■それは誰も知らない真の英雄の叙事詩
ムービーは前衛的な表現。シャシンの意味を読取る必要がある |
1950年代ソ連の当時の街並みを忠実に再現したという重圧感が漂う街が舞台となる。そこで主人公は襲い掛かる非現実的なバケモノと戦いながら、街が廃墟と化した元凶を見つけ出さなければならない。
物語はゲームとムービー部分でそれぞれ役目を振り分けて、二つのエピソードで構成されている。街から脱出を試みる人物をプレイヤーが操作し、物語の根幹を成すもう一人の人物に関してはムービーを使って、生い立ちをなぞっていく。操作する人物の内面は一切描かれず、プレイヤー自らが想像しながら成りきるものとして存在。逆にムービーで登場する人物に関しては内面を事細かに描写している。
主人公となる人物をほとんど描かず、他の人物をムービーを使いながら事細かに描いていく行為は一見横暴にも見える。しかし、そこは一人称のゲームだからこそ成り立つ演出としてうまく処理され、ラストで二人が交わり合うシーンで本作の意図が理解できるだろう。それにより狂気的な実験によって破滅を迎えるという、極めて有りがちな題材は舞台装置に過ぎず、そこに不運にも携わってしまった人達の人間ドラマが主題であることに気付くはず。
ゲームで操作する人物は敢えて描かずにプレイヤーに成りきらせ、もう一人の男にも感情移入が出来るように仕掛けられているストーリーテリングの効果は物語が集約し、結末を迎える時に遺憾なく発揮されている。結果的にその方法しか用意されていないにせよ(当初はマルチエンドの予定があったらしいが)、最後の重要な決断をプレイヤーに委ねる形で用意したのは英断だと言えるだろう。プレイヤーに行動を取らせることで救いがたい罪悪感と悲哀を同時に味わせ、どうすることもままならない虚しさが襲う。ゲームだからこそ成立し、そして表現することが出来た、ゲーム媒体の特徴を活かした優秀なシナリオだと言えるだろう。
観光気分でサバイバルしてると足元すくわれるぞ |
プレイヤーがある地点に差し掛かるとトリガーによって敵が現れるのがこのゲームの基本的な流れとなる。いつ襲ってくるか分からない緊張があり、死んだような街の雰囲気が相乗して本作独特の重圧感が漂っている。受けるダメージが大きく設定されているので、こちらに向かって走って接近戦に持ち込んでくる敵の登場に恐怖を感じながらのプレイとなる。
武器はアクションリアル系の操作性で一発を外すと隙が出るものが多く、主人公の歩くスピードが遅いので、敵に接近されてしまうと大きく離すのは不可能。一回のミスで窮地に落とされる危険性を孕んでいて、常に気が抜けない戦いが繰り広がられ、同じような敵ばかり登場するが単調だと感じさせない。
敵はほとんどがトリガーで登場するものの、呻き声を上げながら襲ってくるのが大半となり、こちらは身構える余地があるので、突然現れた敵に瞬殺されるような理不尽な所は無い。また回復アイテムが多く用意されてゲームバランスの帳尻を合わせているのでテンポ良く進めることが可能。銃器を扱う敵の配置もプレイヤーに不利な状況をなるべく与えないように考えられているので、ロシア系のゲームに有りがちなストレスは今作ではほとんど見られない。武器のサウンドが軽く、ヒットしている感触が薄いので銃撃感が弱い点はマイナスではあるが、ゲームとしては大きな破綻を来たす事なく仕上がっているのでB級ゲーのFPSの中では健闘していると言えるだろう。
ただあくまでロシア製のB級ゲーとしてであって、欧米のA級ゲーの仕上がりを期待すれば肩透かし感は否めない部分は出てくる。 ゲーム進行にしてもド派手な演出はなく、淡々と進んでいくきらいがあるので、1950年代のソ連を再現した一種の狂気が満ちている街並みの雰囲気が気に入るかもポイントとなるだろう。
ソ連の雰囲気がたまらん、けしからん! |
なんという歯列矯正 |
はい、タコ○プター!でも自由に空は羽ばたけないよ |
看護婦さんキター!ってなんか違うよ色々とヤバイよ |
なんという三つ子ちゃん。PPShを使ってくるので厄介 |
なんという禍々しいチョ○ボ。○ョコボキックもあります |
■秀逸なムービーとストーリーライン、B級としては良く出来ているシューティング
シナリオに関して独自の持ち味で光るものがあり、そこらの凡百なものとは一線を画している。度重なる延期の為にやや時代遅れは感じるが、もっと酷い出来を予想していただけに意外にFPSとしてしっかりした作りで驚いた。ただ、B級ゲーの殻から脱却は出来ず、良くも悪くもその域に収まっている。あくまでロシア製のB級ゲーであることを念頭に入れた上で臨めば意外に楽しめるはずである。
2007年7月28日 記
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