FPS UnKnown


Far Cry

白い雲。
澄みきった青い海。
うっそうと茂る熱帯雨林。
アバンチュールな南国の諸島には陰謀が渦巻き、禁忌が繰り広げられていた。
訓練された精鋭、凶暴に変異した被験者を相手に、生き残るため、一人だけの軍隊は己の頭脳を武器に窮地を脱していく。
頭脳戦の果てのカタルシスを享受しながら。

PCゲーム界に強大なインパクトを放った新星”Crytek”が送るスニーキングアクション超大作。


□Far Cry
ドイツのCrytek社が開発したスニーキングアクションFPS。
2004年は大作の続編が登場した年であったが、FarCryはご自慢のCryエンジンにこれでもかという位にハイテクを盛り込み、いち早く最新のグラフィックを表現した。もちろんグラフィックばかりでなく、ドイツのFPSというと慣例的にB級(もしくはC級)的な印象が強かったが、それらを見事に払拭するゲーム性を啓示し、老舗メーカーに対等に肩を張れる質の高いFPSを提供した点も高く評価されている。

メディアクエストが日本語版を販売していたが、惜しくもPCゲームから手を引いてしまった為、現在はフロンティアグループが販売を受け持っている。
ファークライ日本語版

□Story-南国を舞台にした娯楽アクション
自称カメラマンの女性からチャーターを依頼され、ミクロネシアの孤島へと向かっていたジャック・カーヴァー。突然、何者かの攻撃を受け、船は沈没。命からがら島へと辿り着く。その先には携帯電話が用意され、ドイルという人物が連絡してきた。「生き残りたければ、私の言うことを聞いて欲しい」と。

全体としてみればなにも考えずに楽しめる娯楽作で、盛り上げる所は盛り上げ、最後にはきちんと完結しており、外人から見たハリウッドの典型的な痛快アクション映画だといえる内容に仕上がっているが、どこかで見た演出・展開という感じが否めず、独自性という意味ではあまり魅力が感じられないのは事実である。

日本語訳は際だって変なところはない。内容も理解できるし、基準点を満たしている。ムービー以外では字幕を上部に表示する方式を取ってあり、恐らく翻訳陣が熟考した結果だと思うのだが、これがとても読みづらい。ドイルとの電話だけならまだしも、普段はムービーと同じく台詞に合わせて下部に表示させた方が視認し易すかったのではないかと思う。

この時点では可憐なヒロイン像にワクワクしていたもの。まさかとんでもないビッチだったとは。 ムービーとカットシーンは半々位。カットシーンではお人形さんが話しているような違和感がある。

□Graphic-Doom3、HL2に先駆けて登場した最新グラフィック
もう今更語る事もないが、まずは開放的な南国の描写。誤魔化しなく全て描画し、高いパフォーマンスを叩き出している点に尽きる。シームレスにそしてスムースに動作する事に驚かされるはずだ。波の表現、深度で異なる色、天気によって変わる海の表現もリアリティを高めるのに成功している。

屋内も細かいディティールまで作り込まれており、確かに美しいと感じるが、どうも釈然としない違和感が残ってしまっている。CGとして見れば綺麗だが、現実的かと言えばそうでもない。これは空気感が無く写実的とは言い難い雰囲気作りの所為、あくまでCG然とした印象が残る美しさのためだろう。出てくるキャラクターも作り物的な感じを受ける。次回作では脱却を目指して欲しいものだ。

Far CryはPatch 1.3からHDR(ハイダイナミックレンジ)レンダリングを導入している。これは露出光を動的に変化させるもので、暗いところからいきなり明るい場所へ出たときの光が滲む眩しさ、日陰に入っても徐々に眼が慣れ明るくなる表現。言葉で表現しづらいが一見の価値有りなので、是非試して欲しい。
Patch 1.3を当てた後で、ビデオ設定をVery Highにして、Far CryのフォルダにあるSystem.cfgの r_HDRRendering = "0" を "1"~ "7"に変える。数値を上げる毎に、光量が多くなる。最適なのは3か4。ただし、光が溢れすぎて屋内が見づらくなったり、サーモグラフィーが使えなくなる場所もあるので、初プレイの際は注意して欲しい。

南国の情景を見る度に思わずうっとりしてしまう。 波の表現が美しい。
オブジェクトの一つ、一つが詳細な部分まで細かく作り込まれている。

□Game System-高次なゲーム性を啓示した屋外戦

まず初めに断っておくと、これはれっきとしたスニーキングアクションで、バリバリ突撃アサルトプレイするFPSではない。どうしてこんな事を言っておかなければならないのかというと、Far Cryは難易度によって大きくゲーム性が変化・劣化してしまうからだ。特に大きいのがAIの性能に制限が生じる事で、真価が発揮されるのはチャレンジレベルからとなる。他のゲームではハードに当たるが、Far Cryに関してはチャレンジ、さらにハードなのがお好みならベテランでプレイして欲しい。詰まったときの念の為にオートバランスにはチェックを入れておこう。ゲームオーバーになってから再ロードすると、難易度が落ちていくようになる。リアリスティックはバランス配分が妙なのでプレイしなくていい。

レベルの7割は屋外戦が占めており、設定された目標に関して、どう到達するかはプレイヤーに任されている。島から大きく離れた場合は、巡回しているヘリコプターに攻撃されるが、島の周辺ならどうしようと基本的には自由な作りになっているレベルが多い。ただし、ある程度の解法は決まっているのは他のゲームと同じ、Far Cryの場合は自分で解決へと導いたとプレイヤーに錯覚させるのが巧い。例に上げれば、敵のホバーを奪って島の裏から回り込む、バギーで一気にショートカットして駆け抜ける、草木に隠れたり&海を泳いで一切戦闘を避けることなどが可能。それにより高次な頭脳戦を展開していると感じさせてくれ、サバイバル(ゲリラ戦)を勝ち抜いているという感覚を強く起こさせるのだ。

傭兵達はロケーター(位置表示システム)を装備しているので、プレイヤーが双眼鏡を使う事によって、相手の位置を特定し、発見した敵に関しては左下のレーダーに表示されるようになっている。逐次敵の位置を把握し、優位な場所取りが重要となる。(これは非常に便利で合理的なシステムで、今までのFPSに登場したガジェットの中でも特に優秀なものではないだろうか)
レーダーの横に発見ゲージが備えており、緑から徐々に赤色へ変化、ゲージがMAXになれば、敵がプレイヤーを発見した事になる。ゲージを減らす為には草や木の陰にきちんと身を隠さないといけないようになっている。

敵に発見された場合、銃声・マズルフラッシュ・人影のした方へとリーダー格のAIが指示を出し、部下がそれに従いオブジェクトに身を隠しながら的確に攻めてくる。傭兵には各々、性格付けがされており、好戦的に攻める者・迂回して攻める者・プレイヤーの場所を気にしつつも初めの場所をしっかりと守る者などに分かれている。プレイしてもらえば分かるが、AIは本当に人間らしい自然さを孕んだ動きをしてくる。だからこそ難易度はチャレンジ以上でプレイして欲しい。
グラフィックにももちろん驚かされたが、私が一番驚いたのはAIに対して。これ程までに完成度の高いAIは未だに登場していないのではないだろうか。AI分野はグラフィックや物理(フィジックス)に比べれば地味なものの、Crytekにはさらに突き詰めていって欲しいと願うばかりだ。

南国の風景をCryエンジンは見事に描いた。だが今までにもグラフィックが凄いだけのゲームは沢山あったのも事実。果たしてFar Cryはどうであったかというと、Cryエンジンの描画力があったから、今までにないスニーキングアクションを表現出来たと言えるだろう。逆を言えば、この描画力無くして、Far Cryの高次なゲーム性は完成出来なかった。グラフィックをうまくゲーム性に絡めた数少ないFPSなのだ。

失敗の室内戦・サイドキック戦、失態の最後のレベル

だが、どうしても不満点はある。問題は室内戦に関して。Far Cryはアクションリアル(半リアル)系のゲームバランスなのだが、難易度イージーやミディアムの場合ならヘルスが豊富に用意されているので、ゴリ押しアサルトプレイでもなんとかなる。しかしチャレンジ以上になってくると敵の命中率は格段に上がり、瞬殺されるので覚えゲーのような理不尽なプレイを余儀なくされてしまう場面が多分にあるのだ。屋外は優位な立場に常に立てていたが、屋内は反して敵がズルイ配置にされているのも多く、受身を取らざるを得ない。残念ながら屋外戦に比べると室内戦の出来は格段に堕ちる。

次にサイドキック(ヴァレリー)と共闘する箇所。ヴァレリーが死ぬとゲームオーバーになるので守らなければいけないのだが、こちらのスニーク行動を無視して(指示する事が出来ない)勝手に突っ込んで行ってしまう為に非常に厄介。無理に詰め込まなくてもいい余計な要素。敵の様に知的に攻める事が出来れば良かったのだが、どうも味方になるとそうはいかないみたいだ。

そして、最後の火山のレベル。これまでの知的なゲーム性を放棄するかのようなバカゲーテイストの無茶苦茶なステージとなっている。確かに最後だから特別なことをしたいというのは分かるのだが、最後だからこそしっかりとしたレベルの作りでなくてはならないと思うのは私だけだろうか。これまでは老舗メーカーの大作に引けを取らない質の高さを感じていたが、最後の最後でドイツらしいゲームとなってしまった。個人的にも大きく失望させられた部分である。

いかに能動的に倒すか。ゲリラ戦には頭脳が必要。
ファットボーイ。対処法さえ掴めば、強敵ではない。
まず双眼鏡を使って敵を掌握する。
ヴァレリーと共闘する場面も。
南国のシチュエーションは様々。
ハングライダーも攻略に活かせる。

□Editor-革新的なツール群

リアルタイムに表示する事が可能で、ZBrushのように2.5D操作で地形を盛り下げすることが出来る。3Dツールで作ったオブジェクトをぽいぽいと簡単に配置できるGUIの仕様は今までのRadiantを引きずっていたFPSのエディターとは一線を画すものに仕上がっている。
Far CryのBin32のフォルダのEditor.exeから起動できるので、興味のある方は挑戦して欲しい。

リアルタイムに表示させながらグリグリと動かす事が出来る。AIのテストもボタン一つの快適設計。

□Bench-Far Cryを補完するベンチマーク

ATIとCrytekが協力したベンチマークで、Far Cryの始まる数時間前の内容。被写体深度の導入、キャラクターの造形を向上した事によってリアリティが上がっている。ベンチマークとしては、それ程重くなく、本編をHDRで満足に動かせるPCならば、快適に動作するだろう。
The Project

Far Cryファンなら一見の価値あり。

□今後の可能性に大きく期待できるFPS。

最新のグラフィックを活用し、ゲリラ戦を巧みに表現する事に成功してたが、先にも述べたように全体としてみれば荒削りで洗練されていない部分も見られ、今後に期待したいところ。私は既に本作を5回近くプレイしており、正常な判断が付かないが、グラフィックだけのデモ的なゲームでしょと思っている方は是非手を出して欲しい。Far Cryはシューティングゲームとしても、かなり楽しめるFPSですから。

言い忘れていたが、ジャックがイイ味を出している。大仰な声優さんも。

□Link
Crytek
Crymod
Far Cry Community Maps
Far Cry Files

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