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Soldier of Fortune:Payback (2007-Cauldron)

■どう見てもバリューゲー

残虐なゴア表現は今回も健在?SoFの新作
残虐なゴア表現がウリであるSoFの新作。開発しているのは本家Ravenではなく、Cauldronであることからも分かるように、販売元のActivisionがSoFのネームバリューに便乗して作らせたことが容易に察することが出来るだろう。SoFの名前でユーザーを釣ったり、信者を食い物にするかのような浅ましい行為は決して褒められたものではない。

しかし、それでも出来上がったものがきちんとしたものであれば問題はないが、大抵の場合は浅ましい行為に比例するかのような酷い有様となる。今までにもそういった例は枚挙にいとまがない。案の定SoF:PBも、その一例に属する仕上がりなのは言わずもがなである。

SoF:PBはActivisionでバリューゲームを担当するブランドActivision Valueから販売する予定だったが、途中で欲に目が眩んだのか、後から一般プライスへと変更。Activision名義でリリースされている。

とは言うものの、インストールフォルダにActivision Valueの名前が残っていたり、ゲームは明らかにバリューゲーム路線であり、一般価格のゲームと肩を並べるには厳しい内容である。期待していたSoFのファンから「名前を汚すな」と批判されたり、「Pay back(返金)させろ!」と揶揄が起こるのも致し方ない出来だ。私からも、バリューゲーとしてならまだしも、一般価格のゲームとしては買うべきではないと忠告しておきたい。もし、ほんの少しでも期待していようものなら肩をガックリ落とし、うな垂れることに違いない。

●見た目はSoF、中身はChaser

だぁーるまさんがこぉーろんだ
SoFと言ったらなんと言っても幅の広いゴア表現だろう。豊富なバリエーションの人体破壊が度々話題に挙げられたり、一部の層の強い人気を獲得している。もちろん残虐なだけではない。SoFのゴア表現はヒット感や痛みをプレイヤーにフィードバックさせ、シューティングゲームの快楽性にしっかり昇華している。敵に弾を当てた実感をプレイヤーに伝えるというのはシューティングゲームにおいてキモとなる部分だ。そういった感触や感覚を感じるさせることで、シューティングゲームの爽快感が高まるのである。

だが残念ながらSoF:PBでは、ゴア表現は他のゲームに比べて派手なものの、それが爽快感に繋がるかと言えばやや疑問符が浮かび上がる。頭が飛んだり、四肢が切断されたりするのだが、過剰すぎて逆に嘘っぽさを与えているのだ。弾が一発掠っただけで腕や足がポンポン弾け飛んでいく滑稽な光景が、逆に映像としてのリアリティを損なわせ、説得力を失うハメになっている。あまりの馬鹿馬鹿しさに茶化されているようで、没入を妨げられてしまうこともしばしばだ。そのため敵を倒した実感が湧かず、ヒット感も希薄になり、ゴム人形を撃っているかのような虚しい気分にさせる。

足が無くなったら倒れたり、股間を撃たれると局部を押さえながら悶絶したり、腕が無くなったら身体を傾けながら走り回ったりなどのアニメーションはSoF:PBでも用意されている。しかし、どれも痛々しいと感じさせるまでには至っていない。グラフィックの質はSoF:PBの方が上だが、痛みが伝わる表現としてはSoFやSoF2の方が優っており、攻撃したことによる代償や罪悪感を感じさせるのが巧みであった。今作のそれは大根役者の大袈裟な演技にしか見えず、いかにもバリューゲーム的で白けさせる。

Cauldronが開発をしているせいで、ゲームバランスは予想通り破綻。彼らの作るゲームの特徴と言えば、歪なダメージバランス、不利な状況の連続、大量に湧いて出る敵などが挙げられるが、今回もそれらを強襲しており、プレイヤーを苦しめることになる。
ライフはポイントではなく、いま流行の自動回復形式で回復アイテムのマネージメントは気にせずに戦うことが出来る。しかし、プレイヤーの耐久力が低く設定されており、敵の反応やエイミングが高いため瞬殺されることが多く、ストレスが溜まっていく展開へと変貌していく。序盤こそSoFさながらのアーケードシューター的な爽快感のある戦いが展開出来るが、ゲームが進むにつれてマゾヒスト向けの厳しい状況が押し寄せ、最後は瞬殺のオンパレードでもはや呆れるしかない。

湧きすぎだろ常考…
ゲーム性はミドルレンジ向きなのにも関わらず、後半は近距離戦や室内戦が中心になり、視界が悪い場所が多いのが原因なのだろう。グレネードランチャー一発、ショットガン一撃でやられてしまうほどの脆い主人公に対して、敵は容赦なく近距離でそれらの武器を多用してくる。出会い頭にゲームオーバーということも日常茶飯事で、打開するには敵の位置を必死に暗記するしかない。リーンなどで伺うことが出来ないため、どうしても身体を晒して攻撃する危険を冒さなければならないのも難易度を上げている要因の一つだ。

また、ジャングル、邪魔なオブジェクトだらけのホテル、暗闇で先の見えない駐車場のようなところでも、敵はこちらを透視してガシガシ命中させてくる。どこから撃たれているのか分からずに、カバーする前にやられてしまうこともあり、理不尽を感じざるを得ない。特に後半にそういった視界の悪い不利なミッションが重なっている。任意のセーブがあれば打開するのも楽なのだが、マルチプラットホームの手抜き移植らしいチェックポイントセーブのみな為、また前から戻ってやり直しの連続が苛立たせる。

ミッションの最後にボス戦が用意されている。全て人間だが(だと思うのだが)体力が異様に高いという設定、ボスは自由に動き回って行動するため、雑魚よりも手応えのある銃撃戦を味わえる。しかし、後半は強力な武器をガンガン使用してきて、ここでもイライラが募る。試行錯誤して、戦い方が悪いのだと気付いた。一気に接近してナイフで攻撃すれば一方的に倒せることが出来る。どうやらボス戦はこれが正攻法なのだろう。

シナリオはテロリストを倒していくという、ほんとどうでもいいような内容である。ゲームは親玉を倒してちゃんちゃん♪かと思いきや、酷い結末で唖然とさせられる。これではクリアした達成感も満足感も得られない、というよりChaserとほとんど同じではないか。Cauldronは気に入っているのかもしれないが、プレイヤーにとっては後味が悪いだけである。このエンディングはせっかく苦労して戦ってきた努力を無に帰す愚行に他ならない。戦争、復讐の無意味さを味わわせたいのであれば、それ相応のお膳立てをしなければならないのだ。それを怠って強行しても、やっつけ仕事にしか見えない。

ゴア表現を堪能する間もなく、ヤツらはやってくる
ボスはナイフで切りまくり
クソ長いリロード。ちなみにミッション前に武器を選べて、カスタマイズも出来るが、二度もプレイしようとする気にならないという
幸せそうだね
二次の方がいいです
暗くて見えないわ、グレネード飛んでくるわの後半ミッション



■バリューゲーとしてならアリかも

他のFPSよりも豊富なゴア表現があるが、大袈裟でわざとらしい表現でリアリティは低い。ゲーム性、バランス面共にバリューゲームの域であり、バリューゲームとして買うのであればそれ相応に楽しめるはず。値段が下がってきた頃に、期待せずにプレイするのがベストだ。

2007年12月16日 記

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