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World in Conflict(2007-Massive Entertainment)
1989年 - 争いはまだ終わらない
練れば練るほど楽しい戦術ゲーム

一般的にRTSというと、まず足がかりとなる基盤を構築することから始め、資源を作り出した後に戦闘を行うタイプが多い。リアルタイムストラテジーの言葉が示すように、これらのゲームは物資や人的資源を生産することが第一の目標で、そこから資源の管理や運用へと繋がっていく。まるで一国の主、神様気分を味わえるのがRTSの醍醐味だ。

World in Conflict(以下WiC)は戦術に特化したRTSである。上記のような資源を生産する作業は省かれ、用意された兵力をいかに運用するかという戦術のみに焦点が当てられており、いわゆるストラテジーゲームとは趣が異なる。

ゲームが開始されるとポイントが与えられ、まずはこのポイントを使って兵力を集めることから始めなければならない。要請できる兵力は歩兵、戦車、ヘリ、輸送車など一通りのものが揃っており、各ユニットの種類やグレードによっても消費されるポイントが違う。よって地形や敵を把握して、それに対抗出来うる兵を投入することが重要となる。戦車にはヘリが効果的だが、逆にヘリには対空戦車が天敵。歩兵は脆い存在であるが、建物のある場所や森林地帯では兵器を圧倒できる。

こうしたすくみのルールを見極めることによって、戦況に大きく影響が現れる。ユニットの弱点をチームプレーで補い、逆に弱点を効果的に突いていくことが大切だ。使用できるポイントは限られており、役に立たないユニットを呼んでも、限られた資源を無駄に消費してしまうだけ。ユニットを失うとそのポイント分だけ償却はされるが、ポイントの上限を増やすことはプレイヤー側では出来ない。故に、いかに与えられた資源を効果的に運用していくかがこのゲームのキモとなる。

ゲームを開始した直後は苦戦することもあるだろう。しかし、ユニットの相性や特性を理解することで、ゲーム展開がグッとスムーズに運べるようになる。戦術を磨けば磨くほどその効果が実感できるはずだ。苦戦していた敵をうまく負かせるようになると快感。戦術を練るのが楽しいゲームである。

ただ、シングルのミッションは大味になりすぎるきらいがあり、ここが残念な点だ。各ミッションの後半はほとんどと言っていいほど、わらわら大量にやってくる敵に対して、空爆や砲撃を要請して殲滅するという状況が多く、ユニットの操作がおざなりになってしまう傾向がある。それ故、なんとなく倒せてしまう感じが拭えず、勝敗がどうもスッキリしない。

■第三次世界大戦の恐ろしさを描ききった見事なシナリオ

頼もしく厳しいソーヤー大佐。その奥には優しさが窺える
従来のRTSとは少し毛色の異なる本作であるが、演出の方法もRTSとは一線を画している出来映えだ。それは優れたシチュエーションの表現方法にある。戦術に特化しているゲームなのだから、舞台すなわち戦争を魅力的に演出するのは非常に重要となる点だ。本作はここに抜かりのないこだわりが見える。

いま何をすべきか、そしてこのミッションを成功させなければどうなるかをしっかり掲示し、シチュエーションの理解を助ける工夫が端々に見られる。主人公パーカーと仲間が織り成すカットシーン、兵士達とその家族のダイアログ、戦場の光景を描いたムービーシーン、そして主人公の独白。

様々な角度から戦争を描き、伝えることで舞台のディティールは増し、物語の豊かな表現に繋がっている。本作は次から次へと新しい展開が登場し、一難去ってまた一難と忙しいハラハラドキドキの連続。米国とソ連の緊迫した状態がどうなっていくのか、続きを見たいという気にさせられ、止められずについついゲームを進めてしまう。

実はストーリーは順番通りではなく、時系列がバラバラに配置されているのだが、これらは計算されたものであり、見事にその効果を上げていると言えよう。特に、パーカー大佐、バノンの関係で顕著である。ソ連が攻めてくる直後からゲームは始まるが、とある“避けようのなかった展開”をした後で数週間前の話へと遡り、パーカーと仲間達の出会いが描かれる。するとどうだろう。新たな事実を後から知ることで、あの展開におかれたキャラクター達により悲哀をもたらし、印象深くなる。最初は意識していなかったシーンにも、きちんと含まれた意味があることに気付くとボディーブローのようにしてじわじわ効いてくるのだ。もちろん“避けようのなかった展開”の衝撃を緩和する意味もあるのだろうと思う。ネタバレになるので明言は避けるが、衝撃的な展開にショックを覚えた私は、過去の話に遡ることで思わずホッとしてしまった。ただの気休めで未来は避けようがないのは分かってはいるが…。

舞台のリアリティを高めるのに美しいグラフィックが貢献しているのも確かだ。DX10の技術まで投入され、最新FPSに負けず劣らずの見本市のような豊かさで仮想世界が描かれている。兵器の緻密な造形、雰囲気作りのうまい環境、爆発やスモーク、そして核に至るまで、思わずハッとするような高いクオリティでまとめ上げられており、現在のトップレベルと断言できよう。

視点が従来のRTSのような上からだけではなく、自由に動かせるようになっているのは作りこまれた世界を堪能して欲しいからだと思われる。いまやほとんどのRTSは3Dだが、相変わらずトップビューやクォータビューのものが多く、プレイヤーが望む視点には優しくない。3Dであることの特性が活かされずに殺され、ただスペックを圧迫しているだけである。本作ではスペクター視点を採用したことで、この視点ならではの発見できることもあり、正解だったと言える。

戦車の可愛さにきゅいーんとなる光景
水陸両用車もあります
ソ連に中国が加担(支配)。NATOに助けを借りられない米国は…
うっとおしい戦艦は空爆で沈没させよう
空爆命令で火の海に。自爆には注意しよう
歩兵まできちんと描かれている細やかさ
スモークが大変美しいの図。これリアルタイムなんだぜ
兵士と家族の対話。人間を描くことって大切

質の高い最新戦術ゲーム

不足なくまとまったRTS。ルールもそれほど複雑ではなく、初心者にもとっつき易い。普段RTSをプレイしない人も挑戦してほしい一品。

2008年2月24日 記
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