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□Far Cry メディアクエストが日本語版を販売していたが、惜しくもPCゲームから手を引いてしまった為、現在はフロンティアグループが販売を受け持っている。 □Story-南国を舞台にした娯楽アクション 全体としてみればなにも考えずに楽しめる娯楽作で、盛り上げる所は盛り上げ、最後にはきちんと完結しており、外人から見たハリウッドの典型的な痛快アクション映画だといえる内容に仕上がっているが、どこかで見た演出・展開という感じが否めず、独自性という意味ではあまり魅力が感じられないのは事実である。 日本語訳は際だって変なところはない。内容も理解できるし、基準点を満たしている。ムービー以外では字幕を上部に表示する方式を取ってあり、恐らく翻訳陣が熟考した結果だと思うのだが、これがとても読みづらい。ドイルとの電話だけならまだしも、普段はムービーと同じく台詞に合わせて下部に表示させた方が視認し易すかったのではないかと思う。
□Graphic-Doom3、HL2に先駆けて登場した最新グラフィック 屋内も細かいディティールまで作り込まれており、確かに美しいと感じるが、どうも釈然としない違和感が残ってしまっている。CGとして見れば綺麗だが、現実的かと言えばそうでもない。これは空気感が無く写実的とは言い難い雰囲気作りの所為、あくまでCG然とした印象が残る美しさのためだろう。出てくるキャラクターも作り物的な感じを受ける。次回作では脱却を目指して欲しいものだ。 Far CryはPatch 1.3からHDR(ハイダイナミックレンジ)レンダリングを導入している。これは露出光を動的に変化させるもので、暗いところからいきなり明るい場所へ出たときの光が滲む眩しさ、日陰に入っても徐々に眼が慣れ明るくなる表現。言葉で表現しづらいが一見の価値有りなので、是非試して欲しい。
□Game System-高次なゲーム性を啓示した屋外戦 まず初めに断っておくと、これはれっきとしたスニーキングアクションで、バリバリ突撃アサルトプレイするFPSではない。どうしてこんな事を言っておかなければならないのかというと、Far Cryは難易度によって大きくゲーム性が変化・劣化してしまうからだ。特に大きいのがAIの性能に制限が生じる事で、真価が発揮されるのはチャレンジレベルからとなる。他のゲームではハードに当たるが、Far Cryに関してはチャレンジ、さらにハードなのがお好みならベテランでプレイして欲しい。詰まったときの念の為にオートバランスにはチェックを入れておこう。ゲームオーバーになってから再ロードすると、難易度が落ちていくようになる。リアリスティックはバランス配分が妙なのでプレイしなくていい。 レベルの7割は屋外戦が占めており、設定された目標に関して、どう到達するかはプレイヤーに任されている。島から大きく離れた場合は、巡回しているヘリコプターに攻撃されるが、島の周辺ならどうしようと基本的には自由な作りになっているレベルが多い。ただし、ある程度の解法は決まっているのは他のゲームと同じ、Far Cryの場合は自分で解決へと導いたとプレイヤーに錯覚させるのが巧い。例に上げれば、敵のホバーを奪って島の裏から回り込む、バギーで一気にショートカットして駆け抜ける、草木に隠れたり&海を泳いで一切戦闘を避けることなどが可能。それにより高次な頭脳戦を展開していると感じさせてくれ、サバイバル(ゲリラ戦)を勝ち抜いているという感覚を強く起こさせるのだ。 傭兵達はロケーター(位置表示システム)を装備しているので、プレイヤーが双眼鏡を使う事によって、相手の位置を特定し、発見した敵に関しては左下のレーダーに表示されるようになっている。逐次敵の位置を把握し、優位な場所取りが重要となる。(これは非常に便利で合理的なシステムで、今までのFPSに登場したガジェットの中でも特に優秀なものではないだろうか) 敵に発見された場合、銃声・マズルフラッシュ・人影のした方へとリーダー格のAIが指示を出し、部下がそれに従いオブジェクトに身を隠しながら的確に攻めてくる。傭兵には各々、性格付けがされており、好戦的に攻める者・迂回して攻める者・プレイヤーの場所を気にしつつも初めの場所をしっかりと守る者などに分かれている。プレイしてもらえば分かるが、AIは本当に人間らしい自然さを孕んだ動きをしてくる。だからこそ難易度はチャレンジ以上でプレイして欲しい。 南国の風景をCryエンジンは見事に描いた。だが今までにもグラフィックが凄いだけのゲームは沢山あったのも事実。果たしてFar Cryはどうであったかというと、Cryエンジンの描画力があったから、今までにないスニーキングアクションを表現出来たと言えるだろう。逆を言えば、この描画力無くして、Far Cryの高次なゲーム性は完成出来なかった。グラフィックをうまくゲーム性に絡めた数少ないFPSなのだ。 失敗の室内戦・サイドキック戦、失態の最後のレベル だが、どうしても不満点はある。問題は室内戦に関して。Far Cryはアクションリアル(半リアル)系のゲームバランスなのだが、難易度イージーやミディアムの場合ならヘルスが豊富に用意されているので、ゴリ押しアサルトプレイでもなんとかなる。しかしチャレンジ以上になってくると敵の命中率は格段に上がり、瞬殺されるので覚えゲーのような理不尽なプレイを余儀なくされてしまう場面が多分にあるのだ。屋外は優位な立場に常に立てていたが、屋内は反して敵がズルイ配置にされているのも多く、受身を取らざるを得ない。残念ながら屋外戦に比べると室内戦の出来は格段に堕ちる。 次にサイドキック(ヴァレリー)と共闘する箇所。ヴァレリーが死ぬとゲームオーバーになるので守らなければいけないのだが、こちらのスニーク行動を無視して(指示する事が出来ない)勝手に突っ込んで行ってしまう為に非常に厄介。無理に詰め込まなくてもいい余計な要素。敵の様に知的に攻める事が出来れば良かったのだが、どうも味方になるとそうはいかないみたいだ。 そして、最後の火山のレベル。これまでの知的なゲーム性を放棄するかのようなバカゲーテイストの無茶苦茶なステージとなっている。確かに最後だから特別なことをしたいというのは分かるのだが、最後だからこそしっかりとしたレベルの作りでなくてはならないと思うのは私だけだろうか。これまでは老舗メーカーの大作に引けを取らない質の高さを感じていたが、最後の最後でドイツらしいゲームとなってしまった。個人的にも大きく失望させられた部分である。
□Editor-革新的なツール群 リアルタイムに表示する事が可能で、ZBrushのように2.5D操作で地形を盛り下げすることが出来る。3Dツールで作ったオブジェクトをぽいぽいと簡単に配置できるGUIの仕様は今までのRadiantを引きずっていたFPSのエディターとは一線を画すものに仕上がっている。
□Bench-Far Cryを補完するベンチマーク ATIとCrytekが協力したベンチマークで、Far Cryの始まる数時間前の内容。被写体深度の導入、キャラクターの造形を向上した事によってリアリティが上がっている。ベンチマークとしては、それ程重くなく、本編をHDRで満足に動かせるPCならば、快適に動作するだろう。
□今後の可能性に大きく期待できるFPS。 最新のグラフィックを活用し、ゲリラ戦を巧みに表現する事に成功してたが、先にも述べたように全体としてみれば荒削りで洗練されていない部分も見られ、今後に期待したいところ。私は既に本作を5回近くプレイしており、正常な判断が付かないが、グラフィックだけのデモ的なゲームでしょと思っている方は是非手を出して欲しい。Far Cryはシューティングゲームとしても、かなり楽しめるFPSですから。
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