FPS UnKnown > PC Game感想 > Devil May Cry 4


今作の主人公ネロ。悪魔の右腕デビルブリンガーがキーポイントとなる。
 カプコンの看板タイトル、バイオハザードから派生して生まれたデビルメイクライシリーズも本作で早くも4本目。格闘ゲームに通じる奥深いアクションスタイルとアニメメロドラマ風のシナリオはそのまま引き継ぎながら、本作ではこれまでの主人公ダンテとは異なるネロという新たなキャラクターを採用し、若干のイメージチェンジが行われている。

 グラフィックエンジンはロストプラネットと同様にMTフレームワークを採用。それによりコンシューマーゲームの移植にありがちなエミュレーションのような手抜き感はなく、PC環境でも満足に動作する。また、PC版ではそのスペックを活かした機能『ターボモード(1.2倍で動作)とレジェンダリーダークナイトモード(高難易度)』が追加され、さらにやり応えのあるものに仕上がっている。なお、マルチリンガル仕様により、海外版でも日本語でプレイが可能だ。

 今作の主人公ネロの特徴はなんと言っても、悪魔と融合した右腕『デビルブリンガー』であろう。このデビルブリンガーを使用することによって遠く離れた敵を引き付けたり、敵を持ったままガードとして使ったり、プロレス技のような投げ技が可能となり、近距離コンボの繋ぎがスムーズに行える。デビルブリンガーは攻守共に有用なガジェットであり、ボスに強大なダメージを与える際にもキーアイテムとして役立ち、ボタン一つで発動できる容易さゆえに初心者にとって心強い存在だ。また、デビルブリンガーは戦闘だけではなく、パズル方面でも解法として使用することが度々あり、ゲーム全体において上手く活かされている。

 今回、名目上の主人公の座はネロに明け渡しているが、これまでの主役だったダンテももちろん登場し、プレイヤーキャラとして操作できる。ダンテの戦闘方法はネロとは大きく異なり、豊富な攻撃スタイルが持ち味。ネロがデビルブリンガーを主軸に使った戦い方ならば、ダンテの場合は複数のスタイルを用いた連携がカギとなる。ダンテの攻撃スタイルは剣技・銃技・回避技・防御技と分かれ、プレイヤースキルが問われる上級者向けだ。攻撃スタイルに熟練し、スムーズなコンボが展開できるようになればなるほど鬼神のごとく強さが発揮できるキャラだといえよう。ネロのデビルブリンガーのようなおんぶにだっこ作戦は通用しないのだ。

災厄兵器パンドラ。アタッシュケースが超兵器に変化する。
 ただし、ダンテは途中から手に入るパンドラと呼ばれる凶悪な兵器が非常に強力で、難しいと感じる人でもこれを活用していけばなんとなるように設計されている。外見的にも大仰なパンドラの一撃必殺の攻撃は爽快感がある。アタッシュケースの姿から形態がルービックキューブのごとく変化していく外連味のある演出も素敵だ。

 ゲームの進行スタイルは旧作と変わらない。視点は半固定の定点カメラ方式が採用されており、マップはブツ切りでドアをまたぐと一瞬ロードする。視点はプレイヤーが多少は操作できるものの、自由自在にとはいかず、死角が生まれることもしばしば。これによって死角から敵に攻撃されることもしょっちゅうあったり、視点が勝手に切り替わってしまったために操作に失敗するなど(方向キーが逆転する)、その度に興醒めさせられる。

 クリエイターが望むベストな視点でプレイして欲しい、色んな角度からアクションを堪能して欲しいという意図は理解できるが、プレイアビリティまで低下させるような仕様は望ましくない。DMCの代名詞である、せっかくの高いアクション性まで犠牲になってしまっているのは問題だろう。

 パズル要素の頻度が高く、ゲームが単調にならないように工夫が成されている。パズルの難易度自体はそれほど高くなく、あくまで戦闘の小休止という形。ただ、序盤に面倒臭いパズルがテーマパークのアトラクションのように多く配置され、マップのブツ切り仕様と相まってテンポが悪い。移動時間やパズルに要する時間が長く、戦闘を出し渋りしているように感じられてしまう。戦闘が物足りないと不満を常に抱いてしまうのは初回プレイ時に選べる難易度では敵の量が全般的に少ないのも要因の一つだろう。

見上げんばかりの巨大な敵と戦えるのも本作の特徴。
 ボス戦がたくさん導入されていることで、ゲーム展開に良い変化が付けられている。ネロの数倍の大きさを誇る巨大なボスとの一戦は白熱するものばかりだ。ボスはいずれも手強く、気を抜くとあっさりとやられてしまうバランスがとられている。

 しかし、相手パターンを掴み、行動が読めるようになれば、こっちのターンでキリングタイムが発揮できる。本作のボス戦はパズル要素をアクションへと結びつけるのに成功している模範的な例だろう。やはり答えが明確に現れる問いの方が解いていて気持ちが良い。力押しだけで片付いてしまったり、どうして勝てたのか理由が掴めない戦いは達成感やカタルシスが薄くならざるを得ない。

 ネロとダンテ、異なるタイプのキャラクターで遊べるのが本作のフィーチャーの一つとなっているが、20ステージある中の約1/3が同じ場所の使い回しであり、反復行動を強制させられるのは頂けない。パズルや新たな敵の投入で新鮮味を出そうとしているが、それだけでは無理がある。また、ステージのみならずボスに至っては3度繰り返している始末で水増し感は拭いきれない。

 本作ではステージを進めていくと入手するプラウドソウルを使って、スキルを取得していく。プラウドソウルの入手量はステージのクリア成果に反映されるため、なるべく高ランクを目指すようにおのずと導かれる具合だ。Sランクを獲得できれば達成感も人一倍強く実感できる。人にもよるが、一通りクリアするだけでは全てのスキルを覚えることは難しく、極めたいのならば二週目へと進めることになるだろう。ある意味、初回プレイはゲーム内容を覚えるための練習であり、敵の対処方法やコンボの繋げ方をマスターしはじめた二週目からが本領発揮といえる。高難易度に挑戦し、オールSランクを目指し、自分だけのコンボを極めていく、古き良きアクションゲームライクなやりこみが真骨頂。いうなれば謳い文句通りのスタイリッシュなアクションの追求こそが本作の醍醐味なのだ。

 もっと高みを目指したいユーザーに対してはブラッディパレスモード(サバイバル戦)や高難易度が用意されており、しっかりと要求に答えてくれる。PC版で追加されたレジェンダリーダークナイトモード(以下、LDKモード)はまさにうってつけと言えるだろう。LDKモードでは通常の数倍に及ぶ敵が一度に登場し、冗談のように敵が所狭しと沸いてくるがバランスはきちんと調整されている。ノーマル難易度で戦闘が物足りないと感じた人もガチンコの殴り合いが思う存分堪能できるはずだ。

 もちろん、本作は一回クリアするだけでも十分楽しめるようになっている。シリーズ初心者には低難易度のヒューマンモードやボタンを連打するだけでスキルを自動的に繋げてくれるオートマティック操作が用意されているのでスタイリッシュなアクションをしっかりと堪能できるだろう。本作は二週三週とやりこむシリーズファン向けの一見さんお断り仕様ではなく、ライトユーザーからコアユーザーまでを満足させる器の広い作品である。また、ストーリーに関しても一話完結スタイルゆえに前作を知らなくても理解できるだろう。ゲーム内に設定資料集が用意され、細かな点をフォローしているので問題はないはずだ。

大量の敵とぶつかり合えるのがLDKモードの醍醐味だ。
デビルブリンガーで敵をブン投げるのが爽快。
それぞれボスが凝っていて、白熱した戦いを味わえる。
デビルブリンガーのモーションは敵によって異なる。
綺麗どころ二人の豊満なおっぱいが優しく揺れる点に注目したい。
ダンテさんのおバカなアクションの数々は本作における清涼剤の一つ。



一見さんから、ファンまで楽しめる丁寧な作り

デビルメイクライ4はアクションゲームのポイントを手堅く抑えた良作である。幅広くて奥深いコンボ、敵をバッタバッタと薙ぎ倒す爽快感、巨大なボスとの一戦はプレイヤーを夢中にさせる。PC版ではLDKモードが追加され、さらにアツイ戦いが可能になった。本作独特のスタイリッシュなアクションを堪能して欲しい。

2008年8月2日 記
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