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Rainbow Six:Vegas

『レインボー・シックス』
敵は各国に蔓延るテロリスト集団。
ボクはその言葉を初めて聞いた時、心が躍った。

しかし、ゲームを進めるうちに、どんどん焦りが募っていく。
もしかしたら、テロリストのボス格が現れるまで、登場しないのかもしれない。
そう自分に言い聞かしながら、ゲームを進行していった。
焦燥から生まれる汗が額を伝う。
一体、ボクらのヒーロー『虹色戦隊レインボー・シックス』はいつ現れるのだろうと。

そして遂にはクリアを迎える。
残ったのは受け入れがたい現実と思い描いていた予定調和のヒーロー像への断絶。
虹色なのにシックス。もうそんな矛盾はどうでも良かった。

それはFPS若葉マークがついていた頃の話。
『レインボー・シックス』
この言葉を聞くと、今でも感慨深いものと名状し難い恥辱が胸に込み上げる。

※アメリカでは虹の色数は6。Sixはダブルミーニング。


□Rainbow Six:Vegas

プランニングから紡ぎ出される緻密な戦略性により孤高へと登りつめた、タクティカルシミュレーターの雄『Rainbow Six』シリーズ。 今回のVegasはその5作目(家庭用と拡張パックは除く)。Lock Downで大きく方向性を変え、旧来のユーザー、メインターゲットに据えていたコンシューマユーザーにも不評を買ってしまったUbiの雪辱というべきタイトルである。
方向性としてはLock Downと変わらないが、システムを更に見直し、結果としてVegasはコンシューマユーザーには高評価で迎えられ、PCゲーマーにも好意的に受け入れられたようだ。
次作の予定はまだ発表されていない。

□ベタなストーリー展開

テロリスト『イリーナ・モラレス』の情報を掴み、メキシコへと降り立ったRainbowの面々。首尾よく、イリーナを追い詰める事に成功したように思えたが、仕組まれた罠にまんまと引っかかり、Rainbowのリーダー『ローガン』を残して、部下はテロリストに拉致されてしまう。そして事件を追って、舞台はラスベガスへと展開していく。

これまではRainbow Sixという部隊が主人公だったのに対し、今回はローガンひとりに絞られた。ブリーフィングも無くなり、一般的なFPSのフォーマットである連続性のあるゲーム展開へとシフトしている。 それにより、ゲーム世界への没入度は上がっているが、これまでのR6やGhost Reconには存在した事件の背景を聞いて空間を楽しむ余地などは失ってしまっている。与えられた戦場空間の様相を『プレイヤーが考えるもの』から、『開発者に見せられるもの』に変化してしまったという事だ。

しかし、押し寄せる演出・展開の嵐に引き込まれてしまったのも事実であり、この手法は新生Rainbow Sixとして見れば悪くない。ただ、最後のオチについては意見が分かれる所で、後味の悪さを覚えてしまう人もいるだろう。

広がる街並み。臨場感の高い空間作りに成功している。 ベタな展開。でもそういうのトカ、好きだから。

□特殊部隊のカッコ良さに酔いしれる新システム

今回のVegasはストイックなまでに洗練された特殊部隊の様式美をプレイヤーに体感させる事を突き詰めている。
ビハインドビュー(三人称視点)の導入がその最もたる所以。FPSに慣れたゲーマーにとって、拒否感を覚えてしまうかもしれないが(事実、私もそうだった)、プレイし始めると即座に受け入れられてしまうから不思議だ。開発者の思惑にまんまとのっかるのは悔しいが、 障害物でカバーをとりながら、敵の曳光を掻い潜り、スキを狙って射撃する姿はとにかくカッコよく、その姿に痺れてしまった。

ライフシステムはダメージを受け続ければ死んでしまうが、被弾を避け、じっとしていれば自動で回復していくスタイルを採用している。
主人公であるローガンが死んでしまうとゲームオーバー、部下も同じく死ぬとゲームオーバーになるが、一定時間 は蘇生するチャンスが用意されている。ちなみに蘇生は何度でも可能。
タクティカルマップは用意されているが、そこから部下へと指示は出来ない。あくまで、見方や敵の配置、建物の構造を把握するためだけのもの。部下への指示は移動・突入の際のブリーチだけで大幅に簡略化されている。

操作体系が見直され、簡略化した事によって、スピーディなゲーム展開が可能になり、そのテンポの良さはゲームをのめり込ませるのにも一役買っている。
もともとPCゲームはキー(ボタン)の多さに甘んじて、複雑で冗長な操作を要求するものが多い。ボタンの限られた家庭用ゲームではそうはいかないわけで、こういった見直しは好意的に受け入れたい。

ショルダービュー銃撃。慣れてしまうと、いつでも使いたくなる。 ラペリング射撃。特殊部隊らしさ、カッコ良さを追求している。
ハンドシグナル。フォローミー♪ ブリーチングクリア!ごぅごぅごぅ!

□Unreal3エンジンで表現された次世代空間

初めのミッションはGRAWのような風景が広がり、想像していたものとはかけ離れていて、拍子抜けしてしまうが、中盤からようやく思い描いていた超構造物をネオンが彩る眠らない街ラスベガスが舞台となる。華やかで煌びやかな夢のある臨場感の高い空間は次世代的な空気を感じずにはいられない。ヘリから見渡す情景にはうっとりとさせられてしまった。室内も妥協を許さない作りこみで、一定のクオリティは保っており、破壊できるオブジェクトが多く、激しい銃撃戦の様相を演出している。ロケーションは多岐に渡り、飽きさせない様に努めている。

問題は要求スペックの高さ。現行のハイスペックでようやく、満足に動かせるかどうかのライン。そもそもゲーム内で設定できる項目が少なすぎる。テクスチャの解像度やAF、AAは変更できるようにして欲しかった所だ。PCユーザーなぞ端から眼中に無いベタ移植の感が否めない。

ベガスには壊し甲斐のあるオブジェクトがイッパイ。 激しい戦闘の光景。雰囲気はとにかくイイ。

□単調さを感じる似たようなゲーム展開

システムが簡略加され、プランニングを廃し、映画的な追体験型のゲーム展開に変更した弊害として次第に単調さを感じる結果になってしまっている。豊富にロケーションを用意しているが、残念ながらカバーできていない。ブリーチにしても、選択肢が少なく、二人の部下を個別に指示出しすることができない点も不満が残る。あからさまに突入経路がふたつ用意されている箇所や、トリガーを踏むとスポーンしてくる敵には興醒めしてしまった。

クローズドな空間での戦闘が中心になっているのも単調さの一因。序盤に登場する列車の廃線やベガスの道路などの開けたアウトドアでの戦闘をもう少し盛り込めば、変化が与えられたのではないだろうか。


□過去から脱却し、生まれ変わったRainbow Six

R6は特殊部隊を指揮するゲームから、特殊部隊を演じるゲームへと変化した。
LockDownが新たな方向性を探る暗中模索的な過程の産物だとすれば、Vegasはその問題に対してひとつの答えを見出したと言える高水準な内容に仕上がっている。
RvS以前のRainbow Sixを愛していた方には受け入れ難いものがあるが、一度プレイすれば新たな特殊部隊ゲームとして楽しめる事ができるだろう。
映画のようなカッコイイ特殊部隊の雰囲気を堪能して頂きたい。

スネークカメラでドア越しの状況を把握。
暗視スコープ。お世話になりました。
中継地点で好きな武器を選ぶ事ができる。 戦闘不能の仲間には怪しげなナニかをブスっと。

□Link
Rainbow Six
CR Rainbow Six Vegas

2007.2.12 記

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