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Brothers in Arms:Road to Hill 30

Hill30に舞い降りたパラシュート部隊の14人。
軍曹の階級を与えられ仰せつかった分隊長の座。
隊員の命運はボクの手に委ねられた.

別に望んだワケじゃない。
でも、やらなきゃイケナイ。
ボクがやらなきゃダメなんだ。
”みんなと一緒に生き残りたい”
紛争地帯で掛けた、たった一つの願い。

仲間と力を合わせ、悪夢のエイトデイズを生き残れ!
タクティカルシミュレーター『Brothers in Arms:Road to Hill 30』


□Brothers in Arms:Road to Hill 30

これまで拡張パックや移植作業で手堅くやってきたGearbox社の初めてのオリジナル作品。WWIIFPSというと、ある一定のイメージが確立されてしまった現在に置いて、果敢にもストラテジー要素を取り入れた意欲作である。その新機軸的なシステムはWWIIFPSファンに好意的に受け入れられ、かねがね高評価を得る結果となった。2作目となるBrothers In Arms Earned In Bloodは既に2005年10月に発売されており、現在3作目を開発中。2007年発表を予定しているようだ。

なお本作Brothers in Arms:Road to Hill 30はライブドア社から日本語版が発売。現在はフロンティアグルーヴから廉価版として販売されている。

□仲間達と紡ぐ感情移入度の高いドラマ

はじめは登場人物が14人のみ、舞台はHill30だけという縛りが戦争物としての枷になるのではと懐疑的であった。WWIIものでは、ロシアやドイツなどの異なった舞台を体感できるようにしているものが成功し、一つの舞台に絞ったものは失敗を見ているケースが多かったからだ。
そのクローズドな状況は結果として、これまで色々なメーカーがこぞってチャレンジしてきた”WWIIを体感させる”という面に置いて、新たな方向から解釈し、プレイヤーに体験させる事に成功したと言えるのではないだろうか。

今までのWWIIシューターでは沢山の仲間は居るが、結局は一人ぼっちで行動しているような単独感を強く覚え、NPCの一人や二人が凶弾に倒れようと何一つの感情は生まれて来なかった。
BiAの場合は登場人物が限られた事によって、仲間一人一人のキャラクター性がより濃く描けるようになり、仲間達との何気ない会話シーンの挿入によって愛着を沸かせる。そして分隊行動を取り入れた事によってプレイヤーに隊長としての責任感を与え、仲間と一緒に戦っているという連帯感を生み出している。それにより戦争で仲間を失うという感傷や痛みがしっかりとフィードバックされるようになっている。さっきまで冗談を言っていた仲間が、倒れて逝く姿のギャップには心が痛む。この感慨は今までのWWIIシューターではなかなか得られなかったものではないだろうか。

インパクトのある演出で視覚的な部分から戦争を体感させるものが現在のWWIIシューターのトレンドだとすれば、BiAは戦禍におかれ刻々と変わっていく人間の心情・心理的な部分を綿密に描く手法を取った事で、新たな視点から戦争の一面を体感させてくれるのだ。

物語の構成にも特筆すべきところが見られる。冒頭から袋小路に追い込まれ、仲間が銃弾で倒れて逝く絶体絶命の危機的状況。砲撃によって意識が朦朧としながら、これまでの数日間を振り返るところからゲームは始まる。冒頭のシーン自体は初めに見た時は演出過多のFPSにありがちなものだという認識しか感じられなかった。
プレイヤーは部隊の分隊長ベイカー軍曹となり、田舎町が連なるHill30を舞台に仲間と協力しながら、戦況を突破していき、終盤にもう一度そのシーンが繰りかえされる。するとどうだろうか。初めの時と受ける印象は大きく異なっている。これまで戦場・苦境を共に乗り越えてきた仲間達と築いてきた関係が演出の見方を覆したのだ。普通なら冗長だと取りかねないが、”仲間達との絆”をきちんと描いたことによって感動的な演出へと成し遂げた。そういう意図があって、同じシーンを二度も繰り返したのだろう。もう完敗である。

もちろんそのお陰で犠牲になった部分や代償もある。まず、任務の内容が極めて地味でダイナミックでインパクトのあるシーンはほんとの序盤だけ。WWIIだからと言って、ド派手なシーンの連発を期待すると肩透かしを食らう。それには史実に正確に基づくという方向性を取っているせいもあるのだろう。ただ、それらを振り切る程に人間性に満ちたドラマは際だっている。戦争に翻弄された人間模様。どうせなら日本語版でしっかりと噛みしめて頂きたい。

何気ない会話シーンが仲間との距離を近づける。 降下前。これから地獄が始まるのだ。
飛行機が着陸できるように畑の棒を爆破。地味ですよね。 仲間と共に行動している感じが節々から伝わってくる。

□分隊行動を体感。頭を絞って、戦禍を切り抜けろ!

武器は集団率が悪く、遠くから当てることは難しい。ダメージもシビアなバランスで姿を晒しているとあっという間にやられてしまう。敵は基本的に拠点として同じ場所を守っている場合が多く、プレイヤーを見つければ集中砲火を浴びせてくる。

そんな状況下でどうすれば打開できるのかというと、BiAには抑圧度(Suppress)が用意されており、敵の頭上に表示されている。抑圧度は敵に向けて威嚇射撃をすることで減少していく。赤い状態は積極的に攻撃、灰色になれば攻撃は消極的になるので、そこを狙って優位な位置へと移動していくのだ。抑圧度は徐々に回復していくので、常に仲間に指示を出して、状態を保つことが大切になってくる。NPC同士では膠着状態になったら、もうほとんどの場合は状況は変わる事はない。なんらかの変化を与えなくてはならない。自ずとプレイヤーが迂回路を通って、敵の側面や裏を取って仲間と挟み攻撃を加える必要性が出てくる。仲間の威嚇射撃で注意が逸れている敵の後ろから蜂の巣。これが分隊長の特権。

仲間への指示は全く難しい事はない。右クリックで、地面を差せば移動。敵に向ければ攻撃と煩わしいコトがキライな私でもすんなり受け入れる事が出来た。簡略化する事でシューティングに大切なテンポも失わずにうまく導入している。ただ、この移動場所が曖昧で、敵に姿を晒して隠れているつもりの場合や攻撃させるはずが敵の目の前へ移動させてしまったといったイライラを募らせる部分もあった。簡略化し過ぎたために起ってしまう問題である。俯瞰状態から眺めることが出来るのだが、この状態からは指示が出せず、活かす場所が無い。

攻撃指示して、抑圧度を維持するのが重要。 自ら威嚇射撃して、強行する事も時には大事。
側面を取れば、後はコッチのもの。 軽戦車はとても頼りになる。パンツァーファウストには注意しよう。

□理不尽なランダム性

迫撃砲を破壊する任務がいくつかあるが、これは大きなマイナス点。プレイヤーめがけてピンポイント、一撃食らえば即死のバランス。落ちてくる場所が分からずにランダム性が絡んでくるのが頂けない(一応、規則性はあるようだが見極めにくい)。それまで全員で生還出来ていたのに、一度の迫撃で隊員全員を失った時は唖然となった。ゲーム的にはなるが、落下地点を示すなり、降ってくる演出だけに留めるべきだっただろう。

□銃撃感に欠けたシューティング

BiAは命中率を下げ、分隊戦術を展開させるように帳尻を合わせた。腰撃ちでは余程肉薄しない限り当たらない。アイアンサイトでも、とにかく揺れてリコイルも激しい。(コツさえ掴めば、それなりに当たるようにはなる)ただ、そのせいで銃撃感が曖昧になり、リコイルのせいで敵の反応が見えず、飛血や被弾したアニメーションも地味で視覚的な手応えが感じにくくなっている。基本的なシューティングの爽快感が希薄。
一転してスナイパーライフルだけはとにかくよく当たるが、やはり敵の反応が地味なせいで爽快感に欠けている。

被弾アニメーションが地味だ。 狙撃して、仲間を援護する任務も。

□忠実に再現した田舎町の情景

Unrealエンジン2.5を使用。HDRやソフトシャドウのカスタマイズを加えている。最高設定でも快適に動作していた。テクスチャの解像度は粗い面が目立つ。
アンロックすると見られる写真によると、実際にある風景を事細かに再現しているようだ。田舎町の雰囲気が良く出ている。劇的なロケーションの変化はないが、仲間達と歩む長閑な風景に魅了され、テンポ良く進み、シチュエーションの変化が豊富なお陰で単調さを感じる事は無かった。行ける場所が決まっていて自由度はないが、開放感を感じさせるレベルデザインは優秀。

室内戦もたまにはある。 見せ方が巧みで、窮屈さを感じさせない。

□MOD

SDKが公開されているが、目立ったコミュニティの活動は見られない。エディターはUnrealエディターそのままなので、腕に覚えのある方は挑戦してみて欲しい。


□様々な面で新感覚を孕んだ良作

もともとWWIIにあまり興味が無く、BiA自体が日本ではあまり良い評判も聞かず、ストラテジー要素があるというので手を出せないでいた。特価で役売りされていたので、とりあえず購入してみたわけだが、これがドハマリ。分隊戦術のコツが掴めてくると病み付きでプレイを進めてしまった。分隊長気分を満喫出来るストラテジー要素もさることながら、ストーリーテリングも秀逸。嬉しい誤算ばかりが生まれた。わがまま言うと、もっとボリュームがあれば良かったのだが。

手が空いたら2作目のBrothers In Arms Earned In Bloodをプレイしてみたい。主人公は異なるがRoad to Hill 30と交錯する場所もあるようで、HL:Opposing ForcesでGEAR BOXが見せてくれた斬新なザッピング手法がBiAでも発揮されている事に期待したい。

戦争モノが氾濫して閉塞感を抱いているWWIIシューターファンには新鮮に写るはず。お手軽に分隊戦術を味わう事が出来るので、部下を指揮してみたいけど、特殊部隊モノはちょっと面倒で・・・という人にもオススメの良作だ。

□Link
Brothers In Arms
GEAR BOX
BIA Files

2007.1.18 記

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