FPS UnKnown

Time Shift (2007-Saber Interactive)

■目新しいものはほとんど無いが、相応に楽しめる直球のB級ゲー

Time Shiftには迷走という名の苦労の年月が込められているのです
当初の予定日から伸びるに伸び、2007年にようやくリリースされたTime Shift。一年も延期して、デザイン部分で作り直した苦労もそれほど効果があったとは思えず、イメージを払拭できたとは言い難い。

予想していたように紛れもないB級ゲーの範疇。アピールされていた時間操作のシステムも限定的な使い方に留まっており、新鮮さはさほどない。2007年の大作タイトルラッシュの陰に埋もれていく存在であろう。

しかし、いかにもB級らしい異国情緒溢れる垢抜けない雰囲気やオーソドックスなスタイルが好きならば、きっと楽しめるに違いないFPSである。

●時間を操作し、あらゆる障害を取り除け

Kroneという科学者によって歴史が改変された世界が、このゲームの舞台となる。未来の世界は、Kroneが頂点に君臨する閉塞的なディストピアと化した。リベットだらけの金属片が空を飛び交い、多脚戦車が街を闊歩する光景はまさに悪夢である。主人公は、時間を操ることが出来るベータスーツを駆使して、Kroneの野望を打ち砕き、歴史を元の正常な時間軸に設定しなおさなければならないのだ。

世界設定は、初期のデザインのスチームパンクの強烈なイメージは薄れたが、未だその名残が節々から感じられる。近未来SFとスチームパンクの組み合わせは歪(いびつ)であると言った方がいいだろう。しかし、これは時間が改変された歪(いびつ)な世界を上手く体現しており、スチームパンクらしいレトロな感覚と近未来SFの頽廃感が本作独特の雰囲気を醸し出している。特に、序盤に登場する多脚戦車のケレン味は秀逸である。

時間を操れば怖いものなし
このゲームでは、レジスタンスと協力する場面はあるものの、ほとんどは一人で行動することになる。オーソドックスな古典的シューターのスタイルだと言って差し支えないだろう。そこに、一味加えるのが「時間操作」のシステムである。これはスロー、ストップ、リザーブと3つの機能があり、このシステムをうまく活用しながら、ゲームの障害を切り開いていかなければならなくなっている。

スローの機能は、これまでのFPSにも度々登場した、いわゆる「スローモ」や「バレットタイム」と呼ばれる効果である。周りの時間の流れを遅め、主人公だけが通常通りに行動できるというそれだ。そして、ストップは周りの時間を停止させ、主人公だけが動けるというもの。
中でも目新しいのがリザーブの機能である。これは文字通り、それまでに周りに起こった事象を巻き戻す機能。使用すれば、まるでビデオを巻き戻し再生しているかのように、リアルタイムに出来事が戻っていく光景を見ることが出来る。ちょうど「Prince of Persia:Sands of Time」のものに近いが、あれの場合は主人公の時間も巻き戻されるので、やや性質が異なっている。Time Shiftでの巻き戻しの対象は、主人公以外の世界の事象。主人公の時間は常に進行状態にあるのだ。

以上、これらの機能を用いて、ゲームを進めていくことになる。それにより、プレイヤーにあたかも時間の覇者であるかのような気分を実感させてくれるのが、このゲームの利点であると言えるだろう。

シューティングのバランスは時間操作を用いることが前提になっており、難易度は高い部類に入る(ガチンコで銃撃戦をしようと思えば)。気を抜いて突っ込んだ挙句に、敵の数発でやられることもしばしばだ。しかし、時間操作を用いれば、その関係も逆転する。プレイヤーが状況を見極めて、時間をうまく操ることが出来るようになれば、キリングタイムの幕開けが始まるのだ。スローを用いれば、多数の敵相手でも対処に困ることはない。肉薄してショットガンを叩き込むのも容易となる。ストップを用いれば、敵に気付かれることもなく、ステルスな状態で暗殺も可能。時間が動き出した途端に死んだり、仲間が急に倒れたりする奇異な状況を敵の心境から想像してみると面白い。

時間を操作しながらの銃撃戦は、心地良い蹂躙感を与えてくれることだろう。そして、それをさらに高めてくれるのがゴアとラグドールの表現、武器の豊富さである。最近のFPSにしては珍しく、敵が肉片となり四散する。血も盛大に飛び散り、ヒットした手応えを感じさせ、シューティングに必要な快楽はしっかり伝わってくる。大抵のオブジェクトには、物理やラグドールの効果が働いており、スローで敵が四散しながら、吹っ飛んでいく光景はまさに爽快の一言に尽きる。
また、爆発するボウガン・火炎放射機・レーザー銃等の好みの武器を弾薬を気にせずに使えるようになっている。それぞれの武器はやや強すぎる感が否めないが、これぐらい強力な方がこのゲームには適している。強力な武器を使いながら、時間を操作して、敵をバッタバッタと薙ぎ倒していくのがとても心地良いのだ。

レーダーで敵が表示されることにより、理不尽な死が少ないのも、このゲームの良いところだ。レーダーをしっかり把握していれば、他のB級ゲーのような「隠れていた敵にヘッドショットを決められて、瞬殺されるような不快感」を味わうシチュエーションはあまりない。敵の位置をいつでも把握できることで、いつ襲われるか分からない緊張感はないが、ストレスばかりが募るよりかは遥かにマシである。この判断は英断だったと言えよう。

●反復極まりない進行、断続的なゲーム展開

ワープや高速移動するやつにはストップだ
銃撃戦、演出、パズルとゲーム展開は緩急が付いているものの、ゲームを進めていく内に反復的な展開が目立ってくる。ロケーションは都市・雪山・工場・草原とバリエーションがあるものの、内容はほとんど同一。パズルの内容も似通ったものが多く、時間操作のシステムも発展性が乏しく、活用出来る選択肢が少ないのが単調さを生んでいる。

あまり難しくてゲームのテンポを損ねるようなパズルも困るが、パズルのバリエーションがもう少し欲しかったところ。時間操作にしても、組み合わせによる発展性を活かした趣向がほとんど用意されていなかったのも残念な点である。せっかく面白そうな時間操作のシステムが組み込まれているのに、付いて回るのはオーソドックスなFPSの感覚で、新鮮さがあまり感じられない。

また、繋がりの感じられない断続的なゲーム展開も問題である。このゲームでは時間を移動する為、ゲームの展開に繋がりの感じられないのは仕方ないが、なぜか連続的なシーンにおいても、時間に繋がりがない断続的な印象を感じてしまうのだ。

たとえば、都市から飛行機に乗って、不時着するシーンとしよう。大抵の場合は、飛行機に乗ってから、不時着する描写までを取り入れると思うのだが、このゲームではこの間がバッサリなくなっている。前のレベルで、飛行機の前まで行き、次のレベルがローディングされると、いきなり街中に立っているのだ。後ろを見ると、燃え盛る飛行機の残骸が散らばっており、そこで始めて「飛行機に乗って、途中で不時着したんだな」と分かる。いま何処に居て、何をしているのかが掴みにくく、やたらと断続的に挿入される回想ムービーも紛らわしさに拍車を掛けている。

シナリオは勧善懲悪で盛り上がりに欠けるのが惜しい。時間の概念を活かした驚きもなく、平板な展開である。最後だけはタイムパラドックスを用いたB級らしいオチで締めるが、こういった二点三点が、ゲーム全体にあった方が望ましかっただろう。

多脚戦車萌えをしっかり理解している
火炎放射機で汚物は消火プレイ
エネルギーガンのセカンダリで敵をブッ飛ばし!
ドライブで轢き○すNOLFプレイ
スチームパンク好きにはヨダレモノの歪なデザイン
一応ヒロインも居たりしますが、絡みの少ないこと少ないこと…性的な意味でなく。



■B級ゲー好きなら買っても良いかも

時間操作は活かし方が惜しく、それのせいで新鮮味はあまり感じられない。しかし、オーソドックスなシューターの楽しみは存在しており、バレットタイムを用いるFPSが好きな人、ロシア人の作るB級ゲーをこよなく愛する人にオススメ。ボリュームも冗長に感じられるくらいにあり、値段分はしっかり楽しめるハズである。

2007年11月13日 記

©2007 FPS UnKnown