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Portal (2007-Valve Software)

■洗練されたパズルアクションゲーム

デザインからパズルまで洗練されているPortal
PortalはThe Orange Boxなる抱き合わせ商法パッケージに含まれている一つ。パズルと3Dアクションを見事に融合した革新性の高いゲームである。ユーモアと狂気に満ちた世界とユニークなパズルアクション要素は、FPSをプレイするのに疲れたあなたをきっとリフレッシュさせてくれるだろう。

ゲームは無機質な鏡張りの部屋から始まる。主人公は、GLaDOSというAIの声に導かれながら、ゴールを目指さなければならない。部屋には、いくつものパズルが用意されており、容易にはゴールへ辿り着けない。そこで、これらのパズルをポータルデバイスと呼ばれる銃を駆使しながら解いていくのだ。

序盤のパズルは頭を捻らずとも、すぐに解決出来るものが多いが、ゲームが進むに連れてパズルの難易度も上がっていく。パズルを見た時は「えー、どうすればいいの。こんなの解けるワケないよっ!」と、絶望的な心境に陥るが、仕掛けや構造に触れながらアプローチを試みていくと、おのずと答えが現れてくる。頭を振り絞りながら試行錯誤を続け、ようやくパズルが解けた暁には心地良いカタルシスを味わえるに違いない。

心地良いカタルシスを味わえるのはパズルの難易度がバランスに優れている点にある。このゲームのパズルはいきなり理不尽に難しいのが現れるのではなく、徐々に新しいトリックを覚えさせながら難易度がそれに応じて上がっていく。基礎を覚えながら、応用問題を出題するといったようにバランスカーブのさじ加減が絶妙なのだ。ここの段階が上手く行っていないゲームはよくある。ゲームのことを熟知している開発者だけがテストを行った結果、初めて触れるプレイヤーにとっては非常に難しいものになっているという典型的なパターン。Portalはそんな過ちを犯してはいない。

Portalは、アクションゲームとパズルゲームを上手く融合している。パズルの存在をゲームの設定が意味付けて、正当化しているのだ。アクションゲームにパズルを用いると、どうしてもパズルの存在が違和感を生むことも多々ある。例えばHL2も試みていたが、いかんせん“パズルの為のパズル”のような無理矢理過ぎるパズルの配置が不自然さを与えていた。物理効果を用いたリアリティに欠けるあからさまなパズルの存在に興醒めさせられた事は数え切れず。バギーで移動するシーンで、浮力を使ってシーソーする所など愚かな極地である。不自然過ぎるシーソーの存在に、ゲーム世界から現実に引き戻されてしまったことを今でも覚えている。Portalでは、この“与えられたパズルを解いていく行為”にこそ意味があり、パズルの存在にもきちんと理由付けており、不自然さを与えたりはしないのだ。

ラブリーチャーミーな言葉と声質のGLaDOS。Portalで重要なウェイトを締める
パズルゲームであるPortalだが、プレイを淡々としたものにさせないのはGLaDOS(AI)の存在が大きい。GLaDOSの言葉には端々にジョークが富んでおり、存在をユニークに感じさせる言葉が目立つ。パズルの合間に流れるダイアログは読んでいて楽しいものばかりだ。
だが、GLaDOSとの関係性はゲームが進行するにつれて変化していき、徐々に狂気が浮き上がってくる。舞台も無機質なモルモット部屋から、研究所の裏側に変わり、シナリオの展開は加速度を増して盛り上がっていく。

ネタバレになるので詳しく言えないが、主人公の存在、この施設の存在が明らかになる時、GLaDOSの存在意義が理解出来るようになる。この研究所の目的達成とはポータルデバイスを使いこなせる存在の完成。即ちGLaDOSの○○である。だからこそ、与えられた命令を忠実に守り続けるGLaDOSの姿に悲しさを感じずにはいられなくなる。

●ポータルの概念を上手く具現化

自由自在に空間を繋げるというポータルの概念事態は、なにもPortalが初めではない。98年にPreyがゲームへ組み込もうとしていたが、技術的な問題で断念。後に妥協したことは、FPSが好きな諸兄ならばご存知であろう。ゲームの世界では、新しいアイデアを思い付いたとしても、それを上手く実現出来ていないのであれば意味がない。大風呂敷広げたゲームの宣伝と、ゲームの実体がまるで違っていることはよくある話である。

例えばTrespasserというFPSがある。これは物理効果に加え、フリーローミングスタイル等の先進的なアイデアを盛り込むとされていた。しかし、リリースされたものはそれらがほとんど機能しておらず、後に批判を大きく浴びている。HL2の重力銃や物理効果が評価されているのは、それらのアイデアを上手く組み込み、構築した点にあるのであって、先進性が褒められているのではない。HL2の物理効果はTrespasserが既にやっていたことであり、新鮮味など皆無である。

その点、ポータルの概念を上手くゲームに組み込んだPortalは評価に値する。そして、この後は何やらHLシリーズに関連性があるというのだから、いやがうえにも期待させられて仕方ない。ポータルを活かした銃撃戦…それこそPreyがやろうとして、実現出来なかった絵空事ではないか。

後半まではトントン拍子で進みます
物語が進むと、舞台の裏側が現れ出す。これまで覚えた基礎を応用しなければならない
コンパニオンキューブさん。とても可愛い
自分の鏡像をまじまじ見れるのは興味深い現象



■単品で遊ぶ価値のある小品

本編は2時間程で終わるが、上級モードやMODを合わせれば長く遊べるであろう。The Orange Boxに興味が無くとも、Steamで19ドルなら、単品で買っても十分その価値はある。一味違った一人称視点のアクションゲームをプレイしたい時は特にオススメである。普段、FPSをよくプレイする人も新鮮味を感じられるハズだ。

ただ、個人的にはHL2:EP3が登場するまでは待っても良いのではないかと思う。ValveのやつらならEP3の他に、過去作やThe Orange Boxも一緒に抱き合わせたものを販売するに違いない。「余ったライセンスは友達にあげてね」と誤魔化しながら…。

2007年11月23日 記

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