FPS UnKnown

UberSoldier (2006-Burut Creative Team)

■また超人か

主人公はナチスによって超兵士に改造されてしまったのだ
題名からもすぐに想像が付く通り、人知を超えた人間を題材にしたゲームである。しかし、タイトルを聞いただけで「ああ、またか」と一言で片付けるのは無粋というもの。ガイジンさんが日本をイメージすればサムライニンジャが酸性雨の降りしきる電気街で決闘するのと同じように、我々ガイジンがゲームに使えそうな題材をドイツから挙げるとすればユーベルメンシュ(超人)やゴッドメンシュ(神人)が真っ先に挙がるのはごく自然な行為であり、もはや一種のお約束。ドイツの魅力的なオカルト側面を題材にしたメディアは数数え切れないほど存在し、今日に至っている。本作を制作したロシアのBurut Creative Teamもまたその一例に倣ったに過ぎない。

人間という生き物は不思議なもので何かと理由を求めたがる。たとえ超自然的で普遍的な物でさえ、何かしらの存在理由や根拠を結び付けなければ気が済まない性分なのだ。FPSで言えば、何の説明無しに一般人がバレットタイムや特殊能力を造作なく扱うのは違和感があるというもので、常日頃からそういった不条理で納得の行かないものにゲームへの没入感を削がれてきたことは計り知れない。本作はオカルト要素を取り入れることでそれらを解消している。主人公が大量の敵を一人で薙ぎ倒していくのも、特殊能力を扱えるのも、動物のような刷り込み習性も、台詞が棒なのも(え?)、全てユーベルソルジャー(超兵士)の力のお陰にしてしまえば、それだけで説明が付く。大変都合が良いと言うか、何とも便利な設定である。

本作のあらすじは軍の兵士である主人公カールが敵の奇襲によって命を落としてしまうが、ドイツ軍が研究中である超人計画の格好の材料として選ばれ、ユーベルソルジャーへと復活するところから始まる。その後、主人の命令を聞くようにするためにカールに刷り込みを行う予定であったが、レジスタンスに属するヒロイン・マリアが基地に侵入。カールが一番初めに目にしてしまったのはマリアの姿だった。そこで彼は彼女の命令を聞き入れ、レジスタンスに加担しながら宿敵であるドイツ軍と戦っていくというもの。

途中からラブストーリーに変化していく
上記のような無茶な設定など瑣末な問題に過ぎない。しかし、本作はストーリーの進行や演出に大いに問題がある。ややネタバレするとドイツ軍との戦いに加え、ヒロインとのラブストーリーが途中から現れてくるのだが、結ばれるのには余りに唐突過ぎて拍子抜けしてしまう。

ストーリーテリングというものはシナリオの展開にプレイヤーが付いていけるように破綻を生まない説得力を孕ませるのが常識であるが、この作品では全てのカットシーンにおいて淡白で描写不足な面が散見し、そのせいであらゆる所で中途半端さが目立っている。盛り上がるシーンはもっと盛り上げ、ラブシーンはもっとロマンスに語ればいいものをせいぜい5割程度の描写で終わらせてしまっていて展開に無理が生じているのだ。

結末にしても安っぽいラブストーリー風に無理矢理丸く収めている感が否めず(注:全然収まっていない!)、敵であるドイツ軍や見方のレジスタンスのメンバーがどうなったのかも不明な点は苦笑するしかなく、開発者がシナリオを放棄しているように感じずにはいられない。せっかく最後まで進めてきたプレイヤーに対して、この扱いは失礼というもの。もっと時間を掛けて丁寧にストーリーを語るべきだっただろう。

■小気味良い仕上がりのアクションシューター

シールドを展開して弾を跳ね返すorぶつける
ロシア系のFPSというと、どうしてもゲームのバランス面において歪で褒められたものではなく、小さなソフトハウスだからこそ作れる独特な雰囲気に魅力を感じるものが多い。私個人としてもそこを買って、ロシアの垢抜けないゲームを好き好んでプレイするのだが、ところが本作に関しては意外や意外シューティングは安定したバランスを保っており、アクション性の強い直球のFPSとして十分楽しめるものに仕上がっている。

主人公は一定時間は自分を中心に円状のシールドを展開出来るようになっており、敵が放った銃弾(自分が撃ったものも)を受け止められ、受け止めた弾丸を敵にぶつければ銃撃したのと同様の効果が得られるようになっている。ゲージを半分近く溜めているとシールドが白く変化し、この状態では受け止めた弾丸を跳ね返すことが可能。シールドのゲージは敵を倒すことで回復していき、すぐにMAXまで溜まる。防御、攻撃と共に兼ね備えた仕様で使い勝手が非常に良い。

たとえ大量の敵に集中砲火されようとも、シールドの機能をうまく活用することで窮地を脱することが容易であり、逆にシールドを展開しながらラン&ガンスタイルでゴリ押しして突っ込む行動も取れるようになっている。武器はアサルトライフル系のものが中心、腰溜めで撃ってもレティクルの散らばりが少なく、弾はたんまりと用意されているので気兼ねなくガンガン撃ちまくるアサルトプレイで戦え、爽快である。

敵のAIは可もなく不可もなくといった出来。自立的な行動をたまに見せることもあるが消極的でアグレッシブさに欠ける点はマイナス。ただし、スタックを起こすような奇行などは見られず及第点は満たしている。まるで敵がウォールハックしてプレイヤーを待ち構えているかの如く反応速度が異様に速いのが気になるが、命中率は大して精密ではなく、走り回れば曳光は避けられるようになっている。また、一発辺りのダメージは低く、メディキット(敵からも入手出来る)は豊富に用意されているので、ライフに困らずに戦っていけるバランス取りがされている。難易度はNormalならシールドを使わずとも普通にクリアできるレベルに落ち着いているので易しめに感じるだろう。

楽しいナイフキル。当方のライフは最終144まで上昇
一定時間内にナイフキルを三回することでライフが2上昇するシステムはシューティングの駆け引きにもう一つ面白さを加えている。ナイフはサブ攻撃(デフォではShiftキーに設定)として用意しているのでいちいち武器を変える必要はなく、使い易い。大抵のFPSではほとんど無意味と化している近接攻撃に意味を持たせた開発者の姿勢は評価に値する。こういった実益を兼ねたやりこみ要素は自己満足的なやりこみとは違ってやりがいがあり、多少無茶をしてもついつい狙ってしまう。ライフの上限が上昇していくのを見るのは実に気持ちが良い。

グレネードの異常な破壊力、爆撃の演出に巻き込まれた際の突然死は本作での不愉快な点。グレネードは主人公も扱え、一撃の攻撃力の高さから心強い武器となりうる。ただし、逆にそれが仇となって敵が使ってくる場合には非常に厄介である。

敵もグレネードをたまに使ってくるが、そのコントロールがやたらと正確で避けるのが難しい。また色が見づらいせいで風景に溶け込んで飛んできたのに気付かずに爆死してしまうこともよくある。そして近距離で爆発すると耳鳴りと共に意識が朦朧となって行動が出来ない場合があり、この演出のせいで一方的な攻撃を受け続けるところもあった。

戦時中ということもあり、それに応じた爆発や爆撃シーンが多い。ただ、演出だけに留まらず、プレイヤーに直撃してしまう場面があり、いきなりの突然死にはストレスが溜まる。インジケーターなりで情報を知らせてくれれば回避しようがあるものの、何も知らせずにいきなりドカン!の一撃死では理不尽極まりないとしか言い様がない。

燃やせ!燃やせ!真っ赤に燃やせ!怒る心に火をつけろ!
絶対領域(シールド)に侵入しちゃらめぇぇぇー
爆発大好きゆーべるそるじゃー
アイアンサイトは見にくいのです
これなんてサイレントハンター
サイコキネシス野朗は色々と厄介だ



■頭カラっぽにして楽しめるB級アクションFPS

小難しいことを考えずに縦横無尽にマップを駆け回りながら銃撃戦を繰り返すスタイルはオーソドックスながらも、オーセンティックなFPSとしての爽快感をしっかり持ち合わせている。ゲームバランスもうまく取れており、その点抜かりは無い。B級的な異国情緒溢れる垢抜けない雰囲気とアクションシューターが好きならばオススメする。

2007年8月11日 記

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