FPS UnKnown

Hitman: Codename 47 (2000-IO Interactive)

■血塗られた過去を持つ異端者が新たなステルスゲームの幕開けを告げる

コードネーム47がステルスの歴史に新たな1ページを刻む
あらゆるメディアで日々、新しいものが次々に生まれている。その度に類稀なクリエイター達の尽きることのない創造力や発想力の可能性に驚かされると共に我々は新しい楽しみを得る事が出来る。ゲームという分野は特に進退化が激しい業界だ。全てのものを把握しようとするのは情報収集に時間が非常にかかってしまい難しい。

そこでメーカーは足早な供給速度に購買層が対応できるようにどんなゲームにもジャンル分けを行う。ジャンルというのはこれ一つで大体どのようなゲームなのかが想像がつく、大変便利な総称である。RPG、アクション、アドベンチャー、シューティング…この情報だけでも有るのと無いのでは大違いだ。最近では光と音のRPGとか、おっぱいだらけの乳生活(ニューライフ)学園生活ADVとか、計りにくいジャンルが付けられていることもある。いや、後者は的確と言えるか。

そしてどのジャンルにも代表作となるゲームが存在する。例えばFPSで言えばDoom、RPGと言えばMight and Magic、泣きゲーと言えばAIR、タナトスゲーと言えば君が望む永遠、姉ゲーと言えば姉、ちゃんとしようよっ!、ツンデレゲーと言えばつよきす、ショタゲーと言えば恋する妹はせつなくてお兄ちゃんを想うとすぐHしちゃうの、メタゲーと言えば未来にキスを、燃えゲーと言えばPhantom -PHANTOM OF INFERNO-、発狂ゲーと言えばつくしてあげるのに!、死体ゲーと言えば肢体を洗う、孕ませゲーと言えば炎の孕ませ転校生等…。

その中でステルスゲームとはどんなものかとゲーマーに問えば、真っ先に挙がるのはThiefやMetal Gear SolidやSplinter Cellであろう。これらは敵に見つからないように闇や物陰に身を隠して、こっそりと隠密行動を取り、目的を果たしていくゲームで、進入した時の緊張感、クリアして緊張感から解放された時のカタルシスが魅力的なジャンルである。時にステルスゲームの他にスニークゲームと呼ぶこともある。

ゲームで一番浮いている存在。それが47
一番初めの暗殺。狙撃シーンは鮮烈な始まりだった
今回紹介するHitmanもまたステルスゲームの一種だ。しかし、そのまま上記のステルスゲームの二番煎じではなく、ステルス(隠密)を新たな視点から解釈した発明的なゲームである。これまでのステルスゲームでは先にも述べたように、敵の目から逃れる為に暗闇や物陰に身を隠して、ことこそと行動するのが常であった。ところが、Hitmanの場合は敵の前に大胆にも堂々と姿を晒すのが大半で、これがゲームを解く鍵となる。

なぜそんなことが可能かと言うと、主人公であるコードネーム47は変装のプロであり、必要な物さえあれば、どんな姿にも一瞬で成りすませるという類稀な才能を持っているためだ。一般人、マフィア、警察であろうと47に不可能な変装は存在しない。まるで虫のような擬態能力を武器に要人暗殺をこなしていくのが、このゲームの特徴である。時に護衛に成りすまして、敵の目を欺きながらまんまと進入したり、逃走する時は一般人にカモフラージュしながら。明らかに周りとは異質なスキンヘッドの主人公が変装を行い、群集や環境に溶け込み、淡々と目的の為なら暗殺していく異様な光景は本作独特のブラックなユーモアを孕んでいる。スキンヘッドに後頭部バーコードはいくらなんでも気付くだろ!というのは無粋というもので予定調和のお約束を嗜むのが大人のマナーである。これによりHitmanはこれまでとは一線を画すステルスゲームとして登場した。

本作が優れているのは暗殺の方法が多岐に亘っているところだ。例えば護衛に成りターゲットに近付いて二人っきりになったところで暗殺したり、食事に毒を持って毒殺したり、護送車の運転手に変装して車に爆弾をしかけて爆殺したり、スナイパーライフルで長距離から狙ったりと様々な方法が用意されている。もちろん銃の腕を活かして、真っ向から乗り込むというのも可能である。ヒットマンとして美しい行為とは言い難いが。こういった色々な方法を模索する行為は楽しく、リプレイ性を高め、何度も繰り返しプレイしたくなる魅力を持っている。

当時にしてはAIが合理的なのも素晴らしい。暗殺している途中で他人に見られたとしても、その場で片付けてしまえば他へ伝播するのを防ぐことができ、もし見られたとしても、違う服装に変装してしまえば特定される心配はなくなる(変装しているところを見られると意味がないが)。つまり、その場その場の状況判断次第では事態を丸く収めることも出来る。窮地に立たされたとき、いかに冷静になって行動するかが重要となるのだ。これを可能にしたのが違和感のないAIの作り。現在から見ても、見劣りしないレベルと言えるだろう。他に進歩が無いとも言えるのだが。

ここまでで締めようかと思ったが、良心が咎めるので真実を書いておく。確かに色々と暗殺方法が用意されている。方法を模索するのも楽しい。だが、残念ながらゲームは進むにつれて方法がリニアなものへと変わっていく。開発者が敷いた一本道の線路をそのまま歩かされる苦行を強いられ、理不尽なゲーム展開になってしまう。タイトルにHitman(暗殺者)と、銘打っておきながら、本末転倒な皆殺しプレイを要求する箇所がいくつかあり、難易度も高い。それに拍車をかけるのがセーブができないという仕様である。セーブがないことによって、失敗ができないという緊張感や一発撮りゆえの快感が得られるのは確かなのだが100%成功の解法が用意されておらず、運に任せなければクリアできないところがあることで台無しになっている。何度も何度も同じ行動を取るのは苦痛以外の何者でもなく、どちらに転ぶか分からない神頼みの展開はウンザリとさせられる。10回近くやってついに成功した時はとてつもない疲労感に襲われた。マゾの私は快感を感じたのも事実なのだが。マゾっ気のない人にはお薦めできない諸刃の剣である。このHitmanは2で萌芽が華開き、凋落していくTomb Raiderに変わってEidosの看板を背負っていくことになるのだが、それはまた別のお話。次回にでも語りたい。

コンテニューは用意されているが、敵の警戒状態が維持されたままのため、意味を成さず、実質やり直すしかない
47の華麗な変装術に周りは疑問を抱く余地はないのだ
毒入りスープいかがっすかー
こういうプレイが許容されるのもHitman
最後の任務はゲームを締めるに相応しいが、アサルトプレイではなく、なぜ暗殺で片付ける方法にしなかったのか悔やまれる。ゲーム性を放棄しているように思えてならない
周りに溶け込んで欺く。これが最強の暗殺者コードネーム47にだけ許される優れた隠蔽擬態能力



■新しいステルスの概念を作り出した記念碑的作品。ただし、難有りで人を選ぶ。

Hitmanはステルスゲームに新しい方向性を掲示した。変装を活かして周りに溶け込みながら隠密を行うという、これまでのステルスゲームとは一線を画した発想は評価に値する。しかしながら、ゲームとしての完成度は低く、せっかくのアイデアを活かしきれておらず、褒められたものではない。いくら素材が良くても、料理人の腕が悪ければ、マズイ物が出来てしまうのは当然である。本作はあくまで新しいステルスのアイデアを発表したに過ぎないアイデア先行型の作品である。ゲームとしての内容を問うのなら、続編からプレイした方が良い。そして、気に入ったのなら原点を触る意味で本作に手を出すのが懸命だ。火傷をしても、当方は責任を負わない。

2007年7月1日 記

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Hitman

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