと呼ばれる災害が今回は発生する。これは制限時間内に所定の場所へ移動できないと即死してしまうランダムイベント。予兆が現れると連絡が来て、最寄の安全地帯へ移動せよというクエストが追加される。ただ、安全地帯が敵の拠点だったりすると厄介で、場合によっては詰むこともあり得る。エミッションが発生したら上書きセーブには十分な注意が必要だ。

 幸いなことに、エミッションはあまり起こらないが、発生中は画面がぐらついたり、天候が目まぐるしく変わったりして銃撃戦がままならなくなる。しかし、なぜかエミッションの効果が適用されるのは自分だけのようで、NPCは普通に行動している点には理不尽を覚えずにはいられない。
 
朝焼け。God Ray効果が美しい。
一度見たことのある光景でも微妙に違っている。
スコープを手に入れたら、銃撃戦はかなり楽になる。
ジャムおじさんはバタ子さん並に都合良く現れる。
勢力はPDAで一目瞭然。
ゾーンには罠がたくさん仕掛けられている。



とっつきにくさも、噛めば噛むほど深みの出てくる味も相変わらず

 前作の発売から約1年半で作り上げた事実にはファンならずとも驚きを隠せない。焼き直し部分が多く、前作の作り込みに比べると質は落ちるが、新たに加えられた要素は概ね良い方向に働いている。他では味わえない肌触りや独特なゲームプレイは今回も健在で、S.T.A.L.K.E.R.の面白さを再認識させてくれる内容に仕上がっており、前作を楽しんだファンなら今回も楽しめるはずだ。

2008年9月18日 記
FPS UnKnown > PC Game感想 > S.T.A.L.K.E.R.: Clear Sky