Pariah
かつては優秀な医師のひとりだったジャック・メイソン。だが属している同盟に反抗を重ねて落ちぶれ、今では輸送など単純な仕事を淡々とこなす毎日を送っている。この日も、貴重なウイルスに感染した女性・カリーナを目的地まで送り届けるだけの簡単な仕事のはずだった。しかし、輸送中に攻撃を受け、船は辛くも不時着。その間にカリーナは敵に連れ去られてしまう。メイソンは彼女を救う為に、敵を追い始めた―。
それは社会の除け者達を描いた物語。
規律に従事ることが出来ないメイソン。
ウイルスを宿した為に、人間としての権利を奪われたカリーナ。
二人のパライア(+囚人)によって物語は紡がれていく。
あくまで仕事の名目上でカリーナを助けようと奮闘するメイソンに、初めは警戒していたカリーナだが次第に好意を示す。それを感じたメイソンは仕事と彼女を天秤に乗せたジレンマに悩んだ末にある決断を下す。
「ファックガイ、ジーザスッ!」
吐き捨てるような男の言葉。
それを優しい声でなだめる女性。
「イッツオーケー、トゥーレイト…」
物語は意味深なムービーシーンから幕を開ける。ゲームを進めれば、男がメイソンであり、女がカリーナだということが分かるだろう。特殊な状況下で生まれた恋は長続きしない(by スピード)の如く、二人を待っていた末路は酷なものだった。FPSに恋愛劇を果敢に盛り込もうとしたDigital Extremesは偉い。しかしながら、最小限しか物を語らず、惹かれ合う過程が不十分だった為に、陳腐に写ってしまうのが非常に残念な点だ。相応のキャラクターの掘り下げが不足していた。メイソンにしても、カリーナにしても心変わりが突飛過ぎる印象が否めない。恋愛劇を描くには、もっとキャラクター同士を絡ませるべきだった。
「カリーナを助けなければ!」
そんな風にプレイヤーを揺り動かすような説得力があれば、プレイヤーを惹き込む力があれば…物語はもっと豊かに、魅力的になったのかもしれない。開発者が想定している要素の100%をプレイヤーが享受出来るとは限らない。頭で思い描いていても、伝えなければ意味はない。声に出さなくてはいけない。絵に表さなくてはいけない。だからこそ、丁寧に、且つ親切に伝えて欲しかった。愚鈍な人間でも感じ取れるように。切なさに胸が濡れるくらいに。ただの戯言だ。聞き流して欲しい。
カリーナの血によって感染。 | 唐突に現れた方2号。後半は急ぎ足過ぎる。 |
うな垂れるカリーナさん。特に絡みは無し。 | カリーナさんとドライブ。ここでも特に絡み無し。 |
□堅実だが、特出しているものが無い
某コンシューマーFPSを模したようなシューティング面は特別目立ったところこそ無いものの、手堅い作りで楽しめる。UTで培っているのか、武器の挙動は違和感無く、心地良い銃撃感を包しており、攻撃を避ける為に駆け回りながら、銃撃を叩き込むラン&ガンスタイルは爽快感がある。久しくそういったものをプレイしていなかったせいか、余計にそう感じられた。弾は「さぁドンドン撃ってください!」と言わんばかりに大量に手に入り、気兼ねなく銃撃を興じれるし、武器がアップグレードするシステムは銃撃戦に変化を生んでいて、アップグレードする度にわくわくさせるものがあった。
しかし、AIの動作についてはやや不満が残る出来だ。UTの優秀なものを想像すると、肩透かしを受けかねない。台本(スクリプト)通りに登場し、指定されたパスをそのまま歩むだけ。UTのような小賢しい(良い意味で)状況判断力が感じられないのだ。
3D Soundの定位感の高さは特筆しておこう。Unrealエンジンをライセンスした中でも、音響は特に優れているのではないだろうか。
撃っているのが気持ち良い。これって大切。 | 近距離でもあまり弾は当たらないようなヤンマーニ |
アップグレード。次はなににしようかな。 | 一気に近付いて、こういうのもアリです。 |
□次に期待して。
PariahはUnreal TournamentをEPICと共同開発したDigital Extremesが初めて単独で取り組んだFPSである。言わずもがな、FPSプレイヤーから注目を受けたのは間違いないが、発売された後の反響は芳しくなかった。大手が手掛けるしっかりした作りではあるが、如何せん革新的な部分が見受けられなかったのが何よりの原因と言えるだろう。今後の作品で脱皮することを期待したいものだ。
あー、うんりあるぽいかもー | 喧嘩はヤメテ!たまには宥めましょう。 |
2007年4月20日 記
FPS UnKnown